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アテネ五輪期間中連載コラム
「現実と非現実が混じり合った泣き笑いの3週間」」 |
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アテネ五輪 第18日 |
通い慣れた地下鉄の改札を駆け抜け、シンタグマ広場に上がると、カフェに溢れる笑顔も、いつも昼寝している犬もいない。代わりに警官たちがバリケードを張り、両手で私を制止する。道路を見ると、数千人の誰もが、オリンピックの間中、見ることがなかった、そう、忘れかけていた怒りと悲しみの顔で、パウエル米国務長官の閉会式出席に抗議デモをしている。
「何て書いてありますか」とギリシャ語の垂れ幕を読んでもらう。 故郷に戻った五輪は、史上最大、最長の日程に膨れ上がり、開催国のスターを含めまたも薬物失格者が連日カウントされ、金まみれのIOCは、おとり取材に見事に引っ掛かり尻尾を出す。クーベルタン男爵、108年も世界を回り、変わり果てた五輪に、きっと記念碑の裏側で嘆いているんじゃないだろうか。 しかし、復帰したアフガニスタンから、初の女性が堂々と胸を張って行進し、男爵が「死ぬまで認めない」と言ったはずの女性参加も史上最多、野口みずきはマラトンの兵士さえ脱帽する、史上もっとも過酷なレースを制した強さと美の象徴だろうか。 3週間世話になったホテルを朝出るとき、経営するファミリー一同が見送ってくれた。 (東京中日スポーツ・2004.8.30より再録) ※五輪開催期間中の金曜日は連載コラム「セブンアイ」として掲載されています。 |
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