「酷暑マラソン」


酷暑マラソンとは、一般的には気温が20度を越えた境境下で行われるマラソンレースを指します。ちなみにマラソンの最適温度は10度前後。

気温30度以上のマラソンに、
日本が強いワケは……

 マラソンは本来、冬のスポーツでした。ところが世界選手権、五輪と真夏に行われることになり、涼しい時期に行われるはずの競技が、炎天下でも実施されることになったのです。
 '98年12月、タイで各競技の大陸チャンピオンが争われるアジア大会(12月6〜20日まで)が開催されます。マラソンのスタートは午前6時半とはいえ、予想気温は30度、湿度も60%。考えただけでめまいのしそうなレースに、日本から男女計4人の代表選手が出場します。
 なかでも女子の高橋尚子(積水化学)は'98年3月、2時間25分48秒の日本最高('98年世界7位)をマークし、今大会とシドニー五輪の金メダル最右翼と期待されています。
 有森裕子(リクルート)が“酷暑マラソン”といわれたバルセロナ、アトランタで連続メダルを獲得、'97年には鈴木博美(積水化学)も30度を超えるアテネ世界陸上で金メダル獲得と、特に女子選手は夏に強さを発揮しています。その理由は“酷暑マラソン虎の巻”ともいえるノウハウを研究し続けた努力にあります。
 まずユニホームには吸汗性と乾性に優れたメッシュを採用。脱水、熱射病を克服するには、体内ではなくじつは皮膚への給水が最重要との発想も研究から導き出し、もも、首筋に5キロごとに水分を補給。スペシャルドリンクも、ぬるくては無意味と魔法瓶を使用し、中の氷の硬さまで調整する綿密な準備をします。水を大量にかぶるため、なかでもシューズにはマメをできにくくするための面白い素材を用いています。それは何と“紙オムツ”。水や汗を素早く吸収するため、ここ2=3年でさまざまな素材改良のあとに、たどりついたそうです。
 ロス五輪では女子マラソンでフラフラになりながら完走したスイスのアンデルセン選手が、感動を集めました。しかし一方では、あと数分遅ければ命もわからなかったほど、酷暑マラソンは危険です。
 体力と、悪条件を克服する知力。酷暑マラソンは、すべての能力の極限を競うものなのです。

Domani・1999年1月号より再録)

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