12月15日


第13回アジア大会
陸上競技第4日目 男女6種目決勝
タイ・タマサート大メインスタジアム

 男子400メートルリレーでは、前日の100メートルを制した伊東浩司(28=富士通)がアンカーを務め、38秒91のアジア大会記録で2つ目の金メダルを獲得した。1走は100メートル銅メダルの大槻康勝(22=法大)、2走は窪田慎(26=ゼンリン)、3走に土江寛裕(24=富士通)と並べた日本は、1走2走のバトンを渡す際にタイの選手と接触。しかし落ち着いて土江につないで、土江がコーナーをうまく使って先頭に立ち、そのまま伊東に渡した。
 男子走り幅跳びでは、日本記録保持者の森永正樹(26=ゴールドウイン)が8メートル10と、今季3度目となる8メートル突破の好ジャンプで、この種目1970年アジア大会以来となる28年ぶりの金メダルを日本にもたらした。また、男子3000メートル障害では、前回の広島大会で地元出身ながら銅メダルに終った内富恭則(25)が、8分41秒00で金メダルを獲得。4年前の雪辱を果たした。
 陸上競技はここまでで金メダル9個と地元開催の広島を大きく上回る好調ぶりを見せている。あす16日は休養日。
 男女バレーボールでは、3位決定戦が行われ、先月の世界選手権(東京)で15位と惨敗した男子は台湾にフルセットで敗れ4位となった。アジア大会史上最低位('86年ソウル大会も4位だが当時は学生主体のチーム)。女子もタイに3−0で勝ったもののこれも過去最低と、世界選手権の成績(男子13位、女子8位)を裏づけるような結果となってしまった。

◆陸上:「広島のみなさんに改めて御礼を」

 3000メートル障害は、出場選手が5人。内富はイランのサジャディと、ババカニに挟まれた形でのレースをせざるをない状況になってしまった。
 前半から超スローペースで完全に勝負だけを狙う展開に。ラスト1周ではサジャディに一時先行される。しかし「絶対に最後まで負けない、4年前は忘れない」と強風の中でも踏みこたえて残り300メートルからのロングスパートをかけそのままゴールに飛び込んだ。2人は過去4度対戦をしており、この日の5度目で内富の5勝。
 4年前広島流経大4年で臨んだ大会では期待されながら銅メダル。しかも、3000メートル障害は渋い種目ながらアジアでは日本が絶対的な強さを誇って7連覇を続けていたが、それもストップさせてしまった。また、日本選手権では4位になりながら、2、3位の日本選手よりも実績を記録を買われて代表になっただけに、期するものはいくつもあったようだ。
 「日本選手権で上位だった2人の分も絶対に金メダルを持って帰ろうと。もちろん、広島で応援していてくださったみなさんに、是非ともこのメダルで4年前のお礼を言いたいです」。選手たちがよく言う「オリンピックの雪辱はオリンピックでしか晴らせない」という言葉が本当なら、内富にとって「アジア大会の雪辱はアジア大会でしか晴らせない」の思いで積んだ4年間だった。

●走り幅跳び・森永正樹の話
 今季これで3度目の8メートル突破になった。過去、1年で3度は初めてのことなので、ようやく安定してきたと思う。きょうは4本目が非常にうまくいったと思ったら、ファールで距離は8メートル30(日本記録は8メートル25)だった。5本目は、中国、カタールともに(記録で)上を行っていたし、6本目での逆転は厳しいので絶対にこれで一発逆転をする、とプレッシャーをかけたのでドキドキしました。

●リレー1走・大槻康勝の話
 スタートからタイが並んでいて、バトンを渡す際にちょっと接触してしまった。今大会のできをキープして来年の世界陸上(セビリア)を狙いたい。

●リレー2走・窪田慎の話
 自分にとって初めての国際大会なので、伊東さんがリラックスするように気を遣ってくれた。うまく3走に渡せた。

●リレー3走・土江寛裕の話
 気持ちよくトップに立って、よしよし、いい気分と思って横を見たら、タイがいた。いやびっくりしました。でも今の伊東さんなら、ちょっとくらいミスしても関係ないんじゃないでしょうか。(カーブが急なトラックとの評に)上手く利用すればいいので、むしろ走りやすかった。

●リレーアンカー・伊東浩司の話
 アンカーは好きじゃないんですよ、自分の持ち場って感じがしない。でも、これで気持ちよく200メートルに行けます。みなさん、200メートルもちゃんと注目してくださいよ、ぼくの種目なんですから。(伊東はこれですでに大会に入って4本目のレースとなり、200でさらに増え7本を走らねばならない)

◆バレーボール:「史上最低ばかりの更新」

 男子は第1セットを奪ったものの、第2セット、第3、第5と先行されたセットはすべて奪われてしまい逆転できなかった。台湾はこの試合に勝っても負けても同国として国際大会で初の4位以内が決定しており、上り調子。対して日本はここまで、日本で開かれた世界選手権で史上最低の惨敗、さらに続けてVリーグと、心身とも疲労し切った状態ではあった。
 エース中垣内祐一(31=新日鉄)が右肩を故障し、若い加藤陽一(22=筑波大)も体調を崩す中、頼みの平野信孝(26=JT)は当初、孤軍奮闘した。しかし、次第に台湾のブロックにつかまり、交代要因の不足、逆転のできない戦術、心身の弱さ、これらをすべて露呈する結果となった。
 試合後、寺廻太監督(40)は「正直言って今はショックを受けている。世界選手権での疲労はあったが、この大会は気持ちを切り替えてがんばろうぜ、とみなで言っていた」と、自らショックを隠しきれない様子だった。台湾には今年、学生の国際大会でも敗れており「相手をなめて」いたという指摘も当たらない。エースをベンチに置かざるを得なかったとしても、完全な力負けと言える。
 監督自身、責任問題を問う質問に、18日にバレーボール協会強化委員会が開かれることを挙げ、「みなさん(報道陣)にとってお楽しみな発表があるようです」と皮肉を返しながら、協会からの解任、あるいは強化体制の大幅な変化を言い渡される可能性を示唆。シドニー五輪を占う上でも、今回の4位はとてつもなく重い結果になってしまうことになる。

中垣内祐一の話
 中国、韓国ともポテンシャルで負けているとは思わなかったし、まだ可能性もあると思っている。まずVリーグで出直したい。

大竹秀之(NEC)の話
 10点に行ってから抜け出せなかったのは精神的な弱さもあったと思う。プレッシャーはあってもそれを跳ね返す精神的なものが必要だ。選手はみな日本代表の看板を背負っていると思っている。結束できるはずだ。なんとか来年のW杯でがんばりたい。

「どうして誰もいなかったのか」

 史上最低の成績に終わったにせよ、負けようと思って試合をする選手はいない。負け、には選手1人の1人の技術、体力、戦術、その上に監督の持っているチーム構想があり、最後に協会がどんなビジョンでこれを強化するのか、それがバランスを保って揃わなければ勝てない。
 バレーボール協会関係者はただの1人もこの大会に来ていないという。
 チームオフィシャルとしてのパスには限りがあり、それをマッサージや現場に渡していることは評価されるが、一方ではどこの協会も自費で、或いは協会が支援態勢を整えて関係者を送り出している。
 敗戦を選手と現場のせいだけにするのは、まったくフェアではないのだが。

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