12月8日


第13回アジア大会
サッカー 2次ラウンド
日本×韓国
タイ・フアマーク競技場

(レポート・古賀祐一)
※試合は12月7日

日本
韓国
0
前半 0 前半 1
2
後半 0 後半 1
 
チェ・ヨンス×2

「ヘビー級とフライ級くらいの差があった。しようがない」トルシエ監督の言葉は落胆する気持ちを何とか正当化しようと試みているように感じられた。その「差」は徐々に表れた。
 キックオフ。日韓戦の異様なムードはなかった。6万人収容のスタンドに観衆は1万人に満たない。選手の出す声もクリアに聞こえるほど静かな立ち上がりだった。序盤は中盤でのせめぎ合いが続いた。両チームともミスが多く、効果的な崩しはなく、ボールは両サイドを往復した。日本は、フル代表を相手に、それほどの差は感じさせなかった。しかし司令塔の小野は苦しんでいた。前線が福田の1トップ。中盤からの飛び出しもほとんどないためパスの出しどころを見つけられず、キープする間に詰められた。体調が悪いこともあってバランスを保つことができず信じられないくらいボールを失った。発熱から復帰した中村は体調のわりに頑張ったが、中村にもパスを出すターゲットがなかった。前半15分、中村のFKに古賀正が飛び込み、前半終了間際には小野がFK直接ねらって惜しい場面を作ったが、セットプレーだけがチャンスだった。それでも日本は韓国の、両サイドからスピードのある選手を走らせ、ゴール前のパワフルで高さのあるチェ・ヨンスに合わせるダイナミックな攻撃をよくしのいでいた。PKによる失点は、クロスにチェ・ヨンスが頭であわせこぼれたところにユ・ジョンファンが走りこんで、飛び出した南が巧みにファウルを取られたものである。許容範囲であった。

 しかし、後半はなすすべを失った。1点を追うトルシエ監督はシステムを変えた。左の市川を右に移し、変則の4バックにしたのだ。開始1分にオフサイドトラップの逆を取られてチェ・ヨンスに決められ2点差となった後は、山下、石井を投入して、攻撃的な布陣へ変えていったのだが、効果はほとんど表れなかった。それどころか、チームとしての機能を失ったといっていい。前日に合流したばかりの山下を起用したこと、石井を経験のない左サイド(ほとんどサイドバックといっていいポジション)で使ったこと、など疑問が残る選手交代であった。恐らく選手も同様の感想を持ったことだろう。のこりの30分を日本はバラバラの状態で費やした。ボールが足元を動き、縦への効果的なくさびも、サイドのえぐりもなく、ミスからボールを奪われ、韓国のカウンターにさらされた。しかも、韓国はどんな状況でも必ずシュートで攻撃を終えた。その印象が日本の劣勢を一層際立たせた。

 会場のフアマーク競技場は、悪条件がそろった。気温35度、湿度60%。日差しは強いが、メーンスタンドの屋根によって時間がたつごとにグラウンドの日陰の部分が大きくなっていくため、それほど気にならない。ただ、ピッチ状態が悪かった。前日の開会式の影響か、芝は薄く、所々茶色い地肌が表れていた。さらに、まずいことには、硬い地面を軟らかくしようという配慮で試合前に水が撒かれたのである。これでピッチは非常に滑りやすい状態になった。よく「条件は両チームに同じ」という言い方をする。確かに真実だ。しかし、こういう見方もできる。条件の悪さが両チームの差を広げることもある。滑りそうな時に踏ん張れるパワーを持つ選手と、転んでしまう選手では、実力を出せる度合いも変わってくるわけだ。さらに言えば、パスをつなぐ日本には荒れたピッチが不利に働いたことも否定できない。それを差し引けば0−2というスコアは健闘の範疇に含まれてもいい。
 しかし、小野、中村、稲本という才能を抱えながら、彼らを有効に使い「日本のサッカー」を表現できなかったことは残念でしかたない。
 中村は「何をしていいかわからなかった。ポジションがころころ変わって何をやっているのか分からなかった」と漏らした。選手が何をやろうとしているのか理解できていないのなら、ピッチに「日本のサッカー」が表現されないのも当たり前である。

トルシエ監督「力の差は明らかだった。ヘビー級とフライ級が戦っているようなものだった。差はもともとあるのだから仕方ない。選手もよく頑張った。いいレッスンになった。選手はタレントはあるのだが、まだ子供だ。こういう経験をつんで強くなっていけばいい。がっかりすることはない」

GK南雄太「2点目はオフサイドかどうか微妙な判定だった。PKにしても駆け引きが韓国のほうが上だった。完敗だと思う。日本はシュートまで持っていけなかった。1−0ならわからなかったが、2点差にされて、しかも嫌な時間帯に取られた」

DF古賀正紘「スピードも体力も韓国が上だった。ただ、韓国がどうこうというより個人的なミスが多かった。今日収穫があるとすればこういうレベルを経験できたことだ」

MF中村俊輔「韓国は思ったより速かった。A代表が8人もいると聞いていたし、強かった。ポジションがころころ変わって何をやっているのか分からなかった。ポジションと選手の能力があっていなかった。最初は回していたけど、前に走る選手がいなかった。サイドに出しても封じられた。韓国は両サイドのスペースをうまくつかっていた。今は先のことは考えられない」

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