12月3日

(レポート・古賀祐一)


第13回アジア大会
サッカー 1次ラウンド
日本×インド
タイ・トラン

日本
ネパール
1
前半 0 前半 0
0
後半 1 後半 0
46分:福田
 

 スタンドでは心地よく感じた風の中にも、選手を苦しめる湿気は含まれていた。ピッチに臨む11人でネパール戦から代わったのは明神1人。チーム全体が中1日の疲労を抱えてのキックオフであった。
「前半からぼけていた」と福田は振り返った。市川は「息が上がって落ち着かない」と話した。そのとおりだった。反応が鈍い。判断が遅い。気温34度、湿度73%の気候が追い討ちをかけて日本は序盤から制裁がなかった。最初のシュートもインド。前半3分だった。
 インドは強くはなかったが、くみしやすい相手ではなかった。少なくとも、この日の日本にとっては。初戦で体調もよく、2次リーグ進出へモチベーションも高く、動きの鈍い日本選手に容赦ないタックルを浴びせた。特に福田、高原の2トップは後方からガンガン削られた。そのため、2人のところにボールが収まらず、中盤でパスを回す短調な攻撃に終始した。
 2トップだけを残し、引いて守るインドを崩すにはボールをもたないフリーランニングを行い(チーム全体としてのウエーブもこれに含まれる)、丹念にサイドをつき、綻びに2列目が飛び込むという作業が必要なはずなのだが、パスの出し手と受け手以外は棒立ちになっている状態で、そのな工夫を望むのは難しかった。前半の日本のシュートは、9分にCKのこぼれ球を小野がミドルシュートしたものだけだった。

 とにかく様々な障害がある試合だったことは確かだ。暑さ、疲労に加え、前日の大雨でグラウンド状態もよくなかった。福田は「水を含んで粘土質になっていて、すべった」と説明した。普段、いいグラウンドでプレーする日本選手は何度もバランスを崩した。さらに、アジアのレフェリングの問題もあった。この試合の主審は、レバノン人だったが、後方からの危険なタックルをほとんど取ってくれなかった。後半18分には石井が後方から飛び蹴りされるシーンもあったが、Jリーグなら間違いなく退場になるプレーにもカードが出るどころか、笛さえならなかった。インドのさして組織的でもない守備に苦しんだのも、これに原因があると考えてもいい。ネパール戦の後、トルシエ監督はレフェリングについて「問題ない」とかたっていたが、これがアジアのレフェリングの基準であるのなら、やはりアジアでは美しいサッカーは育たないのではと危惧される。
 しかし、これらのハンデも言い訳にはできない。暑さ、疲労を考えればメンバーの入れ換えを積極的に大胆に行うべきだったし、グラウンドとレフェリングの問題は五輪予選でも直面する問題である。それらの障害にいかに対応するか、という柔軟性が日本には求められる試合前にトルシエ監督は「この試合はテストマッチだ」とインド戦のテーマを選手に通達したというが、様々な環境を含めてのテストマッチだったのかもしれない。
 後半開始。トルシエ監督は「体力的に技術的に何かを変えてくれる」と高原に替え廣山を投入した。これが的中した。廣山が右サイドで頑張り、CKを得たことが先制点につながった。CKのこぼれ球を小野がつなぎ、市川がセットプレー要員でゴール前に残っていた古賀正にあわせ、落としたところを福田がボレーで決めた。前半と同じでだらりとしたペースで臨んできたインドは日本の変化に対応するのに約15分を要した。そこまで日本はシュートを連発した。しかし、その後は再び前半に逆戻り。古賀誠の起用も、他の選手の反応が芳しくなく、リズムを変えるにはいたらなかった。結局1−0でタイムアップ。勝ったことは評価されていい。1次リーグも2勝で1位通過を決めたのだから。トルシエ監督も試合後選手に「勝ったのだから喜びなさい」と言ったという。ただ、日本選手の試合の変化に対する適応力が問われる試合内容となった。
「目的である1次突破のためにいい結果は得られた。しかし1試合目に比べてつかれていた」とトルシエ監督もさえなかったが、選手にも笑顔はなかった。2次リーグ初戦の相手はA組2位の韓国が濃厚。かなり厳しい試合になりそうだ。

トルシエ監督「インドは危険な相手だとは思わなかったが、テストという意味で大事な試合だった。ボールを大事なところで失うことが多く、力の差を見せてくれる選手がグラウンドにいなかった。6割くらいはキープできていたと思うのだが。48時間しか休んでいないので疲れていたようだ。選手を入れ替えることも考えたが、基本になるチーム構成が大事。勝つことで選手の自信をつけさせたかった。次は韓国? U−19の復讐という意味で勝ちたい。両国のライバル意識に惑わされず自分たちのサッカーをやりたい」

FW福田健二「シュートは折り返してのもので練習でよくやっている。インサイドボレー。前半からぼけていて、内容的にも押されていた。危ない場面もあった。廣山が入ってスペースにボールが出るようになって崩せるようになった。次は4日あくので準備万端にしたい」

MF小野伸二「自分自身がボールに触れず、全く形を作れなかった。次は韓国? 次の試合より、まず自分のコンディション作りが先」

BEFORE
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