12月2日(試合は12月1日)


 今週6日から、大陸別のチャンピオンを決定するアジア大会が、タイのバンコクで開催(20日まで)されます。私も、10日出発し、11日のサッカー日本代表の2次リーグ最終戦のほか、陸上、水泳、体操、射撃などなど取材をし、このHPで速報を出して行こうと思っています。
 すでに欧州のスポーツについては、HPのために協力してくださっているスポーツライターがおられますが、アジア大会についても、現地入りしているスポーツライターの方が早速原稿を送ってくれました。ネパール戦は、トヨタ杯に隠れてしまったのですが、現地からのレポートではかなりの悪条件の中で課題と収穫を得たゲームだったことが分かります。5−0のスコアには、色々な評価ができそうですが、まずはこうした情報も読んでみてください。

 今週は、私自身、何と、札幌でのフィギュアスケートNHK杯、Jリーグ室蘭決戦、に参ります。アジア大会では、メダル1号となる見込みの女子マラソンのレポートも現地から送ってもらうつもりです。それでは、師走のラストスパート、氷点下の室蘭から、40度のタイまでどっと集まるマスジマスタジアムとともにゴールに駆け込んでください。みなさま、風邪にはくれぐれもお気をつけて、本当に倒れたりしないように。

増島みどり


レポート・古賀祐一

第13回アジア大会
サッカー 1次ラウンド
日本×ネパール
タイ・トラン

日本
ネパール
5
前半 3 前半 0
0
後半 2 後半 0
11分、12分:福田
31分:小野
61分、89分:稲本
 

 気温38度、湿度68%。タイ南部の田舎町トランで行われたトルシエ・ジャパンの国際大会初戦は、バンコクよりも過酷な条件の下でのキックオフとなった。その試合で、知将トルシエはテーマを与えた。
 試合前のミーティングで彼は「開始20分で勝負を決めろ」、「ボールを失うな」と2つの明確な指示を選手たちに通告した。酷暑のタイでの3週間近くに及ぶ長丁場を計算しての指示であった。序盤で相手の戦意を喪失させること、常にマイボールにしておくことで、体力が温存できるわけだ。的確な、そして明確な指示がピッチでも効果を発揮した。もちろん、その裏付けは合宿での厳しい指導があった。
 キックオフとともに、FWとMFが一斉に相手ボールにプレッシャーをかける、トルシエ流のいつものスタートを切った日本だが、開始5分ほどは、格下のネパールの力をつかみかねる戸惑いと、気候のためにリズムを作れずに時間を費やした。しかし、1つのプレーで流れを一気に引き寄せた。それが前半10分の先制点だった。
 中谷が左サイドを押し込んだのがボディーブローとなった。素早く左サイドにフォローに入った稲本は、ゴール前の布陣を確認して、ライナー性のクロスをほうり込んだ。絶好のタイミングのジャブだった。そして、フィニッシュブローは、思い切りのよさでは、A代表のストライカーにもひけをとらない福田。相手DFより肩から上まで競り勝ったジャンプで豪快で正確なヘディングシュートを決めた。

 サッカーとは本当にメンタルなスポーツである。1分後、それまでセーフティーにパスをつないでいた市川が意を得たように勝負をしかけて右サイドを突破。その鋭いセンタリングを再び福田がボレーで押し込んだ。
 この2点で勝負は決まった。その後、ピッチは、トルシエ監督から、教えられたものを次々とこなしていく実験室に様変わりした。トルシエ監督は、前日の練習でセットプレーを3パターンほど指導したが、若い選手たちはそのパターンをいとも簡単に実戦の場で披露した。
 前半21分のCKでは、キッカーの小野がファーサイド、しかもペナルティーエリアぎりぎりの位置にいる中谷の足元へボールを送り、中谷が強烈なボレーシュートを放った。GKにはばまれこそしたが、練習では1度もうまくいかなかったプレーを彼らは試合できっちりこなした。
 後半15分の稲本のゴールも全く練習通り。CKの場面で、FWがニアとファーに開いて、中央にMFが飛び込み、そこへボールを送る。練習と同じ動きで練習以上の結果を出した。「気候のせいで後半はあまりいい動きがきせられなかった」という小野は風邪で鼻水がとまらないコンディションで動きは今一つ、不用意にボールを失うこともあったが、前半30分にFKで得点、同38分には急カーブをかけた絶妙のスルーパスを福田に通すなど後半28分の交代まで片鱗は見せた。そして、誰より光ったのが稲本。2得点もさることながら、酷暑の中で信じられない運動量を見せ、守備では相手のMFを止めるだけでなくボールを確実に奪い攻撃の基点となった。「(中村不在でも)中盤はいい感じだった」という手応えは自身の働きによるところが大きい。
 また、DF陣も数回カウンターで危ない場面もあったが、DFラインを常に高い位置に保ち、安定した守備をみせた。ネパール相手に5−0というスコアは評価の分かれるところだが、練習を生かした作戦で戦ったトルシエ監督の手綱さばき、それを忠実に実戦する選手たちの能力の高さは認められていいだろう。
 トルシエ監督は「我々に何ができるか、どんな力を持っているかをライバルに見せることが重要だった。今までの練習が非常に役立った。少しずつモラルができてきた」と本当に満足げだった。チーム全体としては、まだまだ完成度は低いが、試合の各所にトルシエのカラーが反映された勝利だった。

DF宮本恒靖「集中力を保ってやるのが課題だった。少し中だるみはあったが、初戦でもあるし、今後に向けていい試合だった。勝つことが目的だったので、いいスタートを切れた。内容的には、もう少し回せばいいところで、ロングボールを蹴ってしまう場面があった。話し合って、うまいボールの回し方をやっていきたい」

MF小野伸二「あまりいい動きができなかったのが交代の理由でしょう。熱はないけど鼻水が止まらない。いいコンディションではなかった。FKはGKが動くのが見えた。チームとしては悪くなかったと思う」

山本昌邦コーチ「トルシエのサッカーを皆体で覚えてきている。いいスタートです」

FW福田健二「20分までにけりをつけろといわれていた。グランパスでもいつも先制点を取っているので、すぐに次と気持ちを切り替えた。高原とは、1人が出たら1人が引くとか、クロスして動くとか相手をかく乱するようにしていた」

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