2003年12月5日

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サッカー

東アジア選手権
日本×中国
(東京・国立競技場)
天候:晴れ、気温:16.1度
観衆:41,742人、19時16分キックオフ

日本 中国
2 前半 1 前半 0 0
後半 1 後半 0
04分:久保竜彦
80分:久保竜彦
 
 

(文・古賀祐一)

 東アジア選手権2003決勝大会は4日、開幕した。日本代表は午後7時16分から国立競技場で中国代表と対戦し、2−0で快勝した。中田英寿(パルマ)はじめ欧州組を招集しなかった日本代表はその代役で出場した選手が大活躍。先制点は前半5分、左サイドのフリーキックをMF小笠原満男(鹿島)が蹴り、そのこぼれ球を再び小笠原が拾って、前線に走り込むFW久保竜彦(横浜)に絶妙のループパスを通し、久保が左足で押し込んだ。久保は国際Aマッチ15試合目での日本代表初ゴールだった。その後は中国の激しいプレッシャーに守勢に回った時間帯もあったが、日本は後半も試合を支配。後半35分には小笠原のインターセプトを起点に、FWで途中出場した本山雅志(鹿島)の縦パスから久保が抜け出してGKの脇を抜く技ありのシュートで2−0と中国を突き放した。久保は、不在の高原直泰(ハンブルガーSV)、柳沢 敦(鹿島)を脅かすパフォーマンスでレギュラー獲得への強烈なアピール。小笠原は、中田、中村俊輔(レッジーナ)、小野伸二(フェイエノールト)、稲本潤一(フルハム)の「黄金のカルテット」に割り込む可能性を示すゲームメーカーぶりを発揮した。また、この試合で採用された3バックも無難な守りで完封勝ち。ジーコ監督は就任以来の通算成績を5勝5分け6敗とした。なお、第1試合の香港−韓国は韓国が3−1で勝利。このため1戦目を終えての順位は1位が韓国、2位に日本、3位香港、4位中国となった。日本は7日に香港、10日に韓国と対戦する。

ジーコ監督「勝ちという結果プラス内容的にもよかった。初戦でプレッシャーかかる中でよくやった。中国のプレッシャーがかかり、前半は中盤で苦労したが、自分たちでひっくり返す力を見せた。中国は意図的にボールを奪いに来ていたので、ハーフタイムには、ボールを早めに動かして高い位置でのプレッシャーをかわし、自分たちの形に持っていこうと話した。3バックは全体的なバランスはよかった。久保は生まれながらのFWの素質を持っている。2点を決めた以外にも、後ろから飛び込む人のためのスペースを作ったり、いいパスを出したり、良さが出た試合だった。小笠原は持っているセンスの良さが光った。最初は14番、その後5番がマークしたが、幅広い動きで味方や自分がプレーするスペースを作った。周りがよく見えていたし、いいボールを前線に供給していた」

久保竜彦「代表初得点? うれしい。裏がすかすかだったので、オフサイドだけ気をつけて狙っていた。いいボールが出てきた。2点目はGKが慌てていたので入るかなと思った。小笠原は、裏を狙うのと、僕が疲れている時は足元に入れたり、よく見ててくれた。腰? 変なところが痛くなったけど大丈夫」

小笠原満男「中国は思ったより強くなかった。もっと点が入ると思った。自分としてはなかなかシュートに持っていけなかった。14番がマークに来ていたので、自分のスペースを空けたり、ボールサイドに寄らないように工夫していた。向こうのDFラインが浅かったので裏を狙うパスが多くなった。2点とも裏に出るパスからチャンスが作れたし。久保さんは、ぎりぎりで待っていてくれたり、いいタイミングで出てくれたりする。そのへんは感じるものが一緒じゃないとできない」

宮本恒靖「勝つことが一番大事。ゼロで終われたのはよかったけど、リーグ戦なのでもう少し点が取れればよかった。しっかりした合宿で、いい練習ができていたけど、まだあっていない部分もある。3バックは、互いにコンビネーションができていたし、声も出ていた。ボールを奪ってから、DFラインの裏にいいボールが出ていた。ラインが少し深くなっていたのが課題」

中国代表/アーリー・ハーン監督「全体的にいい試合だった。前半早々の失点が残念。中国の課題は与えられたチャンスを決めること。2点目は我々のミスだ。1点目もキープしようとしていた時に取られた。ただ、中国は成長しているし、進歩していることに満足している。今は国際レベルの試合をこなすことが大事」


「国内組」

 中田、中村、小野、稲本の黄金のカルテット、先発の2トップに定着している高原、柳沢がいない。主力は不在だったが、終わってみれば大きな意味を持つ試合になった。
 FWの中では4番手か5番手だと見られていた久保が、国際レベルで通用するパフォーマンスを見せた。もともと潜在能力の高さは誰もが認めるところだった。トルシエ前監督も何度も招集したが、内気な性格が災いしてチームになじめず、能力を発揮するに至らなかった。昨年就任したジーコ監督も久保にはずっと注目しており招集し続けた。しかし、今度は腰痛で2度も辞退。日本代表ではここまで14試合に出場しながら、1ゴールも挙げられていなかった。その久保がいきなり2得点。
 この日の久保のプレーは見るからに自信にあふれていた。横浜で16ゴールを叩き出し、チームの完全優勝に貢献。その自信がプレーぶりに表れていた。メンタル面での成長がパフォーマンスに直結したのではないか。無口でインタビュアー泣かせだったが、横浜では常に新聞記者に囲まれていて、露出が多い。その中で取材慣れしたのか、最近は口数が増えてきた。テレビカメラの前ではまだまだだが、記者の囲み取材では普通に話せるようになった。そうした環境の変化も、久保の中にあった日本代表の敷居を低くしてくれたのかもしれない。この日のピッチでは、すっかり中心選手になっていた。

 小笠原は、黄金のカルテットの陰で悔しい思いをしてきた。ジーコ監督就任後は常に招集されながら出場は15試合中6試合にとどまっていた。もともと不言実行のタイプ。その小笠原が試合前日に「試合に出ていないからね」と漏らしていた。この人も取材の難しいタイプだが、この日は立ち止まって。しっかりと質問に答えていた。鹿島から0円提示つまり解雇通告を受けた秋田から「お前が引っ張れ」と言われたこともあり、心に期するものはあったのだろう。
 欧州組がいなくなった途端、国内組がのびのびとプレーし始めた。頼れる存在がなくなったからだろうか。いずれにしても、ベンチに座っていた面々が、アジアのトップレベルを圧倒するほどのパフォーマンスを見せたことで、ジーコ監督の手駒は増えた。固定化されていたレギュラーも安泰ではなくなった。欧州組はいない。しかし、この試合は、ジーコジャパンに活性化をもたらす試合になった。



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