2003年9月27日

※無断転載を一切禁じます


サッカー

Jリーグ2ndステージ第8節
横浜F・マリノス×ガンバ大阪
(神奈川・横浜国際総合競技場)
キックオフ:19時4分、観衆:19,099人
天候:曇り、気温:22.6度、湿度:62%

横浜FM G大阪
1 前半 1 前半 0 0
後半 0 後半 0
18分:久保竜彦
 


「原監督と、Jリーグの監督」

 第一ステージも、久保竜彦のゴールでG大阪を下して首位に立った横浜・岡田監督は、会見で「(28日の東京Vの試合が残るため)暫定ですが、これで首位に立ったんですが」と、現実味を帯びてきた完全優勝について質問を受けると、「ん? 首位になったの」と答えた。試合後は、各会場の結果が入ったボードを凝視していただけに順位は知らないはずはなく、謙虚なオトボケといったところだろう。

 一方、2試合連続でロスタイムに同点とされ、さらに結果をかけて臨んだこの試合でも、前半での失点を返すことができなかったG大阪の西野監督は静まり返るロッカー前で「まったくね、(マリノスは)第一ステージでも、ウチをがっちり踏み台にして」と、苦笑した。
 両チームとも、第二ステージスタートからここまで似たような「勝ち切れない」状態を経て迎えたこの試合は、両監督が抱えてきた同じ苦悩と、現時点での対照的な対応をわかりやすく表していた。

試合データ
横浜FM   G大阪
13 シュート 9
6 CK 5
19 直接FK 19
0 PK 0
 なぜ、2試合連続でロスタイムに追いつかれるような「勝ち切れない」事態になるのか。西野監督に聞くと「問題は集中力でもないし、スタミナ切れでもない。表現は難しいが、原因不明の、スポーツ病のようなところがある。それをどうするかが、監督である俺の責任なんだけれど、処方箋が見つからない。うちのいいスタイルはきちんと形になっている以上、対症療法で済ませるというわけにもいかないだろう」と首をひねり、今が我慢のしどころであると前向きに話す。

 確かに、この試合を見る限りでも、前半30分以降は試合の主導権を握っており、サイド、攻撃陣も高いポジションをキープしている。マグロンの決定力は確かに低いが、エースは代えないとする監督の采配はひとつの信念であり、ミスや間違いではない。
 全体的にもミスが連続しているとか、選手の怠慢とか、DFがボロボロにされる、とか、そういった問題でもない。要するに「勝ち切れない」のだ。

 マリノス岡田監督はどうか。
 8月30日、FC東京に1-4で敗れ、サポーターに頭を下げたという日、監督は決心する。
「何としても、勝ち切るサッカーを優先しなくてはならない。だからあえて、目指す方向とは違うかもしれないがスタイルを変える」と、あえて、自分たちのアクションサッカーをリアクションサッカーに大きく転換をして、9月6日の柏戦、次節の浦和戦で勝利を収める。自分たちがイニシアチブを取るサッカーと目指す方向はあったが、「勝ち切れない病」からの脱出をはかるために、3バックでリアクションを選ぶ。
 一見、信念の変更に見えるが、対処療法としての処方箋がぴしゃりと「病」に効いた結果が首位奪取である。

 片や、スタイルを維持して待ち、一方はスタイルを壊してでも動く。
 40代と若く、現役で代表を経験した2人の監督の違いは、たった1試合だけでも、優劣ではなく、監督業というものの深さ、困難、あえておもしろさを示す差である。J1 16チームの監督それぞれが、年間のリーグ試合わずか30試合という、猛スピードの中で原因の特定と対処方法という恐ろしい仕事をこなしており、根本的な建て直し、といった仕事はサッカーの監督にはできないことは両者、すべての監督に共通している。

 巨人の原 辰徳監督の辞任は、サッカーの取材をしているとそれほど違和感がなくなるから困ったものだ。9連敗し、Aクラスも危なくなり、自ら選んだ首脳陣で補強した選手が働かなかったこと、フロントとの確執、どれにも驚かない。もっとも大きな違いは「2年」が短いか、長いかの時間に対する感覚だろう。
 良し悪しではなく、同じプロスポーツでありながらサッカーと野球ではここが決定的に違っていることが非常におもしろく、原監督の2年での退任は歴代でも最短というから驚く。
 Jリーグで最長は、鹿島のセレーゾ監督の3年で(現在4シーズン)、仙台の清水監督はJ2からの通算5年で解任され、ベルデニック監督にいたっては3年でトップ3チームの指揮を執る。もちろん最短は数え切れないのでやめておく。

 野球はわからないから、と遠慮したが、「2年が長いか短いか? ん、サッカーなら長いよ」と岡田監督はこの日話し、西野監督は「サッカーの監督なら皆2年契約で結果を出せなければ切られるでしょう」と言う。代表監督もおそらく2年が一区切りであり、残りの2年をどうするかで、ジーコ監督も「結果に対して問題、不満があればいつ切ってもらってかまわない」と、川淵キャプテンと話をしたうえで監督を引き受けている。

 プロ野球では2年が短すぎる、人材育成の放棄となるが、おそらくサッカーなら山下大輔監督はオールスター前に姿を消していただろう。要するに、野球は長い目で物事を見ることができ、サッカーはあまりにもせっかちだ、という結論なのだろうか。



読者のみなさまへ
スポーツライブラリー建設へのご協力のお願い


BEFORE LATEST NEXT