2003年9月11日

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柔道

2003年世界柔道選手権大会 第1日
(大阪城ホール)

●2003年世界柔道選手権大会のホームページはこちら
※第1日目の結果は
 「Final Results(入賞者)
 ページで見ることができます。
 世界柔道が大阪城ホールで始まり初日は、100キロ級で井上康生(総合警備保障)が大会3連覇を果たし、また女子78キロ級では、阿武教子(警視庁)がカナダのハミルトン大会からとなる4連覇の偉業を達成した。100キロ超級の棟田康幸(警視庁)も世界選手権初優勝を果たし、初日で金メダル3つと好スタートを切った。女子78キロ超級の塚田真希(東海大)は準優勝となった。

    ◆3連覇を達成した井上康生の金メダリスト会見から

井上康生(総合警備保障)「ほっとしています。いい勝ち方ができたと思います。今日のテーマは、己に克つことだった。ずっと自分に絶対勝てるんだと言い聞かせて臨んだことが、いい結果につながったと思う。それが今日最大の収穫だった」

──相手のルメールの研究は
井上 ずっと合宿でもやっていたし、確かに相手のビデオを見たりもした。しかし今日は自分に克つことだけを考えていた。

──準決勝は苦戦したようだが
井上 相手の、僕への研究もかなりされていて、柔道も以前対戦したときとは違っていた。それと、準決勝前の課題というか、試合の間が5時間ほど相手しまうので、一度気持ちを切ってから盛り上げるということをしているのだが、気持ちは盛り上がっていても、体がいまひとつ動いていなかったかな、という反省は残る。これから、オリンピック、欧州での試合があるので、この点をもう少し勉強していかなくてはならないと思う。
 この1年いろいろとあって、福岡で(体重別)負けて、代表になったことは悔しかった。僕自身のプライドのためにも、今日は勝ちたいと思っていたし、僕に勝って代表を落ちた鈴木選手のためにも、ためにも、というわけではないが、そういう気持ちで戦おうと思っった。また、中2日で行われる無差別(との2階級出場)での金を取るのは難しいと言われ、そのことへのプライド、今、体力的にも精神的にも全然できると思っています。それを証明したいという気持ちもあった。

──25歳ですでに世界選手権3連覇を果たし、五輪の金もある。今後のターゲットは
井上 年齢は関係がないと思う。来年はアテネを控えているし、今回は果たせなかった2階級の夢もある、何より、技を追求して行く柔道を目指している。
 今年がまだ終わったわけではないが、僕自身、勉強になることも多かった。今後も一回りも強くなって、2階級で制覇をできるように、いい意味の刺激にしたい。
 100キロ超級で出ることについては、今はまだ考えていない。


「コウセイも凄いが」

 女子であること、井上と同じ日の開催であることから、それほど大きな注目は浴びないが、阿武の世界選手権4連覇は、田村が目指す6連覇と同じように、女子柔道の屋台骨として、また72キロ級と78キロ級の2階級の制覇という意味でも、大きな価値がある。
 しかし、どうしても、不思議なことに、五輪で勝てない。過去、アトランタ、シドニーと初戦で敗れており、この日も4連覇のこと以上に、やはり聞かれるのは五輪のことである。やはり、五輪は違いますか、と、遠慮がちに聞いた記者に阿武は「ええ、違います。4年と2年では、人が何かに思い入れるもの、かけていくものが違うのです」と率直に答えた。実は、初めてといっていい、ささやかな、しかし彼女のとっては大きな挑戦をしていた。

 これまでも、五輪での大応援団を嫌っていた。応援されることがいやなのではないし、プレッシャーに弱いなどというレベルでもないが、周囲が今度は気を遣い、応援を控え、そうして悪循環のスパイラルがいつの間にかできていたと話す。
◆「生で見るのは初めてです」

 パリ世界陸上、ハンマー投げで銅メダルを獲得した室伏広治(ミズノ)が、10日にハンガリー(4位)から帰国した足で井上の応援に駆けつけた。柔道着を担当するミズノでのつながりもあり、「仲間ですから」という気の置けない仲だというが、柔道を見たのは初めてとあって、試合中も背筋を伸ばし、どこか緊張した様子で畳を見つめていた。
 表彰式後は井上が室伏の席まで挨拶に行き握手。「来たかいがありました。良かったですよ。彼の柔道は、1本を取るチャンスがたくさんあるんですよね。格でしょうか」と感心していた。23日には、スーパー陸上に出場する予定だ。

「なるべく控えていただいた応援ですが、、今回はさすがに地元で、やはり普段以上に多くの方に来ていただいて……。でもそれをあえて、五輪へのシュミレーションにしようと、思いました。気を遣わない、遣われない、あれだけの応援団の前でも気持ちよく試合ができたことは来年への収穫でした」

 手にした4つめの金メダルよりも「重い」何かがそこにある。
 世界選手権そのものの連覇や金メダルであると同時に、柔道界には来年への高度な「リハーサル」である。
 井上も、準決勝前、試合時間が5時間も空いてしまう空白をどう消化し、精神的にも肉体的にも「切らさずに」(本人)決勝までつなげるかを、「今日の大きな課題になった」と話していたように、課題と収穫、そしてメダルが同じ輝きを放つ大会でもある。



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