2003年9月10日

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サッカー

KIRIN WORLD CHALLENGE
キリンチャレンジカップ2003-Go for 2006!-
日本代表×セネガル代表
(新潟・新潟スタジアム ビッグスワン)
キックオフ:19時20分、天候:曇り、気温:25.7度、湿度:82%

日本 セネガル
0 前半 0 前半 1 1
後半 0 後半 0

ディオプ:6分
 

    ◆試合後のコメント

<交代出場>
●日本
 63分:本山雅志(大久保嘉人)
 72分:小野伸二(遠藤保仁)
 75分:黒部光昭(柳沢 敦)
●セネガル
 53分:ヌジャイ(ファイ)
 62分:S.カマラ(ニアング)
 62分:ベエ(ディアッタ)
 76分:ヌドイ(D.カマラ)
 85分:ディアバング(H.カマラ)
中田英寿(パルマ)「勝てなかったことは悔やまれるが、手ごたえもあった。どんな相手でも自分たちのサッカーができるということが大事で、課題は、決定力と(試合の流れの)リズムを変えられなかったことだった。(監督の指示は)1から100までを説明するのは無理。(予選を戦っていくのに重要なのは?)勝っていくことです」(ミックスゾーンでのテレビインタビューより)

中村俊輔(レッジーナ)「負けていい試合なんてないが、(試合内容が)悪いわけではない。向こうは組織的に守っていたし、自分はラストパスを3回ミスしている。もう少し起点となるプレーをしなくてはならなかった。難しい試合だったが、パスを出す瞬間にコースを消されるということはこれまでなかったし(より難しい状況を味わうことで)充実した面もある。(ナイジェリア戦から敗戦で勢いが止まってしまうのではないか)止まりはしない。今日はコンフェデで対戦した相手よりも強かったし、思うようなボール回しもできていない。これからは、プレッシャーを前から受けたときにどうやって崩していくかが課題だと思う」

小野伸二(フェイエノールト)「(試合に)出ていない選手が、出ている選手をもっと刺激していけばいいし、しなくちゃならない。(コンフェデのカナダ戦でゴールを奪った新潟だったが、と聞かれ)自分もそのことを思い出していて、シュートの時に『もらった!』と思いましたが……(笑)。とにかくふかすことのないように、と思ったら、下に行ってしまった。まだまだ何かできたわけではないけれど、こうした代表の試合にできる限り参加してみんなでできる時間を大事にしたい。今回も来て良かった」

本山雅志(鹿島)「サイドが空いていたので、もっと裏のスペースを狙っていいボールをもらうようにできたと思う。(小野も)途中から入っていいプレーをしていた。自分自身は、点を取ることができなかったのでいい仕事をしたとは言えない」

大久保嘉人(C大阪)「セネガルは速いとわかっていたけれど、やっぱり速かった。ボールの出所は完全に読まれていた(研究されていた)と思う。もっとダイレクトでボールが回せれば面白かったかもしれない。(また無得点で)次っすね」

遠藤保仁(G大阪)「セットプレーで取られてしまうと流れが悪くなる。あれがなければ、試合は勝つかドローだった。相手は身長があるし、高いボールには勝てないので、どうしても下から(足元)行かないとならず、そういう攻めの工夫はもっといると感じた。予選まで時間がない、とは言えないが、集まる時間はない、と思う。結果にこだわって、その中で個人、個人が意識を高くもっていくことだし、コンフェデの時よりもよくなっている手ごたえはある」

黒部光昭
(京都)
「出る時間も言われていた通りだった。普段は途中出場はないので、やはりあの時間から行くのはリズムがつかみにくく難しい。これからは経験してチームに溶け込むだけではなくて、貢献しなくてはならない。セネガルのフィジカルはやはり非常に強かった。自分の存在感をもっとアピールしなくてはならないし、とにかく今日は結果(ゴール)が欲しかった」

宮本恒靖(G大阪)「向こうのやり方はわかっていたが、立ち上がりのセットプレーで向こうのペースになってしまった。あのシーンはマンマークで、(相手の身長は高いので=193センチ)DFもしっかり体を寄せて、こぼれたところをしっかりとフォローするように、その上からでもなおヘディングをされたら仕方がない(手がない)と指示はされていた。(坪井がどうというのではなく)みなで防がなくてはならなかった。前線も間違いなく良くなっている。どういう相手でもボールをしっかりと支配しているし、(代表のサッカーが)後退していると感じたことはない」

坪井慶介(浦和)「(セットプレーは)警戒していたんですが、やはり立ち上がりの、しかもセットプレーでの失点は流れを変えてしまう。その後は、しっかり気持ちを切り替えて(DF陣も)いい守備ができたと思うし、4人の連携はうまくいっている。(失点のシーンは)僕のマンマークでした。高さでは敵わないので、体を早くぶつけてつぶすようにと言われた指示通りにはできたはずだったんですが……(それを上回ってヘディングされた)。立ち上がりの失点、それだけでした」

ジーコ監督(会見から抜粋)「本当に強い相手だった。こうして苦しむ中でのW杯予選に向けての準備だとすれば、今日の相手は非常にいい相手だったと思う。勝っていた試合だったし、この負けには決して満足はしていないが、内容ではかなりのチャンスを作り、自分たちのバランスの良さ、長所を出して、相手の長所を消すといったこともできていた。ただ失点をした後のゲーム運びが課題で、同点にしていれれば局面も変わったはずだ。
(柳沢について)個人の評価をするのは難しいが、FWとしての幅広い動き、ゴールに向かう姿勢は評価する。ただ、決定的なチャンスは決めなくてはならないのだという焦りも見える。トライしている姿勢はすばらしいし、今日はツキがなかった。うちの選手で足が止まった者も、あごが上がった者もいない。ただフィジカルについては、セネガルは高さもあり、足元を使うチームで、今日は特に、日本のためになのか、長いボールを放り込んで来た。
(小野の復帰は)ブランクが長かったが、いいプレーをしていたと思うし、グループの中で懸命に自分の良さを出そうと努力しており、今日の働きには感銘を受けた。
(日本代表は勝たないといけないということと、強いチームを作るということが監督の仕事。あなたはどちらに比重を置くのか)結果が出ないことを何ともない、などと思うわけがない。ただ、今の自分の頭の中は、日本代表は2006年でどういう戦いができるのかだけを考えている。自分のことだけを考えて、格下の弱い相手と戦って、15連勝、20連勝したところで、またアジア予選を突破して喜んだところで意味がない。日本のフィジカルは確かに弱いし、フィジカルも強化して、腰も強くしなくてはならないし、上半身の強化もいるだろう。しかし結果が出なかったとしても、この路線(より強い相手との試合)を貫いていく。だからといって負け続けていいと私は思っていない。ここまでアルゼンチン、フランス、韓国、セネガルと、コロンビアと、どこも世界の強豪であり、私も選手も勝利は喉から手が出るほど欲しいことは言うまでもない」

セネガル/ギー・ステファン監督「非常に満足している。これだけ長い間、8日間にもわたって、日本で選手を自分の手元に置いておくことができたのは素晴らしいことだった。アウェーで、日本のようなチームを相手にし、しかも6万人近い観衆を前にして失点しないというのは本当に困難なことだ。日本はナイジェリアに3−0で勝利したチームでもある。(非常に高い湿度について)確かに湿度によってボールにはスピードが生まれるが、それが試合を左右する影響を持っていたとは思わない。トルシエ監督とは2週間前に電話で話し、(彼のアドバイスは)自分がビデオで分析したのと同じものだった。つまり、日本チームのクリエーターから出るボールはしっかり奪うんだというもの。サッカーの試合にはいつも力関係がある。自分たちの体調がよくないからいい試合ができなかったということもできるが、相手が自分たちを勝っていたと考えることもできるはずだ。(今日の日本についての考えは)今日のところは胸に秘めておく。とにかく私のチームの動きに満足している」

試合データ
日本   セネガル
8 シュート 6
5 CK 7
15 FK 16
0 PK 0
川淵三郎キャプテン「今日は勝ちたかった。非常に残念。ただ、チームは1試合ごとにチームらしくなっているし、着実に伸びている。今日もチャンスは山ほどあって、それを決められるか決められないかが勝敗を分けた。試合の内容としては悪くないし、悪かったのは負けたことだけだ。小野はまだ実戦感覚がないが、短い時間でも来て一緒にやることが重要だと監督は思っているんだろう。本山は、ドリブルも動き出しもよく掘り出しものだと思ったし、黒部もいけるぞという感じで、2人の動きは新鮮な感じがした。DFもFWもコンパクトになっているし、ボールを取られてからの守備網も整ってきている。あとは勝つだけだ。セネガルが準備万端整えてこの暑い中戦ってくれたことに感謝したい」


「14センチ、を詰める」

 世界陸上が行われていたフランスのサンドニでは、ボールのないピッチに室伏のハンマーが落ち、その外にあるトラックで末續が5レーンを走る姿になかなか慣れずに苦労した。ようやく目がスムーズにそれらを追いかけられるようになった、と思ったら、今度は、視野に大勢のプレーヤーや、とてつもなく多くの情報がまとめて飛び込んで来て苦笑してしまった。いくら取材の経験を積んだところで、両競技のあまりに極端な違いに順応し、情報や考え方を整理する作業には、彼らトップアスリートのレベルが高ければ高いほど苦戦し、非常に面白くもある。
 例えば二百メートル決勝で、末續は、彼以外黒人ランナー7人が揃ったファイナリストの平均身長よりも7センチ低く、体重では9キロも軽かったが、隣の相手に飛びつかれるわけではない。自分の走りと時計に集中するだけだ。室伏は、自分よりも10キロ以上も重い巨漢相手にパワー種目を戦わなければならないが、ハンマーを受け止めるわけではないので、自らの技術に集中する。

 ところが、身長179センチの坪井は、いかに体調を整え、メンタルを鍛え集中をしても、たった一瞬だけ193センチの、しかもバネに満ちたディオプにつかまれ、踏みこたえられずにもし倒れたら最後、この日のように試合さえ落としてしまうし、もしかするとW杯にも出場できなくなるのだ。
 この敗戦を、シリアスな顔で「勝たねばならぬ」と当たり前に嘆く気にならないのは、もし坪井が、立ち上がり6分という、百戦錬磨の相手にしてみれば「ごっつあん」の時間帯に、14センチも身長の高い相手に競り勝っていれば、全く違う展開になったことが明らかだったからだ。

 コンディション、湿度、連携、采配、いくらでも敗因のための要因は見つけられるが、決して悪い状況にはなかった。敗因はあのセットプレーさえ切り抜けていれば、というひとつだけであり、しかしもちろん、坪井の責任だと言いたいのでは全くない。
 高い技術を誇る、日本のきらめくミッドフィルダーたちはまるで自然に、また勇敢なFWたちは依然苦悩はしながら、それでも日々、「国際スタンダード」に身を置き、徹底的にもまれ、削られ、サバイバルをしている。
 しかし、日本のディフェンダーは違う。チャンスがないことは彼らの怠慢などでは全くないが、Jリーグに在籍する外国選手を相手にする以外、彼らがその身を「国際スタンダード」におき、体の一部を削られる思いと引き換えに相手を止める、そんなシビアな実体験をすることは不可能だ。

 坪井は「体も早く当てたし、詰めた。言われたことはできたはずだった」と悔やみ、宮本も「やるべきことをやってもなお、上を行かれた。止めなくてはならなかった」と言う。しかし今後、身長176センチの宮本と、179センチの坪井は、代表の中軸として、世界中の代表チームで恐らくもっとも低空にいる、異例の「センターバック」として、空中を守らなくてはならないという、かなりシビアな仕事を背負い続けることになる。しかも、DFの海外移籍が実現困難な状況下では、親善試合のみが実体験の場である。
 個人としてなら、坪井と宮本のセンターバック、チームとしてなら、セットプレーにおける守備体系は、あまりに当たり前に守って、あまりにも当たり前に上を破られた。日本代表のサッカーに欠けているのは圧倒的に負けているフィジカルにおいて、守備にどう挑むかで、唯一、日々を国際スタンダードで競り合っていないディフェンダーのオリジナリティの確立である。室伏や末續が限界まで考え抜いた、中盤の選手や野球で「輸出」した、誰にも真似のできない独創的な発想や高度なテクニックは、ここでも重要なテーマになるべきだ。

 11日からは、大阪で柔道の世界選手権が始まる。体重別の区分はあるとはいえ、壮絶な格闘において日本の柔道家たちが世界の頂点をどう極めるかは、この日は簡単に破られてしまった「14センチの差」、へのヒントを知るためにも重要なのだと期待をして、大阪に移動する。視野の確保に落ち着くまでに、相変わらず戸惑い、またもボールがないとか、走っていない、と苦笑いすることになりそうだが。



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