2003年8月24日

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陸上

◆◇現地レポート◆◇

第9回IAAF世界陸上競技選手権パリ大会
第2日(午前)
(フランス・サンドニ、スタッド・ドゥ・フランス)

 午前中行われた女子四百m予選では、ここ2年で7度の日本記録を更新した好調の吉田真希子(FSG)が4組目に出場したが、57秒08で予選落ちした。女子20キロ競歩の忠政良子(登利平AC)は1時間38分で25位だった。午後には、男子百メートルに朝原宣治(大阪ガス)が登場する。


「予想外と予想内」

 初日、これが世界のレベルだととことん思い知らされたのは、最終種目だった女子一万メートル決勝のラストスパートだった。
 中国の孫(銅、アジア大会金メダリスト)、エチオピアのアデレ(金、30分04秒18は今季最高)、キダム(銀、30分7秒15)と、オランダに帰化したキプラガト、4人のラスト1周は何と63秒、最後の1キロが2分50秒だった。百メートルを15秒少しで行くそのスピードは、そこまでの9000メートルが長い、長いウォーミングアップに過ぎなかったことを示すものである。

 陸上の特に長距離では頻繁に「刺激を入れる」という、一般的には何のことだかわからない恐ろしい言葉を使う。これは、ある一定の流れと量で積んできた走力、また仕上げの意味に、スピード練習を加えることによって、筋肉や感覚に「刺激」を入れるという意味で、日本の一万メートル代表の、福士加代子(11位、ワコール)、渋井陽子(14位、三井住友海上)、田中めぐみ(15位、埼玉リそな銀行)が、前日までに「(1キロ)3分5秒程度の刺激を入れた」と話していた。

 しかし、レースでの1000メートルが2分50秒の世界では、3分5秒が何の刺激にはなっていないこともまた明らかにした。
 日本記録保持者の渋井が周回遅れになる、こうしたレース展開のほうが、本人たちにとってよほど厳しい「刺激」だったことは言うまでもない。4人がかなり牽制しあったことを思うと、もしスピード争いに終始していれば当然29分台(世界記録は中国・王の29分31秒78=93年)はマークされていたはずだ。

「予想通リの展開で予想通リのタイムだった。集団で走るために、足が何度もぶつかってしまって前に出た。金メダルが欲しかったので残念だが、もっとスピードを磨かないと。ベスト記録は喜べる」
 中国の孫はそう話し、レース直後にスタンドに向かって手を振る余裕で、観客をさらに唖然とさせてしまった。

 一方、福士、渋井は「まだまだ力が足りないということ」と口を揃え、「あそこまで速い展開は想像できない」と、スピードの格差に唇をかんだ。アテネ世界陸上では千葉真子が銅メダル、セビリアでは弘山晴美が4位と健闘をしてきた種目でもあり、福士、渋井ともまだ若い。立ち直りは今後いくらもできるであろうが、「2分50秒の衝撃」は、日本の女子長距離界に今後、大きく跳ね返ってくるのではないか。

 うれしい予想外もある。

 男子3000m障害では、岩水嘉孝(トヨタ)が8分18秒93と、23年ぶりに日本記録を更新、世界陸上では史上初の決勝進出を果たした。もっとも予想外というのは本人には失礼な話で、「展開としては予想通り、ベストペースという流れもあったと思う。日本記録と決勝進出、その両方を狙っていた」と、岩水本人はミックスゾーンで胸を張っていた。ラストでは、先頭に飛び出し、周回をリードする堂々の展開も計算通リだったのだ。

「狙っていました」と話す一方で「(80年に新宅がマークした)日本記録は、僕が生まれて間もない頃のものですから、いつかは自分で破ってやろうとは思っていましたが、まさかこういう大舞台でできるとは」と首をかしげる姿に、興奮ぶりがにじんでいた(決勝は、26日)。

 2日目の午後の種目(日本時間25日深夜)では、女子スプリントの女王が決定し、男子百メートルでは4度目の世界陸上に挑む朝原も登場する。


第9回IAAF世界陸上競技選手権パリ大会
第2日(午後)
(フランス・サンドニ、スタッド・ドゥ・フランス)

◆男子百メートル一次予選

 男子百メートル一次予選では、日本からただ一人出場している朝原宣治(大阪ガス)が第2組に登場。朝原は10秒23をマークし、この組の4位となった。二次予選に出場できるのは、各組の上位3人と、4位以下の選手の記録上位2人の、計32人。予選全組が走り終えた時点で朝原は4位以下の上位2人に残り、二次予選への進出を決めた。

    朝原宣治「フライングがあれだけ続いてしまうと集中するのが難しい。後半、乱れてしまった。風邪は、そよ風。ちょっと追っている感じだった」

◆男子百メートル二次予選

 続く2次予選では朝原はまたも10秒23をマークして4位となり(各組上位4位までが準決勝に進出)、2大会連続3度目の準決勝進出を果たした。

    朝原宣治「一次予選よりはマシなスタートが切れた。後半バテなかったのはよかったが、想像している走りはまだできていない。いつもは二次予選が一番良い走りなのに、今日それができなかった分、いい走りが準決勝にズレ込んでくれればいいと思う」



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