2003年8月21日

※無断転載を一切禁じます


陸上

◆◇現地レポート◆◇

第9回IAAF世界陸上競技選手権パリ大会
日本選手団の会見より
(フランス・パリ市内ホテル)

 23日に開幕する世界陸上を前に、メダルが期待されるハンマー投げの室伏広治、今季二百メートルでランキング1位の末續慎吾(ともにミズノ)、4度目の世界選手権となる短距離の朝原宣治(大阪ガス)、一万メートルの福士佳代子(ワコール)4人が会見を行い、現在の調整状態と抱負について話した。
 沢木啓祐監督は心配される室伏選手の症状について、「投擲選手がウエイトで腰を痛めることも、雨の中で転倒することも珍しいことではない。まあ部位がどうかということになるが、何とかやってくれると思うので、隠し立てするようなこともなく、すべてオープンにしている」と説明をし、前向きな姿勢で臨むとした。
 競技にもっとも影響を及ぼすとされた高温も、通常の天候になってきており、今後は競技場内の風向きがどうなるかに記録がかかってきそうだ。


◆室伏広治選手の会見

「(怪我の状況について)1週間前(8月16日)に練習中に怪我をしました。転倒によるひじの打撲ですが、その結果、かなり強く打ったために、薬指のほうまで効きがよくなく、先週土曜日にハンマーを投げることも厳しい状況になってしまいました。コーチ、監督にも報告して、どういう状況になるかはわからないと話しをしました。現時点では、思った以上に回復が早く。昨日パリに入って、練習してからみなさんにお話できればいいと思いましたが、かなり回復は早いことは確かで、出場することを目標に調整をしている段階です」

    ──現時点では
    室伏 思ったよりは回復は早いんですが、投げてみないことにはわからない。
    重信コーチ 今の痛み云々というよりは、これが回転スピードをあげたときにどんな痛みが出るかが今は全くわからないです。

    ──転倒してからは?
    室伏 土曜日、日曜日はまったくハンマーを投げることができなかった。その後は、少しよくなったと思う。

    ──怪我はどう受け止めるか
    室伏 こういったものも自分がどう受け止めるかが大事だと思う。前向きに、先の競技人生も考えつつ、避けるのではなく、受け止めながら、自分にできることをするしかないわけですから。回りの方々のサポートを受けながら、なんとか乗り切っていきたいと思います。

    ──今の治療は
    室伏 かなりの打撲だったがレントゲンでは骨には異常がなかった。そのほかには、できることがあまりないんで、時間がかかることになると思う。

    ──怪我をしたときの気持ちは
    室伏 こりゃ大変だなあと。次の日どれくらいできるか、回復を見ながらやりましたが。

    ──怪我をされている間、84メートルを2人が投げましたが焦りは
    室伏 焦りはありませんでした。自分が飛びぬけているわけでもないし、横一線の中で、ぜひ試合をしたいと思いました。

    ──今後、出場を辞める可能性はあるのか
    室伏 コーチと監督と相談をしたい。

    ──サークルを見てどうか。試合への意欲は湧いたか
    室伏 いつも心配しているのは、ハンマーは危険だというのを、ほかの人たちも感じていると思います。ネットの位置など、より危険性はましていると思っています。実際にトラックに投げてしまう選手も増えています。ですからただサークルというよりも、安全性を心配していることがあります。下見をして、全力で投げることができればいいなと思いました。

    ──怪我による誤算はありますか
    室伏 そういったことも計算しながら、不安を追いやることもしなくてはならないと思います。自分自身がやってきた動きに対する自信が大事だと思います。

    ──転倒の状況を詳しく
    重信コーチ 回転しながら失敗した投擲だったので止めようとし、ドーナツ板のところに、頭を打たないような感じで変な格好でひじをついてしまった。強化の練習がちょうどできるようになっているところだったので、その後の計算が立ちません。日ごろの練習でも一番重要なのは、本人の体調を見ながら、その日に話し合いをすることがほとんどでやってきたと思う。本人は今の怪我ももう大丈夫か、という感じでやっている。

    ──勝負への意識は変わったか
    室伏 自分ができることは何か、それに尽きると思う。

    重信コーチ ひじは1週間前ですが、プラハの試合の後、かなり疲れている上体で、ものもらいもあるなど、疲れが抜けないままトレーニングに入ったところ、7月の後半は、ひじより問題な腰を痛めて、内出血ではなくて、全治3週間くらいかかるものだった。これもかなり直りが早く2週間ほどで普通のトレーニングができるようになった。そこから1週間でひじをやってしまったので、この1ヶ月、あまり練習ができなかった状態でここに来てしまった。本来の投げ込みでつかむところ、十分には投げていないし、スピード練習が不足している。パリまでほとんど投げないで入ったが、ひじ、指は、今は回復が早く出場はできるが、全力で投擲ができるかというと、これは現在ではまったく不明だ。万全の準備というわけではなくなってしまった。


◆朝原宣治選手の会見

「練習の中でこれという感覚をつかむことができた。自信を持って試合に臨むことができる。リレーもバトンをスムーズに渡すというか、練習通り本番で行ければと思っています」

    ──何度も出ている大会ですが。
    朝原 試合数が少ないということ、いつも微調整の中で流れを作ったが、今年は世界選手権のために練習で自信を作った。それができれば、と楽しみにしている。1次予選、どんな感じで走れるのかな、というのが楽しみです。

    ──つかんだものは
    朝原 ここまでは加速ができなくて、車に例えればガソリンをもらして走っているようなものでしたが、このところは気持ちよく走れるようになった。自分のいいポイントでないとグニャグニャになるけれど、今はいい感じでスポン、スポンと来ています。


◆末續慎吾選手の会見

「日本選手権が終わった時点で、試合は決めず、トレーニング中心と決めて、徹底的にやってきた。試合が近くなってきて、行けるところまで行こう、と。体調的には問題ありません」

    ──どんな課題があったか
    末續 外人選手と競った場合に、のけぞらないようにすること。

    ──今季No.1のタイムを持っているが
    末續 事の重大さに気がついたのは、パリ入りしてからで遅かった(爆笑)。シドニーともエドモントンとも立場が違うわけで、そういうのを(注目を)いい方向に変えることができればと思う。

    ──あと数日の調整は
    末續 あまりはしゃぎすぎないことですね。調整に入るんで。

    ──ラウンドのこなし方
    末續 テーマは油断せずに抜くということで、予選、2次は着順になりますが、決勝で力を残せるように走りたい。走っている最中に微調整をしたいと思います。


◆福士佳代子選手の会見

「元気に走ってます」

    ──アジア大会の再戦になるが
    福士 夢の中では何度もやりましたが、本番でできるかどうかです。やはり攻めのレースをしたいと思います。


第9回IAAF世界陸上競技選手権パリ大会
室伏広治、出場へ

 21日午後5時半(日本時間22日0時半)から、怪我による欠場が心配されていたハンマー投げの室伏広治(ミズノ)が2時間の練習を市内の大学で行い、10投程度ハンマーを投げ、最終的に出場を決定、明日23日初日の予選に全力を注ぐことになった。

室伏広治「日本での最後の投擲練習(怪我の後)と比べると痛みも回復している。投擲の感触もよくなってきている。回復状態はまずまずです。明日一日(22日)休養をとり、予選に全力を注ぎたい」
※練習の後、1時間程度のウエイトトレーニングも行った。

室伏重信コーチ「右腕に少し痛みは残るが、この練習で予選に出場できる手ごたえをつかむことができた」



読者のみなさまへ
スポーツライブラリー建設へのご協力のお願い


BEFORE LATEST NEXT