2003年8月20日

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サッカー

キリンチャレンジカップ2003 - Go for 2006 -
日本×ナイジェリア
(東京・国立霞ヶ丘競技場)
天気:晴れ、観衆:54,660人、19時3分キックオフ

日本
ナイジェリア
3 前半 2 前半 0 0
後半 1 後半 0
1分:高原直泰
39分:高原直泰
72分:遠藤保仁
 

リポート/古賀祐一

「キリンチャレンジカップ2003」日本代表×ナイジェリア代表戦は20日午後7時から東京・国立競技場に5万4,660人の観衆を集めて行われ、日本が3−0で快勝した。MF中田英寿(パルマ)、中村俊輔(レッジーナ)、稲本潤一(フルハム)、FW柳沢 敦(サンプドリア)、高原直泰(ハンブルガーSV)の欧州組5人を加えた日本は、開始56秒にDF三都主アレサンドロ(清水)のクロスを高原が左足で決めて先制した。その後、ナイジェリアの反撃をしのいで、前半39分には中村のクロスを高原がヘディングで決めて2-0とした。さらに後半27分にはMF遠藤保仁(G大阪)が稲本の縦パスを受けて抜け出し代表初ゴールを決めて3−0とした。ジーコ監督は国内初勝利を挙げて、通算成績を3勝3分け5敗とした。


ジーコ監督「前半早々の高原のゴールで、いい形でスタートできた。その後、ナイジェリアがプレッシャーをかけてきたが、自分たちをコントロールして、プレッシャーをかいくぐって失点しなかったのがよかった。スタジアムをいっぱいにしてくれたお客さんに1勝をプレゼントできてうれしい。ナイジェリアの中央の2人のDFが背が高かったので、背後をつく速いボールが有効だと思っていた。うちのFWはスピードがあるし、それを多用しようと話していた。欧州組に疲れは見えなかった。イタリア組は開幕前で試合カンがどうかと思ったが、無難にこなしてくれた。高原、稲本は数試合やっているし、高原は日曜の試合でもいい動きをしていた。今日も2点取ったし。コンフェデレーションズ杯の時のベースのチームで何試合やれるか。試合、練習を全員でやることで連係が生まれる。これから年末まで国際Aマッチデーの試合はすべて欧州組を招集する。このチームでやってまだ5試合。まだ同じメンバーで長い時間やることが大事なので交代させなかった。チームが出来上がったら代えて行く。遠藤はチームの中心としてバランスを保ち、縁の下の力持ち的バランサーの役割を果たした。称賛に値する。小野は能力が高いし、早く戻ってきてほしいが、遠藤を上回るパフォーマンスを見せなければレギュラーになれない」

中村俊輔「結果が欲しかったからよかった。アシストは、中盤で内へ内へと行っていたので、大胆にセンタリングを上げた。収穫は、暑い中で皆の共通意識がそろっていたこと。走る距離がばらばらではなく連動して動いていた。あとは予選を意識して戦うこと、セットプレー、細かいミスをなくすこと。だいぶ形になってきている。そういう形から個人の能力を生かしていけばワンランク上がる」

遠藤保仁「3点取れたし、失点ゼロだし、ホームで勝っていなかったのですごくよかった。シュートはオフサイドかもしれない。どフリーだったし決めるだけだった。できるだけ攻撃に参加しようとして最高のものになった。稲本と試合中に声を出し合ってバランスを崩さないようにした。DFラインとのコンビネーションもよかった。W杯予選まで時間もないし、試合も限られているのでアピールしたい。チームは100%じゃないけど、いい方向に進んでいる」

三都主アレサンドロ「いい立ちあがりから点が取れて、いい試合運びができた。アシストは、自分のパスがよかったからじゃない。いいトラップ、いいシュートだった。それがつながって、いいゴールになった。サイドバックは、コンフェデ杯で自信になったし、やれると思っている。チームは連係ができている。これから、もっとコンビネーションができればプラスになる。いいサッカーをして、日本が強いという印象を世界に残したい」

高原直泰「ようやくホームで勝つことができた。僕もジーコ監督になってようやく点が取れたのでよかった。1点目は、開始早々なので思い切って打つことができた。迷いなく打てた。2点というより、1点でもいいから取ることが大事。今までは試合に出ているだけ。結果が出たのがよかった。自分たちが目指すサッカーの土台になる試合だった。いい試合をしても勝たないと意味がない」

中田英寿「この1勝がほしかった。勝つことが重要と考えていたので、その通りの結果が出てよかった。重要なのは無失点で乗り切ったこと。相手の守備の組織が出来上がっていなかったのでチャンスはたくさんあった。もう少し取れるところで取れればよかった。それが課題。今までやってきたことを基礎として徐々に精度を高めていくだけ。もう少し互いに要求しあって、話し合って、リズムを作っていければいい。いい攻めはできたが、1本調子のところもあったので、リズムを変えられればよかった。課題は多々ある。これで完璧という攻撃はない。裏への飛び出しはいい抜け出しが何本かあった。それはとてもよかった」

柳沢 敦「勝ったことは素晴らしい。代表への思いはとても強い。入っていない間も必ずやりたいと思っていたので、チームに戻れてうれしい。90分の中でいろいろなプレーがあった。いいプレーも、悪いプレーもあるが、今日はいいプレーの方が多かった。チャンスに決められればよかった」


「基礎工事完了」

 ジーコジャパンは確実に前に進んでいる。国立のスタンドでそう確信した。チームがスタートして10か月。キリン杯パラグアイ戦で先発を大幅に入れ替えてからは、まだ2か月余りだが、さまざまな場面で「連係」が生まれてきている。そして、これまで単発だった連係が、複雑さを増している。それは攻撃、守備の両方においてである。

 開始56秒の高原の先制ゴールは、その直前の守備に端を発する。キックオフ直後の落ち着かない時間帯にボールを回すナイジェリアのDFラインに、柳沢、高原らが猛烈な勢いでプレッシャーをかける。ここでバランスを崩したDFラインが修正できない間に、高原がゴールを陥れた。選手個々の連係とともに、守備と攻撃の連係、流れも非常にスムーズになっている。チームの成熟度を示すゴールシーンだった。
 攻撃ではゴール前のワンツーが増えて、DFからFWまでの鎖でつないだようなパス回しも見られた。また、守備では、特にタッチライン際で、3人ほどで一気に相手選手を追い込む場面が何度もあった。選手1人1人がそれぞれプレーしている印象の強いナイジェリアとは対称をなしているため、日本の「連係」がより際立った。

 こうした「連係」をリードしているのは、欧州組だった。そして、欧州組5人は「連係」が「走る」ということで成り立つことを証明していた。中田はよく走っていた。ボールを奪われた後はすぐに体を張って奪い返した。ボールを持って孤立しそうな選手がいると、すぐにサポートに走った。中村もパスを出したら終わり、という印象が薄れた。守備への貢献度は従来とは比較にならないだろう。稲本は得意の攻撃ではなく、むしろ中盤から漏れてくる相手の攻撃を確実に防いだ。目立たないが、さぼらず走っていた。高原と柳沢のコンビは2人で何かを作り出そうと動いていた。

 パスコースは受け手が走ることでできる。それがパスの「連係」につながる。守備においてはポジショニングをこまめに修正することで組織的守備、つまり守備の「連係」が機能する。5人の欧州組はそれを実に忠実にこなしていた。
「収穫は、暑い中で皆の共通意識がそろっていたこと。走る距離がばらばらではなく連動して動いていた」という中村のコメントも走ることの重要性を伝えている。

 ジーコ監督は「見ていて楽しいサッカーで勝つことを目指している」と言う。攻撃的、創造的サッカーといえば、ボールにばかり目が集まりがちだが、実は選手が動くことによって創造性が生まれるのである。
「自分たちが目指すサッカーの土台になる試合だった」とは高原の台詞。欧州組5人が見せた、汗による「連係」は、ジーコ・サッカーの神髄を表しているような気がする。



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