2003年4月19日

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サッカー

J1 1st第4節
浦和レッドダイヤモンズ×京都パープルサンガ
(埼玉・駒場スタジアム)
キックオフ:15時00分、
天候:曇り、気温:24.6度、湿度:46%

浦和 京都
2 前半 1 前半 0 0
後半 1 後半 0
0分:エメルソン
57分:鈴木啓太
 

レポート・古賀祐一

 Jリーグ第1ステージ第4節の浦和対京都戦は19日午後3時からさいたま・駒場スタジアムで行われ、浦和が2-0で勝った。曇り、気温24.6度、湿度46%のコンディションの中でキックオフ。その直後に浦和の先制ゴールが生まれた。前半開始50秒、FWエメルソンが右サイドを突破。山田暢久とのパス交換からペナルティーエリアに侵入。そのまま右足で決めた。この1点が試合の流れを決めてしまった。浦和はいつも通りのマンツーマンDFを敷いた。京都はエースストライカー黒部光昭を負傷で欠き、松井大輔が坪井慶介のマンマークを受けながらも孤軍奮闘したが、最後の詰めに甘さを見せた。後半12分にはエメルソンが右サイドを突破してクロス。左サイドで長谷部 誠が折り返し中央で鈴木啓太が左足で叩き込み2-0として勝負を決めた。浦和は昨年第2ステージ第9節の名古屋戦以来10試合ぶりとなるリーグ戦今季初勝利を飾った。

浦和・オフト監督「今日は勝ちを収めることができたし、ケガをしている選手が90分プレーすることができたし、よかった。早い時間にエメルソンがゴールしてくれたのが大きい。前半は3ラインで組織されていたが、後半15分すぎから2ラインになって問題が生じた。FWが孤立してしまった。エメルソン自身も90分もつかどうかという体力だったが、2-0になって試合のリズムを取り戻させるために90分プレーさせた。ゼリッチも試合の流れに遅れがちだったが、時間をおうごとにリズムに乗れた」

浦和・鈴木啓太「取るべき人(エメルソン)が取ってくれて僕自身もうれしかった。これでチームがいい方向に行けばいい。今日は自分自身の中で本当に点を取りたかった。点を取っていろんな意味でアピールになった。永井さんが代表で点を取って、やっぱりチームに活気が戻ってきた。僕自身も永井さんに刺激を受けた。永井さんのゴールで、点を取ることによってアピールにつながると再認識させられた。これから五輪予選もあるし、チームも連戦になるし、勢いをつけることが大事。結果にこだわって勝ち進みたい」

浦和・エメルソン「(ゴールは)時間をかけないで決めないといけないと感じながらやった。きれいなシュートだったし、うれしい。90分やることができたし、試合中に痛みが出ることもなかった。久しぶりに自分の名前が呼ばれてモチベーションも高まった。これからも名前が呼ばれるように頑張りたい」

浦和・永井雄一郎「韓国戦の後という意味でも結果を出さなければいけない試合だった。体調はよかった。前半は動けたけど、後半はミスも多くてシュートで終われなかった。今日はチームが勝ったことにつきる」

京都・エンゲルス監督「カウンターを食わないように言っていたが、50秒でやられた。1-0になり、ピッチの雰囲気もあって、30分くらいまでショックを引きずった。前半は取られ方が悪くてカウンターを食ってしまった。後半は頑張ったが、点が取れなかった。キーポイントは点が取れなかったこと。松井、鈴木らの惜しいシュートはあったが、精度の問題がある」

京都・松井大輔「シュートを入れないと負ける。それに尽きる。ストライカーとしては失格だと思う。最後まで決められなかった。坪井のマンマーク?やっていて面白かった」


「永井のゴールがもたらしたもの」

 試合後、テレビカメラに囲まれた鈴木啓太のコメントは実に歯切れがよかった。
「永井さんが代表で点を取って、やっぱりチームに活気が戻ってきた。僕自身も永井さんに刺激を受けた。永井さんのゴールで、点を取ることによってアピールにつながると再認識させられた」

 16日の韓国戦の後半ロスタイム、途中出場の浦和のFW永井が値千金の決勝ゴールを決めた。相手DFのクリアをブロックしたボールがそのままゴールインする幸運なものではあったが、実は浦和のチームメートに与えた影響は少なくなかったのである。浦和の選手たちは「自分たちもやれる」という自信を取り戻した。永井はチームメートに何かを言ったわけではない。しかし、テレビで流れた誇らしげなゴールシーンが、1点の持つインパクトの大きさを伝えた。そして、翌17日に帰国して、その足で大原グラウンドに現れ、30分間ランニングした永井の姿が、日本代表選手のサッカーに対する姿勢を伝えたのではないかと思う。

 かつて浦和には福田正博氏(評論家)、岡野雅行(現神戸)、小野伸二(現フェイエノールト)ら日本代表の常連がいて、彼らが国際試合を経験してチームに戻った時に、それぞれが日本代表で吸収したものをチームにフィードバックしていた。それは戦術的なものであったり、技術的なものであったり、あるいは精神的なものであったりした。ジーコ監督就任後は山田、坪井、そして永井がその役目を果たしているわけだ。
 さらに、この日は日本代表のジーコ監督もスタンドに姿を見せた。報道陣もいつもの試合の1.5倍近い数が集まった。最下位で迎えた試合だったが、駒場スタジアムには鈴木が言う通り「活気」が戻っていた。そうした空気が選手のモチベーションを高めてもいた。
 鈴木は、永井のゴールがもたらした、こうした、いくつかの変化をもっともストレートに受けとめたのだ。

 試合開始直後のエメルソンの先制点も拍車をかけ、浦和の選手の動きは非常に積極的だった。鈴木もよく動いた。そして、後半12分、エメルソンが右サイドを突破して作ったチャンスを見逃さず、ゴール前に走り込み、左サイドから長谷部が折り返したグラウンダーのボールを左足で叩き込んで今季初ゴールを決めた。
 現在U-22日本代表としてアテネ五輪出場を目指している鈴木にとってA代表は決して近くはない。しかし、永井がやってのけたことは、A代表との距離感を少しばかり縮めてくれた。そして、永井のゴールで1点の持つインパクトの大きさを痛感した鈴木にとって、ジーコ監督の目の前で決めたゴールの意味は決して小さくない。

「Jリーグで活躍すれば誰にでも日本代表入りのチャンスはある」とジーコ監督は言う。Jリーグと日本代表はつながっている。少なくとも鈴木はそう感じているに違いない。



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