2003年4月2日

※無断転載を一切禁じます


サッカー

KIRIN WORLD CHALLENGE
キリンチャレンジカップ2003

U-22日本代表×
U-22コスタリカ代表

(愛知・豊田スタジアム)

★レポート・古賀祐一

U-22日本代表 U-22コスタリカ代表
1 前半 1 前半 0 1
後半 0 後半 1
37分:阿部勇樹 P.ブレネス:70分

 「キリンチャレンジカップ2003」U−22日本代表×U−22コスタリカ代表戦は1日午後7時20分から愛知・豊田スタジアムに2万2560人の観衆を集めて行われ、1−1で引き分けた。気温16.6度、湿度52%、無風という過ごしやすいコンディションの中でキックオク。日本は立ちあがりから、いいリズムでパスをつなぎ、ボールを支配した。そして、前半37分、ゴール正面右のFKをMF阿部勇樹(21歳、市原)が右足で直接決めて先制。しかし、後半25分、DF角田誠(19歳、京都)がDF青木剛(20歳、鹿島)に出したパスをMFパブロ・ブレネス(20歳、ベレス・セレドン)に奪われ、そのまま決められて同点にされた。その後は、お互いに何度かの決定機を迎えながら詰めを欠いて1−1のドローに終わった。日本にとっては、5月1、3日に日本で開催されるアネテ五輪2次予選(相手はバングラディシュかミャンマー)に向けた壮行試合でもあったが、攻撃のバリエーションという収穫を手にする一方、守備での集中力の欠如とペナルティーエリア内での精度の低さという課題を露呈した試合となった。

山本昌邦監督「結果的に引き分けたが、チームが狙いとすることができつつある。ベースがしっかりして、その中で個々の組み合わせもかみ合うところもでて、いい方向に向かっている。ただ、ワンプレーの怖さというかリスクを減らしていかなければいかねい。ミスした後のリカバーというか、こういう経験の中から選手が上がってくれればさらに大きくなれる。予想したよりコスタリカがタフでコンディションもよくて、いい戦いができた。五輪予選に向けたいい準備になった」

DF角田誠「僕のミスでやられた。攻めていた時間だったので、集中力が少しとぎれた。凄く重大なミスをしてしまった。国際試合では1つのミスが勝負を決める。これを糧にしたい。いい経験にはなった」

FW中山悟志「勝ちに行った試合で引き分け。皆納得していないと思う。課題も見えてきた。もちろん修正したい。足りない部分は終わったばかりなので(わからない)。ゆっくり考えたい。Jリーグで試合に出て結果を出していきたい」

MF松井大輔「前でタメを作ることと、声を出してコンビネーションを取ることを心がけた。ただ、フィニッシュが駄目だった。また、五輪予選があるので、それに向けていい仕上がりには持っていける。課題はフィニッシュです」

MF阿部勇樹「FKは球筋は見えなかったけど狙い通りだった。(ゆりかごポーズは)代表のトレーナーにお子さんが生まれたからです。攻撃の最後のところで質を上げないといけない。1点の怖さもわかった。攻守に積極的に顔を出していきたい。今年はケガがないので頑張れる」

ジーコ日本代表監督「拮抗したいい試合だった。失点までは日本の方がリズムがよかった。一瞬で失点してしまいバタバタしたが、あそこで踏ん張っていれば試合は日本のものだった。阿部のシュートは『凄い、素晴らしいシュート』(日本語で)。U−22代表選手を韓国戦に呼ぶか? 呼ばない。段階を経てからと考えている。A代表とU−22代表は全く別のチームだと考えている。大事な時期なのでこのチームで準備するべきだ。現段階ではA代表の選手の方が、U−22代表の選手より上。のぼり詰めるにはもう少し時間がかかる」

トルシエ前日本代表監督「重要なことはいろんなことを始めようとしていること。物凄くポジティブな試合。これを続けていけば、よくなっていく。攻撃に関しては凄くクオリティーが高い。大久保は大変面白いと思う。私のチームでも、小野、稲本、高原、中田浩らが高いレベルにあったが、これからそのレベルに向けて頑張って欲しい」

コスタリカ/ロドリゴ・ケントン監督「試合には満足している。日本はダイナミックで予期していた通りの素晴らしいチームだった。最後の90分まで内容の濃い、レベルの高い試合だった。コスタリカにとっても、日本にとっても勝利を収めたと考えていいのではないか」


「 “怖さ”の欠如」

 日本はあの教訓をもう忘れてしまったのだろうか。U−22日本代表の若い世代が喫した失点シーンで、昨年6月18日のW杯決勝トーナメント1回戦トルコ戦のあのシーンを思い出した。あの時も主導権を握っていたのは日本の方だった。中田浩二の不用意なパスが相手にカットされ、仕方なく逃れたCKから、トルコに決勝ゴールを奪われた。まだ、前半12分のことだった。集中力の欠如、気の緩みとしか思えないミスだった。しかし、そのプレーで日本は8強への道を閉ざされた。アジアのライバルである韓国が4強まで進んだこともあって、日本中がトルコ戦を「勝てたはずだった」と後悔した。あのシーンは日本中のサッカー選手の心と体に刻まれたと思っていた。
 しかし、この試合の失点シーンはあの時と同じミスに見えた。ワールドカップでの中田浩二と同じポジションである角田が不用意に出した横パスをパブロ・ブレネスにカットされて、そのまま同点ゴールを決められた。

 実はこのようなDFのパスミスによる失点は、昨年10月の釜山アジア大会決勝(イラン戦)でも見られた。山本監督は「コミニュケーションの問題。一瞬のミス。技術的な問題ではないと思う」という分析を示したが、ある意味で日本のチームの慢性的なものになっているのかもしれない。
 ジーコ監督が指摘する日本のウイークポイントは、決してテクニックやフィジカルではない。1点取られた後の試合運びなどメンタル的なことである。そして、そうした点は経験によって解消されていくとも、ジーコ監督は言う。山本監督もまた「相手に決定力があって、1つのミスがゴールにつながる怖さを経験していかなければいけない」と話している。
 こうした「怖さ」に必要な要素は、ミスをゴールに結びつけるFWの決定力、賞金、名誉などの試合の重み、観客、マスコミを含めた周囲からのプレッシャーということになるだろう。中田英寿、中村俊輔ら欧州のリーグでプレーする日本代表選手は、そうした「怖さ」の中で毎週試合をこなしているのだ。国内の選手との「違い」が出てきて当然なのだ。
 そうした意味で、残念ながらJリーグには、まだまだ「怖さ」が欠けている。常に優勝を争う鹿島、磐田の選手や、J2の降格に絡む下位争いの試合でこそ感じられるが、それ以外の試合では負ける悔しさや怖さは希薄だ。
 トルコ戦の教訓を生かすため、国際試合での強さを磨くため、選手、そして、ファンやマスコミもJリーグに厳しい目を向け「怖さ」を作り出していく必要がある。



読者のみなさまへ
スポーツライブラリー建設へのご協力のお願い


BEFORE LATEST NEXT