2003年3月26日

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サッカー

サッカー日本代表合宿3日目
(茨城県・鹿嶋市、カシマスタジアム

★レポート・古賀祐一

日本代表 紅白戦
レギュラー組 控え組
1 前半 0 前半 1 1
後半 0 後半 0
得点>鈴木隆行 小笠原満男<得点
GK:川口能活
DF:名良橋 晃、秋田 豊、森岡隆三、服部年宏
MF:稲本潤一、小野伸二、中田英寿、中村俊輔(後半21分→三都主アレサンドロ)
FW:鈴木隆行、高原直泰
GK:楢崎正剛(下田 崇)
DF:山田暢久、坪井慶介、宮本恒靖、大学生
MF:福西崇史、中田浩二、小笠原満男、三都主アレサンドロ(後半21分→大学生)
FW:大学生、黒部光昭
※フォーメーションはどちらも4・4・2で、中盤はボックス型。

 ウルグアイ戦(28日19時開始、国立競技場)に備えて合宿中の日本代表が26日、カシマスタジアムで紅白戦を行った。ジーコ監督は、レギュラー組と控え組に分けたが、合宿参加人数が21人(GK3人)のため、控え組には筑波大生が加わり、前半25分間、後半35分間という変則で行われた。レギュラー組は、MF中田英寿(パルマ)、MF中村俊輔(レッジーナ)、FW高原直泰(ハンブルガーSV)ら欧州リーグ所属の7選手がそろう豪華なメンバーだったが、コンディション不良や連係不足の影響で決定的チャンスを作れず苦戦した。後半12分にMF小笠原満男(鹿島)がGK川口能活(ポーツマス)の頭上を越えるミドルシュートを決めて控え組が先制。レギュラー組は後半32分にMF稲本潤一(フルハム)のシュートのこぼれ球をFW鈴木隆行(ゲンク)が決めて1−1で引き分け面目を保ったものの、攻守に課題が残った。

稲本潤一「かみ合わない部分、間延びしてしまうところはあった。チームとしてもっと機能しないといけない。DFラインと、僕と(小野)伸二の間に相手に入られて前を向かれてしまった。もう少し声をかけてやりたい。後半の方が修正されていたと思う。ヒデさん(中田)や俊輔さんのコンディションがよくなくて、運動量が多くなかった。コンディションが上がってくれば、もっとボールを取れて速攻の形も増えると思う」

小野伸二「前半やられた部分を話し合って、後半の方がよくなった。FWとの連係については、横パスの間にダイレクトで前(FW)につなぐパスを入れて、その後、前(FW)に絡んでいければいい。横パスばかりだと、どうしても遅れてしまう。今日もそういう(ダイレクトパスを入れる)ことでいい展開があったので、そういう形ができればいい」

中田英寿「中盤にはいくつか問題がある。守りに入ったとき、もう少し高い位置でボールが取れるようにならないと。もう少し時間が必要。レコバは素晴らしい選手。もし左サイドをフリーにしたら何でもやってしまう。フリーキックは特にすごい。ケアしなければいけない」

高原直泰「コンパクトにするように修正しなければいけない。本番でいいパフォーマンスをすればいい。試合をすれば課題は出てくるもの。お互いの意識を統一しないといけない。DFはこういうこと、MFはこういうことと統一されていれば、うまく回る(機能する)と思う」


「多弁な紅白戦」

 とにかくよくしゃべっている。選手同士がピッチの上でゼスチャーを交えて話す。その横ではジーコ監督が選手を捕まえて通訳を通じて熱心に語りかける。この日の紅白戦のハーフタイム、終了後にはそうした光景が数多く見られた。紅白戦でのレギュラー組の出来は芳しいものではなかった。多くの課題が出た。しかし、その課題がチーム内のコミュニケーションを活発化させていた。

 ビブスをつけないレギュラー組は、じつに豪華なメンバーだった。GK川口とボランチから前の6人の合計7人が欧州リーグ所属の選手たち。中田、中村、小野、稲本の「黄金のカルテット」も昨年10月16日のジャマイカ戦以来5か月ぶりに顔をそろえた。しかし、前半は筑波大生を加えた控え組に押されっぱなしだった。欧州の7人は時差ボケ、移動の疲労というハンデを負っていた。そのうえ、中田は先週、風邪で発熱して2日も練習を休んでいる。中村は右ふくらはぎ痛で前日は全体練習に参加せず別メニューで過ごしている。そうしたコンディションの差は中盤の運動量に現れた。黄金のカルテットは、控え組の早い出足に苦戦。前線の高原、鈴木のコンビネーションがいまひとつということもあって、横パスをつなぐことはできても効果的なダイレクトパスを前線に送ることはできなかった。決定的チャンスを作れないまま前半の25分間を終了した。
 守備面では、DFラインとボランチの連係が問題だった。小野、稲本のダブルボランチは攻撃を得意としていることもあって、前がかりとなり、DFとの間にスペースができ、そのスペースを相手に使われて時折ピンチを招いた。

 こうした課題が選手を「多弁」にさせたのだ。中田は秋田に「攻守の切り替えを早くしたい。DFラインの押し上げを早くしてくれ」と要求した。それに対し秋田は「カウンターを食らわないように中盤で簡単にボールを取られないように」と返した。そうした言葉のやりとりが後半の修正につながった。決してパーフェクトではなかったが、チームは少しずつ進歩している。会話はその進歩の手助けとなっている。

 トルシエ前監督は、対人プレーの練習、紅白戦をほとんどやらなかった。一方、ジーコ監督は積極的に取り入れている。紅白戦は、チームのウイークポイントを明確にする。基本練習ではわからなかった「アラ」が見える。もしかすると、トルシエ前監督はそれを嫌ったのかもしれない。「アラ」が見えることで自身の掲げる戦術が傷ついてしまうことを恐れたのかもしれない。しかし、紅白戦で自分たちが犯したミスは、選手に対して、どんな戦術書よりも強い説得力を持つ。選手たちは、投げかけられた問題を必死で解く。自分たちで考えて解こうとする。この日の紅白戦を見た報道陣やファンは、ウルグアイ戦に向けて不安を抱いたかもしれない。しかし、これがジーコ・ジャパンが強くなっていく「手順」なのである。そういう意味で、この日はジーコ監督のチーム作りの第一歩といえるかもしれない。



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