11月10日

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サッカー

J1 2nd第12節
ジュビロ磐田×柏レイソル
(静岡・ジュビロ磐田スタジアム)
天候:晴れ、気温:13.3度、湿度:52%
15時04分キックオフ、観衆:16,533人

磐田
3 前半 2 前半 1 2
後半 0 後半 1
延長前半 1 延長前半 0
24分:高原直泰
40分:高原直泰
95分:西 紀寛
玉田圭司:15分
エジウソン:84分

 J2降格の危機を磐田に勝利して払拭したかった柏は、前半から守備の深いポジションから前線へのロングパスで再三決定的チャンスを作り、立ち上がりをスローペースで入った磐田を襲う。
 15分、リカルジーニョから中盤に走り込んで来たエジウソンへつなぎ、そこからゴール前の玉田圭司へ。玉田はDFを振り切って倒れこみながら左足でシュート、理想的な形で先制点をものにした。しかし24分には、得点王を争う高原直泰にゴール前、わずかなスペースに飛び込まれて同点にされる。さらに40分にも、ゴール前の混戦からDFにあたったこぼれ球を高原にまたも拾われて逆転されてしまい前半を1−2で折り返した。
 後半、磐田が股関節に痛みがあったために田中誠と大岩剛を交代し、DFで連携の微調整をしていた39分、エジウソンがドリブルでエリア内を突破。鈴木秀人を抜き、揺さぶりをかけたことで慌ててスライディングをした大岩のファールを誘う。これがPKとなって、エジウソンが冷静にPKを右足で決め、柏が同点に追いついた。
 延長に入ると藤田俊哉、河村崇大を変え勝負に出た磐田の積極性からか、柏は動きが落ちる。延長前半5分、中盤からボールを奪われ、服部年宏―西紀寛とパスがつながり、西へのマークが外れるとニアにシュート。これが決まり磐田がVゴール勝ちで勝負をものにした。
 柏はこの試合、出場停止で明神智和、平山智規、根引謙介と主力選手3人を欠きながら磐田に食い下がったものの、勝ち点は15のまま。残り3試合で以前「降格」の可能性に苦戦を強いられる情勢となってしまった。

 一方、第1ステージ、第2ステージ完全制覇の偉業へ残り4試合と「詰め」に入った磐田は立ち上がりに先制点を許してしまい、さらに同点に追いつかれるなど課題も残ったが、結局攻撃力で柏を制し、勝ち点2をプラス。2位鹿島を4点引き離し、次節での最短優勝への道が開いた。

試合データ
磐田  
11 シュート 6
0 CK 4
38 FK 27
0 PK 1
ベンチからのスタートでVゴールを決めた西紀寛「途中から出た癖に(発言のまま)試合に馴染めなくて苦労してしまった。ベンチにいるときから自分ならばどうするかと色々と考えて試合に臨んだので、チームが勝ったことに対しては満足しているが、個人的には満足感はない。ボールを止めると動きが悪くなっていたので、(Vゴールの場面は)ダイレクトで行こうと決めていました。ニアが一瞬あいたのは見えていたけれど、ボールが来る前からを集中し、もうそのまま蹴ろうと決めて打った。(起用については)わかりません。これで勝ったからこれでいいとも言えるわけですし」


「ゴールの極意」

 今の高原の「ゴールへの嗅覚」を象徴するような2ゴールだった。前半24分、左サイドから藤田、中山と絡んで崩していた場面、ゴール左を鋭いドリブルで切り込んで行った藤田とほぼ並んで、高原が飛び込んで行ったのは、ゴール前、しかもニアサイドだった。おそらく体一つ分入れるのがやっとではないかと思われるような「スペース」に飛び込んだ瞬間、同点ゴールが生まれていた。
「俊哉さんからのボールが凄く良かったと思います。どこに当たったかはよくわかりませんが。ただ、あそこで飛び込めれば(シュートの形ではなくて)体のどこでも当たって入ると。2点目も、こぼれたボールに詰めていられるポジションにいたことが良かった」
 今の高原がもし想定しているものがあるとすれば、シュートの形ではなくて、ゴールに直結する「動き」である。シュートをどうやってどう打つかといった外側の話ではない。わずかなスペースを嗅ぎわけ、そこに体を運びさえすれば、体のどこかに当たり、そしてゴールに入る。今の高原の好調は、自らの肉体をボールと符号させるかのような、体にたたき込んでいく感覚によって、1試合ごとにその強さをましている。例えば、これだけマークが厳しくなり、しかも1試合で点を奪えば、さらに厳しく守備の人数がかけられる困難の中で、第2ステージに入って2点以上マークしている試合が、これで4試合目になる(4点、2点、2点、2点)。
「得点の仕方は何か発見するものではないでしょう。誰かにアドバイスをされたからできるものではないし、言われてできるものではない。ここまでのゴールはすべて、ゴールが次のイメージにつながったもので、ひとつ決めるとまた次のゴール、といった形で、自分で(点を取るために)どうやるんだ、といったイメージが沸いてきます」
 明日11日、アルゼンチン戦(20日)のメンバーが、この日も観戦していたジーコ監督によって発表される。
「ジャマイカ戦はシュートを打てなかったことだけではなくて、ほかのプレーでも自分で納得する動きができなかった。今回は、自分の持ち味をしっかりと出したいと思う」
 非常に落ち着いた、はっきりした口調で言ったところで、「(シュートはなくてもアシストなど)チャンスは作っていたんじゃない?」と質問が飛んだ。
「まあ確かにチャンスは作りましたけれど、僕にももっとチャンスをくれって感じでしたからねえ」
 こんな洒落た表現で「黄金の中盤」へさらりと言い、囲みの輪は笑いに包まれた。高原に「嗅覚」というような漠然とした雰囲気を感じても、言葉にすることはとても難しい。しかしその一面は、体とボールが常に共に動くかのような一体感にあることをこの日の2ゴールは示してくれた。アルゼンチン戦でもきっと。



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