10月25日

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★Column★
「真夜中のホットライン」

 選手がする分析は、評論家の言葉や、好き勝手なことを言う私たちメディアとは一線を画しています。良し悪しではなくて、そこには、ピッチに立ってボールを、相手を追う「同じ視野」が存在するからです。「自分ならどうしているか」、これはどこにも選手にしか存在し得ない「もの差し」ですし、その視点には「リアリティ」が潜んでいます。
 私は、評論を現役選手に──もちろんこれはとても難しいことであり、何より彼らの多大な協力なくしてありえない企画ですが──試合の分析をしてもらいたい、それも自分のポジションについてかなり奥深いものを、と思っていました。
 「SPORTS Yeah!」(角川書店)ではW杯期間中にこれを実現してくれました。そして今回のジャマイカ戦でもGKを松永成立(京都)、DFを井原正巳(浦和)、MFを北澤 豪(東京V)、FWを城 彰二(神戸)と4人が、それぞれのポジションで非常にプロフェッショナルな、同時にわかりやすい評論を寄せてくれています。
 試合前にまず打ち合わせをします。練習でのエピソードや、おおまかな流れを話し、試合を見るヒントにしてもらいます。そして彼らにポジションによって顕著なプレー、印象に残ったプレーを書いておいてもらい、試合後、そのテーマについて聞き、私が文章にします。試合後のコメントを彼らに伝えて疑問が出る場合もあれば、納得するケースもあります。いずれにしても彼らが見ているのは、テレビの映像や私たちの目線とは違うので、全く気が付かず、何分のあのプレー、と指摘してもらい、それをテープで見直すことがしばしばです。見ているようで全然見えていないのです。
 電話は試合が終わって、さらに私の取材が一段落した深夜になってしまうので、彼らには迷惑この上ないはずですが。

 松永は本当に丁寧なプレーをする選手でしたし、もちろん丁寧なコーチでしょう。おそらく私には言わないだけで、すべてのシュートとコース、楢崎のポジショニングを書きとめているはずです。
 井原は試合全体を分析する鋭い「戦術眼」を持った選手で、口下手だと思っていましたが、評論を聞く限り、そんな心配は無用のようです。安易にものを言いませんし、何より、彼が、誰か仲間について「悪く」言うのを聞いたことがありません。
 今回、初めて付き合ってくれた城も、落ち着いた分析を寄せてくれました。思えばもうベテランの域にいるのですね。得点シーンでは、鈴木の走り出しからフリーランニングを指摘しています。
 深夜、北澤の話を聞きながら、彼が代表のプレーに深い愛情を持っていることをあらためて悟りました。「代表とは家族だから損得ではない」。98年、最後に代表から漏れて帰国する時でさえそう言ったプレーヤーですから当然かもしれませんが。
 私が彼らの評論が好きなのは、厳しくとも愛情に溢れているからです。上辺や小手先で論じたりしないからです。「代表」を一緒に引っ張り、誇りと責任を共有し、共に苦しんできた仲間たちへの愛情と、そこから生まれる品格が言葉や表現ににじみ出るからで、もちろんこんな芸当は彼らにしかできるものではありません。
「彼らにしかできない」独自の、素晴らしい分析を、どうぞ読んでみてください。



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