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※無断転載を一切禁じます 総合 第14回アジア競技大会(2002/釜山) 11日は休養日だった陸上が再開され、女子五千mでは、今大会一万mで日本女子として2人目の30分台をマークし銀メダルを獲得した福士加代子(ワコール)が、一万mと同じ中国の孫 迎傑と争い、14分55秒19と自らの日本記録を0秒02短縮する日本新記録で2つめの銀メダルを手にした。福士はまだ20歳で、今回がシニアで出場する初めてのビッグイベントになったが、2種目で自己記録を更新するなど、来年のパリ世界陸上、アテネ五輪へ向けて大きく躍進した。また今季だけで同種目3度の日本記録更新を果たす快挙となった。
「収穫はバリバリありました」 20歳の、おおらかで屈託のないコメントは傑作である。 ──レースはどういう展開を ──今大会を振り返ってみて収穫は ──課題は こう見えても「若干20歳の女性ですから。思った以上に緊張してプレッシャーは感じていたようですから」と永山監督はレース後話していた。出身の青森県県知事や、ワコールの社長が応援に来ていること、シニアで初めての代表を背負ったこと、緊張する材料は多かった。 「目標は1つずつしか与えない。そして、ひとつの目標を果たすことが、次の目標のためのいいイメージになる。練習でも常にメンタル的な余裕は残していますし、限界の限界というところには追い込みません」 永山監督は言う。今季は欧州(ベルギー)で、日本女子として初の14分台をマークして以来、これで今季三千mとあわせて4つの日本記録をたたき出したことになる。心配されるのは、やはり怪我とバーンアウト(燃え尽き症候群)だが、監督は「今後もメンタルスタミナというのを大事にしたい」と、強化プランを明かす。
第14日
(韓国・釜山)
中国の孫は、アジア大会の女子五千m、一万mの初のダブルタイトルを獲得。優勝記録14分40分41秒は、今季の世界4位となる好記録だった。
女子ハンマー投げでは綾 真澄(グローバリー)が62メートル18で銅メダル、男子やり投げでは村上幸史(スズキ)が、78メートル77で銀メダルをそれぞれ獲得。男子千六百mリレー予選には9か国が出場し、日本は小坂田淳(大阪ガス)の故障で、四百m障害銅メダリスト為末 大(大阪ガス)と吉澤 賢(デサントTC)が助っ人で出場する台所事情の苦しさだったが予選を通過し、13日の決勝に臨む。
福士 (永山)監督からは、変化じゃない、お前は変身だ、と。3000メートルからは変身しようと思って、はい、変身してきます、と言ってきたんですが(中国の選手が)1キロでもう並んで行ってしまいました。早過ぎました、もう行くのかよ、って、待ってくれーって思ったけれど、待ってくれませんね。でもシルバーはいただき、って思って走りましたね。
福士 はいもうこれはバリバリありました。成果はありました。(1周)72秒で押し切って、今日もとことん追い込んでやろうと思って、テーマはとことんでしたね、とことん、と、変身。
福士 スピードの切り替えですか。これは常にこれからの課題になるかと思います。中国4000年の歴史は凄いですね。これでパリの世界選手権も決めてもらえると嬉しいんですけど、お願いしますよ、沢木さん(今大会陸上チームの監督)。
五千mでは今季13位相当、一万mでも6位と、「世界との」差は依然大きい。しかし、福士にも監督にも「差」をネガティブに意識する様子がない。また20歳という若さゆえに、勢いから「燃え尽き症候群」や「慢性疲労」といった状況に陥ることも心配はしていないという。
それが、今季成長の証しであるとも。
肉体的なスタミナとメンタルのスタミナ両方を追求しながら、パリ、アテネを続く何十週もの周回レースを福士はここでスタートさせた。アジアの成長の中で苦しい戦いを強いられている日本勢にあって、2つの銀メダルと何よりもその中身には、日本の女子陸上界にとって「バリバリの成果」があったはずだ。
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