9月22日
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サッカー
J1 2ndステージ第5節
ジュビロ磐田×FC東京
(ジュビロ磐田スタジアム)
天候:雨、気温:22.3度、湿度:79%
観衆:12,849人、15時03分キックオフ
磐田 |
FC東京 |
6 |
前半 2 |
前半 0 |
1 |
後半 4 |
後半 1 |
01分:藤田俊哉
15分:高原直泰
47分:高原直泰
68分:高原直泰
87分:高原直泰
89分:中山雅史 |
福田健二 :66分 |
試合データ
磐田 |
|
東京 |
24 |
シュート |
16 |
8 |
GK |
15 |
8 |
CK |
9 |
26 |
直接FK |
11 |
5 |
間接FK |
6 |
0 |
PK |
0 |
ホームで勝って首位を堅持したい磐田は前半からはやいボール回しでFC東京を圧倒し、高原直泰の4ゴールも含め6得点と大量点を奪って勝ち点12とした。
試合開始1分、FC東京のパスミスを藤田俊哉が拾いシュート。ロングシュートが決まって試合開始早々楽な展開に持ち込んだ。15分には、ここ2試合得点がなかった高原が左足でこぼれ球を押し込み、2−0で試合を後半戦へと折り返した。
後半2分、高原がまたもこぼれ球から決め、3−0と大きくリード。磐田はその後もホームの利を生かし、短い芝と雨で滑るピッチを最大限に生かした攻撃を展開。最後まで攻撃的なサッカーを見せたFC東京を、さらに高原の2点、中山の1点を追加して力でねじ伏せた。
4得点を奪った高原はこれでG大阪のマグロンを抜いて18得点と、得点王争いのトップに立った。また、藤田は自身のJリーグ通算80ゴール(7位タイ)の記録を見事達成した。
この試合4得点をあげた高原直泰「早い時間帯でトシヤさん(藤田)がゴールを決めたのがよかった。とにかく自分たちのプレーがしっかりできているし、基本のところをしっかりやるのがジュビロのサッカー。(4得点について)このところ2試合、点を取らなかったので、(今日は)よかった。ポジショニングがよくて、ゴールを取れるところにいたと思う。これからもこういうプレーをしていきたいし、(4得点)すべてがイメージ通りだった。どれかと言われれば、4点目が一番いいゴールでした(※中山が右からボールを入れ、高原がニアに走り込んでボールを決めた)。(これで得点ランクトップの18となったが、と聞かれ)常にゴールを狙っていきたいしチームに貢献できるよう、がんばりたい」
ダメ押しの6点目を決めた中山雅史「タカ(高原)があれだけキレているといい攻撃ができます。(ループシュートのようだったが、と聞かれ)誰が何と言おうとループでした(笑)。本当はエリア内だったのでPKだと思ったが、PKだとボクは蹴らせてもらえないのでイチかバチかギリギリ、ループシュートを狙っていった(笑)。試合前半のミスは反省している。これからもチームで(ボールを)つないで、いいサッカーをしたい」
試合開始1分に先制点を入れ、Jリーグ通算80ゴールを達成した藤田俊哉「あのゴールはラッキーとしか言いようがない。今日は全員のフィーリングが合っていたと思う。あれだけボールをつないでいければいいと思うし、ゴールの数は勢いにつながると思う
服部年宏「今日は自分も攻撃に上がれるように、ボールがよく上がっていたと思う。あれだけボールが回せることができると楽しいよね。プラン通りの展開になったし、気合いがのっていた。(河村崇大選手もいい動きができていたのでは、と聞かれ)途中で鼻を折っていたけどね(鼻骨骨折)。鼻折るくらいで一人前ですからね。(動きは)よかったね」
「6点よりも実は凄いもの」
決して悪いサッカーをしたのでも、何か怠慢があったわけでもなかったFC東京を相手に奪った6点は、素晴らしい。磐田担当の記者に教えてもらったところによれば、ホームの利を存分に生かすために、前日短く芝を刈り込んで、パススピードを「最速」に設定しようと目論んでいたそうだ。キックオフから、相手がパススピードに戸惑っているわずか1分で、それも相手のミスから冷静に決めた先制点を奪った藤田のロングシュートはすばらしかった。
4点をFWの高原が決め、得点王争いのトップに立ったことも素晴らしい。4得点は本人が分析するようにポジショニングが綿密で、イメージ通りフィニッシュに持っていったこともさらに素晴らしい。おそらく、試合のハイライトは、すべてこの4点で現されるだろう。
また、試合が決まっているにもかかわらず、中山が最後の最後までDFと競り合って決めた6点目も素晴らしい。
「誰が何と言ってもあれはループシュートです」と自ら笑ったが、あれほど泥臭い、しかし圧倒的に強いゴールを決められれば相手には打つ手はない。しかし、この試合でもっとも素晴らしかったのは、得点にならなかったシュート、正確にいえばそこに至るまでの展開だった。6点を生む要素全てが、ゴールにはならなかったプレーに映し出された。Jリーグが93年以来、「個人」のレベルであれば数々の世界的スーパースターが華麗なゴールを決め、信じ難いテクニックを披露し、勢いのある若手を輩出してきたこの若いリーグで、知る限り、「チーム」が見せた最高級のプレーだった。
前半25分、中盤、相手エリアでボールを奪った西 紀寛からスタートしたボールは、高原、名波 浩とつながれた。磐田の練習では、特に小さいスペースでの、それはほとんど信じられないほど狭い面積しか持てない状況の中でのボール回しがよく行われている。この場面、名波はあっという間にFC東京の中盤に囲まれてしまったが、あの練習の意味と価値が一瞬にして明らかになるように、四方をふさがれているはずの名波は、まるで誰にも見えない空間にいるかのような優雅で繊細なボールさばきで、3人の壁をかいくぐって、ハーフラインから藤田へボールを入れる。
藤田は、タイミングが少し後ろにかかったこの難しいボールを素早くキープして右サイドを走り抜ける高原へ。高原は、これを左サイドを上がって行った服部に向かって、パスで逆サイドへ展開。この瞬間、FC東京のDFは大きく振られて、すでにボールにはまったくついて行けなくなったが、いやらしいことに、服部はこのボールをもう一度高原に戻す。高原のシュートはゴール右サイドにそれたが、相手ボールを奪ってからつながれたパス、これにタッチした選手、前線への動きを支えたDF、すべてが全く同じ「絵」をイメージして動いていったプロセスの見事さは、スタジアムで見ていたファンを震わせたはずであるし、選手も6ゴール以上にあの場面を心底楽しんだのではないか。極端に狭いスペースの生かし方から、オープンスペースへの展開、サイドで相手を振り回すこと、こうした動きのすべてが6点を生んだ基礎にある。
「まあ、自分のプレーにはいつも、もっとできるって思うんだけれど、ああいうプレーができることは、自分たちのサッカーへの大きな自信になる。あれは、戦術とか約束じゃなくてまったくお互いのフィーリングだけなんだけど、悪くないね。いいものを持っていることが、自分たちで確認できるから」
この日、メモリアルゴールを決めた藤田は淡々とそう話す。服部は藤田の言葉にさらに加える。
逆サイドの展開には「ああやってボールが回れば楽しいね。あの場面は、オー、そう来るかい、って感じで自分のチームながら面白い展開だと思ったよね。フィーリングを実現するのは、中盤をボックスにして、みんな動けるようにしている点ではないかな」
鹿島と「2強」と称されるが、鹿島の強さがサッカーを「固定」して行くプロセスで培われる強さを持ち味にすることに対して、磐田は常に「変化」や「新しさ」を追い求めることで強さを支えている。
プロの対価として数千円に値しないゲームもある。しかしこの日磐田の試合には、いくら払ってでも見たい、観てよかったと思わせる何かをも90分に散りばめていた。
磐田の完全制覇に向けてもしライバルがいるとすれば、「マンネリ」だけなのかもしれない。サッカーを録画で観ることは全く勧めないが、この試合だけは、是非。

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