12月1日

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サッカー
W杯組み合わせ抽選会

(釜山・BEXCO)

 2002年ワールドカップ組み合わせ抽選会がこの日、韓国、釜山で行われ、グループリーグ組み分けが決定した。日本と同じH組に入ったのはベルギー、ロシア、チュニジア。日本の初戦の対戦相手はベルギー(6月4日、埼玉)、第2戦目はロシア(6月9日、横浜)、第3戦目はチュニジア(6月14日、大阪)となった。なお、グループEからHの試合が日本で行われる。

    グループリーグ組み合わせ抽選後のコメント

トルシエ監督「すばらしいセレモニーだった。サッカー界のスターが集まり、私もここにいられたことは光栄である。グループについて、みなさんはいいとか悪いとか、そういうことを言うだろうが、私自身は解説をしたくない。それぞれの国をとても尊重している。ようするに、これはいいドロー(※抽選)とか、そういうことはまったくありません。例えば、このグループは決勝トーナメントに行けますよと言ったところで、それぞれの監督の顔を見ればわかるように、みんなが非常に満足げ(=自信があるようす)だった。見てわかるように、このグループは非常にオープンなグループだ。何が起こるかわからない。あと半年あるので、今の状況で何か言うことはできないだろう。日本は情報を収集し、あと半年の間しっかりとした準備をしなければならない。黄金の言葉というのは“謙虚さ”だと思う。予想をしてはならないし、今の段階では、準備をしっかりする、と言うだけだ。ベルギーとロシアは過去の歴史から見ても強いだろう。しかし、試合がどういうものになるかはわからない。ワールドカップの目標は、改めて言うまでもなく、前からグループリーグ突破と言っている。この責任をしっかり受け止めていかなくてはならない。これから大きなプレッシャーがかかってくるだろう。その中で、冷静に、落ち着いていかねばならない」


左から、ワセージュ・ベルギー監督、ツクマノフ・ロシアサッカー協会ゼネラルディレクター、トルシエ・日本代表監督、ミッシェル・チュニジア監督
チュニジア/アンリ・ミッシェル監督
「非常に満足している。日本はとても強くて、いいチームで、3年間かけてチームを作ってきただけに、非常に難しい戦いになる。私はトルシエが日本でどういう仕事をしてきたか知っているので、本当にそう思っている。また、地元のファンの前で戦うというのも、彼らにとっては有利に働くだろう。このグループはバランスがよく取れていると思う。チュニジアがちょっと劣っているという感じはするが、できるだけいい準備をして地震を起こしたい。みなさんを驚かせたいと思っている」

ベルギー/ロベール・ワセージュ監督「満足のいくドローだ。まず、開幕戦を開催国と行えるということはW杯のひとつの大きな名誉である、ということを言いたい。私たちは日本に対して非常に尊敬の念を抱いているし、過去の戦い(※99年キリン杯、0−0で引き分け)も苦しいものだった。ここ数年の日本の活躍は目覚ましく、私たちにとって油断をできるような材料は何ひとつない。また、ロシアは大国であり、チュニジアは身体能力に優れている。準備をしっかりして、熊本で体制を整えていきたいと思う。とにかく、新潟での試合に向けてベストを尽くしたい」

ロシアサッカー協会ゼネラルディレクター/ツクマノフ氏「私たちの望んでいた形でドローが終了したと思う。日本についてはロシア及びCISの関係者がJリーグを大変よく知っている。彼らからの多くの情報を得ることができるだろう。私たちは今大会、決勝リーグに進出し、大きな成果を上げることを目標としている。予選突破はそのための非常に大事なステップになる。グループとしては、難しいとも言えるし、簡単だとも言える。チュニジアは私たちとは違って、持って生まれたセンスというものがあふれたチームだ。ベルギーは伝統的に非常にテクニックがあり、どこのチームとやったとしても、決して大きく崩れることはないだろう。日本については、ここ数年大きな進歩を遂げ、何人かの選手がヨーロッパでプレーしていることも知っている。ただ、現時点では多くの情報を持っていないので、これから彼らの話をよく聞きたいと思っている」

非常に苦しい組に入ったイングランド/エリクソン監督「(組み合わせについて聞かれ)運命としか言いようがない。今日の組み分けの中でもっともタフなグループになった。ラッキーが欲しいね。一番の問題はここだろうね(と、アルゼンチンの文字を指さした)。(眠れそうか、と記者に聞かれると)まあ、眠れるとは思うが、その前にご飯を食べる努力をしないといけない」

日本サッカー協会/木之本興三 強化推進本部副本部長「いずれの組も厳しい予選を戦い抜いてきた強豪国であるのは間違いないこれから半年近く、監督、選手、およびスタッフが一丸となってグループリーグ突破という目標に向かって全力を尽くしたい」

抽選者の大役を担った井原正巳(浦和)「国を引いてしまうわけではなかったので、そんなに緊張はすることなかった。強豪もいるいい組み合わせになったと思う。クライフが隣にいたので、色々と話をさせてもらった」

日本サッカー協会/小倉純二 副会長「ベルギーは熊本で合宿をすることになる。ロシアは候補を4箇所くらい回りたいと言っているし、チェニジアは心に決めたところがあるようだ。イタリアは、仙台と千葉、もう1箇所の候補を見るためにあす(2日)来日すると言っている。これからは各国の準備をしっかりしていかなくてはならないし、イングランドのような人気チームにはベッカムなどスターもいる。法律を変えて(フーリガンのこと)日本に迷惑はかけないと思うが、日本にも選手の安全性を守ってくれ、との要望も出ている。これからが大変になる」

    組み合わせ抽選結果

Group A Group E
フランス ドイツ
セネガル サウジアラビア
ウルグアイ アイルランド
デンマーク カメルーン
Group B Group F
スペイン アルゼンチン
スロベニア ナイジェリア
パラグアイ イングランド
南アフリカ スウェーデン
Group C Group G
ブラジル イタリア
トルコ エクアドル
中国 クロアチア
コスタリカ メキシコ
Group D Group H
韓国 日本
ポーランド ベルギー
アメリカ ロシア
ポルトガル チュニジア


「プラスチックのボールのお陰で……」

 イングランドがアルゼンチンの組に入った瞬間、エリクソン監督の表情がコンベンションセンターに設置された画面に大写しになった。苦笑いとも、涙目とも、とれるような複雑な表情をして、そのまま大きなため息をついた。
「一体、イングランドはどういう運命(欧州予選でもドイツと同じグループだったことを踏まえて)のもとで戦っているんだ、と、神に聞きたいね。もっともタフなグループに入ってしまった。あの(抽選で使う)カラーボールときたら……。何とかしてくれないか」
 イングランドの入ったグループFは、アルゼンチン、ナイジェリア、スウェーデン。母国スウェーデンとも戦わねばならない監督は、ミックスゾーンでそう言って、必死で笑顔を振り絞った。しかし記者から「ネガティブな結果か」と聞かれ、「いや、ただのネガティブじゃない、本当にネガティブだ」とがっくりと肩を落としてしまった。
 ナイジェリアの関係者はこのグループを「死のグループ」と話し、アルゼンチンは「因縁の、という言葉絶対に使いたくないが」と、前回フランス大会で対戦した試合(イングランドがベッカムの退場をきっかけに敗れた)、さらにはフォークランド紛争に遡る両国の因縁に、表情を暗くしてしまった。
 緊張感が漂うミックスゾーンがあるかと思えば、日本の組のように、どの国も大きなチャンスと、ポジティブな監督の顔がのぞくグループもある。

 悲喜こもごもとは、まさにW杯の抽選のために使われるかのような言葉だ。
「グループAは非常に論理的なグループだ。Bは激しいトップ争いをするだろうし、Cは新旧の激突といった感がある。Fは残念ながら、戦争だ。32か国を均等にすることは難しいがいい組み合わせだった」
 ペレ氏は、各グループ分けの感想をそう表現していたが、同じW杯の予選でありながら大きな差が生まれる。
 日本のグループHには欧州、アフリカなどでシードされるような国はないし、威圧感はない。ベルギーの協会関係は「もっとも平和的なグループ」と表現し、トルシエ監督はこの団子状態を「オープン」と表す。ビッグネームはいない。しかしトルシエ監督が何度も言うように、「いい組とか悪い組とかは存在しない」のも事実だろう。
 どのチームもカードの裏表に常にさらされている。一歩間違えばグループからこぼれるし、波に乗ればそのまま突破する。

 E組の韓国、ヒディング監督もユニークな感想をもらしていた。
「米国は弱いと(みんなが)言うが、そうではない。ポーランドは戦いやすいというがそうではない。ポルトガルは強いとみな言うが、そこまで考えることはない」
 結局、対戦国が決まるということは、相手を知ること以上に、実は自分たちの足元のほうをより明確に見つめ直すことの、裏の表現に過ぎないのかもしれない。
 4年前の初出場、アルゼンチン、クロアチア、ジャマイカがH組で決まった際にも、戦いやすい、難しい、そんなさまざまな評価が吹き荒れた。そんな中、岡田監督がこんな言葉をもらしていたことを思い出した。
「試合は国の名前や実績で分析するものではない。試合の日、キックオフをしてわかるものがそのほとんどなんだから」

 さて、肩を落としていたエリクソン監督はそれでも最後の砦、「ユーモア」を懸命に携えていたようだ。「(今晩眠れそうですか? と聞かれて)眠れるとは思うが、まずはその前に夕飯を食べる努力をしたい」と、笑顔で会見場を後にした。
 明日から、これまでさまざまな方向を向いていたW杯出場国の目線が、ただ一点、初戦の相手に定まることになった。


抽選会直前情報


 抽選を5時間後に控えて、大会公式スポンサーを務めるマスターカードがサポート体制について発表を行い、同社グローバルアドバイザーのペレ氏(ブラジル)が10月30日にFIFA理事会で決定した「前回優勝国の予選免除の撤廃」について、「個人的には好ましくないと思う。予選の免除は優勝国へのボーナスのようなものであるし、かといって、予選は非常に重要な準備にもなる。どちらにしても価値のあるもので、むしろその国に(予選に出るか出ないかの)決定権を委ねるのが良いのではないか」と、個人的な見解を明らかにした。
 またペレ氏は、今大会の優勝候補として、「ブラジルのビューティフルサッカーの精神は今も残る」としながらも候補とは言わず、シードに入らなかった、イングランド、ポルトガル、前回優勝のフランスを推し、注目選手に、フィーゴ(ポルトガル)、ラウル(スペイン)らの名前をあげて「とても楽しみだ」と話した。
 抽選は午後7時から行われるが、午後3時からは本番とまったく同じ形式と、井原正巳(浦和)らドローをするゲストも揃って同じタイムスケジュールで通しの最終リハーサルが終了。このリハーサルで日本と同じH組にはクロアチア、メキシコ、アイルランドが入るなど、本番と同じ緊張感が会場を包み、プレスセンターでは各国の記者が「あながち、(リハーサルで)デタラメとも言えない組みあわせの順列もある」と、画面に見入りメモを取り、関係者からは「どうやっても難しい戦いになることだけは明確になった」と声があがっていた。以下、本物が出るまでのお楽しみまでに。

抽選会前に行われたリハーサルでの組み合わせ
A組 フランス ロシア ウルグアイ チュニジア
B組 ブラジル 中国 イングランド セネガル
C組 スペイン パラグアイ 南アフリカ ベルギー
D組 韓国 米国 ポーランド デンマーク
E組 アルゼンチン トルコ スウェーデン カメルーン
F組 イタリア エクアドル ナイジェリア ポルトガル
G組 ドイツ サウジアラビア コスタリカ スロベニア
H組 日本 クロアチア メキシコ アイルランド


■短信:トルシエ監督が祝福のコメント
 トルシエ日本代表監督は釜山市内のホテルで皇太子妃雅子さまのご出産を聞き、「ご誕生おめでとうございます。偶然なことにワールドカップ本大会抽選会の日と重なったことは、私たちにとって、とても象徴的で大変うれしく思います」と、協会を通じてコメントした。



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