10月31日
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サッカー
J1 2ndステージ第11節
ジュビロ磐田×柏レイソル
(ジュビロ磐田スタジアム)
天候:晴れ、気温:15.3度、湿度:77%
観衆:9,289人、19時04分キックオフ
磐田 |
柏 |
1 |
前半 1 |
前半 0 |
3 |
後半 0 |
後半 3 |
31分:清水範久 |
渡辺 毅:63分
渡辺光輝:74分
砂川 誠:82分 |
鹿島と首位争いをする磐田にとって、残り5試合を大事に戦う上で重要なホームでの1戦、前半開始直後に清水範久がファーストチャンスとなったシュートを外すなど、苦しい展開を自ら招いてしまった。
土曜日に行われたナビスコ杯決勝では120分を戦って延長、しかもPK負け。もっとも痛手の残る敗戦からわずかに3日での試合だけに、フィジカル、メンタルともに集中することが難しかったのか、ミスを連発する。前半31分、福西崇史、西 紀寛とつないで清水が得点したものの、身長でもキャリアでも圧倒的に低いはずの柏を相手に追加点が奪えない。
後半になると、柏の両サイドの積極的な攻撃にあわせて、交代で入った砂川 誠の裏を走りこむ動きに、DF3人が振られる場面が増える。63分には、FKを取られ、このとき、壁には藤田俊哉一人だけが立っているという状態になるなど、らしからぬ守備で、このスペースの余裕から十分にタイミングとコースをはかっていた大野敏隆に、DFで波に乗っていた渡辺毅への絶好のボールを入れられヘディングで1点を失ってしまった。
「両サイドの位置を高くあげれば、磐田にも対抗できる」とぺリマン監督に分析されていたように、この日は、サイドの守備も甘く74分には、右サイドの渡辺光輝にこぼれ球を拾われヘディングで失点。3点目は中盤のマークがあいたところで、大野にラストパスを通されこれを砂川に決められダメを押されてしまった。
鹿島が勝ったために、磐田は残り4試合になって首位陥落。また、磐田がホームで敗れたのは、昨年の第1ステージ最終戦、奇しくもぺリマン監督が指揮を取る清水に敗れて以来となった。
試合データ
磐田 |
|
柏 |
10 |
シュート |
9 |
9 |
GK |
12 |
5 |
CK |
6 |
13 |
直接FK |
17 |
7 |
間接FK |
3 |
0 |
PK |
0 |
ぺリマン監督「大変満足できる試合、勝利だった。うちの平均年齢がこれほど低く、キャリアも不足していたために、もし負けていればそれが敗因になったところが、なぜかこれが勝因になってしまった。とても驚いている。磐田とは順位ほどの大きな差はないと思ったし、相手はDFを中心にして特に疲れていたのかもしれない。(自身がここで勝ったのが磐田のホーム最後の敗戦だったと言われ)サッカーでは本当に面白いことが起きるものだ」
鈴木政一監督「相手を完全に乗せてしまった。ああなると行け行けで、こちらは前がかりになってしまい、失点する最悪のパターンとなってしまった。(ナビスコ杯での疲れ、敗戦の影響など聞かれ)そういうことは、言い訳になる。今日はうちのサッカーができなかった。それが敗因です」
「灯台元暗し」
ぺリマン監督にとって、磐田のスカウティングの成果はほぼ完璧なものだったに違いない。まずは、中盤の人数をかけることで、磐田の「ファーストブレーク」を防ぐ。
「磐田のビデオ研究には、ひとつだけプレゼントがついた。先週のナビスコ決勝で、これが最終的な決断を下すのに大いに手助けになった」
監督は試合後そう話していたが、自身が監督に就任する以前の今年の磐田の試合もビデオで分析、さらに、もう1試合の情報を得ていたことは、もともと、清水の時に同じホームで土をつけた運を、さらに科学的なものにしたのかもしれない。
服部、藤田、福西、奥といった代表の中盤も、地味ではあるが、明神、平山、渡辺光、大野、柳らの激しいチェックには前半からてこずり、すぐに効果がなかったとしても、こうしたマークと、これにかけたストレスは後半になって間違いなくボディブローのように「効いて」いた。
次にサイド攻撃。西、奥の守備への負担を増やすことで、持ち味を生かし、相手の持ち味を封じた。
しかし、こと磐田に関しては完璧だったスカウトも、監督の盲点は自分のチームにあったことがこの日の勝因となった。
「私自身、驚きを覚えている。洪、黄、萩村、薩川といった本来空中戦に勝つべきメンバーが誰もいなかったにも関わらず、前半からすべてのセットプレーで空中戦に勝っていたからだ。若さ、これがいい方に作用したことは想像をはるかに上回った」
柏は、根引、町田といった若い選手で戦わざるを得なかった。相手はしかもキャリアも何もかもが上回る相手。監督は磐田のできには少しも驚いていなかったが、自分のチームの闘争心、粘りには「正直驚きっぱなしだった」と試合後笑った。
この日、磐田の生命線ともいえるほど重要な中山のボールキープを封じ込める働きをした渡辺 毅は言う。
「自分はとにかく中山さんに対してでも激しく、相手がいやになるまでつこうと思ってプレーすることを心がけた。若さとチャンスに飢えてることは同じなので、それがいいほうに作用したんでしょうね。大事なのはこの次ですけれども」
この日、磐田の先発は藤田の、記念となる250試合出場を含めて11人中9人が3桁の試合出場数を誇っていた。たいして、柏は渡辺と明神だけ。
疲れであるとか、メンタルでのモチベーションとか、磐田の敗因を探すよりは、柏の勝因を考えることが面白い。
「試合数」、「キャリア」の絶対的な座標を覆すものがもしこの試合にあったのだとすれば、未知数という名の不思議と魅力だった。百戦練磨の監督さえも、わからぬほどだとすれば、それもなお面白い。
「後半からのペースチェンジャー」
(文・松山 仁)
0−1と、首位をゆくジュビロ磐田にリードされた状況で、後半開始から投入された砂川 誠は、攻守にわたって動き回り、逆転の原動力となるとともに、後半42分にはだめ押しとなる3点目を決めた。
前半はパスもなかなかスムーズにつながらないことに加え、ベンチサイドの線審の曖昧なジャッジも続き、ペリマン監督の怒りをベンチで感じていた。
「なるべくボールを多くさばいて、ゲームメーカーの役割をしろ」という監督の指示を受け、柳 想鐵に替わりピッチに立つと、チームとベンチにたまっていたフラストレーションを一気に爆発させるように、サイド、中央と縦横無尽に走り回りボールに絡んだ。
「ジュビロの3バックは前にはすごく強いタイプがそろっている。でもそれを逆手にとれば、裏をとれると思った。実際にうちが逆転してからは相手が前がかりになってくるのがわかったから、逆にそれを利用することができた」
大野からのスルーパスに合わせた3点目はまさにイメージ通りだったという。
「2列目から3バックの後ろにできたスペースをめがけて走り込んだ。大野からはパスが来ると信じていたし、タイミングもばっちりだった」
前半は押さえ気味、後半から勝負というチームの戦略を支える駒として、西野監督時代から起用のされ方は変わっていない。もし変わったとするならば、相手の長所を逆手にとる砂川の発想の方ではないか。

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