9月8日

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サッカー

J1リーグ2ndステージ第4節
ヴィッセル神戸×鹿島アントラーズ

キックオフ:19時01分、観衆:16,551人
天候:晴れ、気温:28.0度、湿度:68%
(神戸総合運動公園ユニバー記念競技場)

神戸 鹿島
2 前半 0 前半 2 3
後半 2 後半 0
延長前半 0 延長前半 0
延長後半 0 延長後半 1
73分:和多田充寿
85分:薮田光教
小笠原満男:8分
鈴木隆行:40分

本山雅志:112分

 第2ステージ6位につけていた神戸は、首位のアントラーズを追い詰めながらも、一瞬の隙を突かれて延長後半7分、フリーキックからビスマルク、途中交代で入った本田泰人、本山雅志とつながれて、Vゴール負けを喫した。
 前半8分、小笠原満男に先制点を許し、前半終了5分前には、鈴木隆行に今季3点目となるヘディングでの得点を許し0-2と、首位チームを相手に持ち味を生かせずに前半を終えた。
 しかし後半に入って「とにかく1点。形はいいから流れを呼ぼう」としていた川勝良一監督の指示が積極性を生み、28分には、強烈なシュートを武器とする和多田充寿がダニエルからのボールをミドルシュートで決めて1-2とする。神戸には勢いが生まれ、逆にこのところ涼しかった鹿島から移動してきたアントラーズのメンバーに湿度による疲労が見え始める。40分には、和多田が得意のロングスローで、中央を突破する三浦知良へ。三浦はゴール前まで持ち込んでこれを正確に、左足のセンタリングで薮田光教へ返し、薮田が左足で決め2-2と同点にした。
 しかし、延長に入ってからは神戸に疲れが見え、特にDF陣の足がピタリと止まって、連携のコミニケーションを取り合う声も減ってしまう。鹿島の途中交代で起用された2人を自由に動かせてしまい、残る7分を戦えずに貴重な勝ち点を失った。

試合データ
神戸   鹿島
18 シュート 16
10 GK 14
6 CK 7
18 直接FK 21
5 間接FK 2
0 PK 0
秋田 豊「非常に(蒸し)暑かった。鹿島とはかなり違いましたね。ただし、2点を取ってからの守備、後半の形というのは、しっかりと整えていかないと、向こうにはやらなくてもいいチャンスを与えてしまうようなことになる。勝ち点1と2は全く違うので、それを拾ったことはよかった」

名良橋晃「思った以上に後半に疲労が出てしまったと思う。2点を取った試合で2点を奪われたのだから反省のほうがより多い試合になると思う。昨年の力まではまだ達していないが、去年は3分けというのがあったので分けよりは1を取るという点でチームの底力にはなるとは思います」

中田浩二「鹿島は連日寒いくらいだったので、きつい試合にしてしまった。やはり、2点とってから、もう少し、しっかり詰めておかないといけなかったし、去年なら1-2で終わる試合を同点にされたところは、今後修正されていくと思う。暑く日程の厳しかった夏を乗り切って、体がそれを覚えたことは収穫だった」

トニーニョ・セレーゾ監督「2-0で前半を折り返したが、相手ホームでは一番危険なスコアでもあった。2-0になったことで相手は4点とられても5点とられてもいいからとにかく攻めるという姿勢が見えた。実際1点とられてしまってさらに勢いにのせてしまった。中田浩二も全体的にはいいパフォーマンスであったが、一本の判断ミスが点につながってしまった。2-0で勝っているのだからあそこまで上がらずにディフェンシブにいってもよかった。これは個人の問題ではなく日本サッカーが抱える問題でもあるのだが」

三浦知良「後半なんとか追いつきたかったけど、勝ち切れなかった。評価できる部分もあるけれども、やっぱり勝たないとね。とにかく切り替えていくしかない。鹿島のサッカーに合わせて相手をみてしまっていた部分がある。(岡野については)実践向きだね。気持ちも入っているし」


「試合で寝てはいけない」

 あと7分を堪えることができないチームと、あと7分で勝ち点を倍にするチームがある。当然のことながら、こうしたほんのわずかな差と、勝ち点1ずつだけが15試合なり、何か月か積み重なることによって、最終的には天と地ほどの差が生まれてしまう。明暗を分ける、と簡単に言うが、それは勝ち点2点と0点の話ではなくて、実は1点の2倍であり、試合中の積み重ねではないか。
 神戸と鹿島の試合は、そうした積み重ねを、非常にわかりやすく示すものだった。

 延長後半に入って、神戸の、特にDFの運動量が落ちて行った。しかし運動量以上に、1秒ごとに落ちていく集中力の恐ろしさを熟知しているサントスは、すでにDFの最終ラインまで入ったり、なぜかゴール前でフリーになっていた危険な秋田を防御したり、DFに声をかけ、手をたたき叱咤し続けていた。
 しかし延長後半へ折り返したとき、すでに集中力は途切れてしまっていたのだろう。逆に、それを絶対に見逃すはずのない鹿島のビスマルク、本田の両ベテラン、そして本山もまた、やはり見逃してはくれなったようだ。

「すでにあの時間帯には選手からの声がまったく出ていなかった。それは危険な予兆で、疲れてしまって集中力が途切れて、準備不足になってしまうようでは絶対に勝ち点1さえ取ることはできないと思う。試合中に寝てはいけない。どんなに眠くても、寝てはいけないのだ」

 サントスは、静かな口調だが、しかし落とした1点の重みに懸命に耐えながらそう話した。寝てはいけない、とはもちろん比喩ではあるが、眠いから(疲れているから)といって、足が止まり、声も出なければ、鹿島を倒すどころか引き分けで食い下がることもできない。ベテランのイラ立ちは、敗戦以上に、勝ち点1を奪おうとしない貪欲さの欠如にあるのかもしれない。

 一方鹿島では、秋田が「(勝ち点)3はなくても、1と2はまったく違う」と話す。鹿島は全員が、2は1の倍であること、もしかするとそれがシーズン終了時には倍どころか、優勝と2位を分けるかもしれないほど「大きな差」だということを、十分過ぎるほど意識して、あの時間帯をものにしたはずだ。
 点を決めたのは、ベンチにいた本田と、起用機会のなかった本山である。ともに、交代でのわずかな時間に「賭けてきたもの」が、神戸の選手とはまるで違っていたはずだ。

「ベンチだからといって、腐ることもなく、けれどもそこに甘えたりもしない。ああいうプレーは、やはり自分にとってもの凄く大きなものでしたし、もちろんチームにとってもそうだと思う。うちのいいところですし、ほかにない強みです」

 中田は試合後、そう話していたが、本山、本田ともに、かつての同僚サントスが言うように「試合中、もちろんベンチでの準備から、一瞬も寝ていなかった」ということになるのだろう。

 試合は2-3で、112分まで同点。しかし、勝ち点は鹿島が9から11で、神戸は6のまま。もし、は禁物とはいえ、1を分け合っていれば、10と7。
 試合の勝ち点とは、まとまりなのではなくて、1を1つずつ積み重ねるかのような作業であることを、この日のゲームが教えている。


岡野の神戸入団会見より

 浦和から来年1月31日までの期限でレンタル移籍することになったFW岡野雅行(29歳)が8日午前、神戸に入り、試合前に簡単な会見を行なった。岡野は、浦和・チッタ監督のもとでは出場機会がなく、第1ステージ終了後から「試合に出たい」と移籍への希望を口にしていた。そうした中で、神戸はいち早く岡野獲得に向けてアクションを起こすなどしており、浦和の監督がピッタ・コーチへと交代し岡野残留の引き止めをした後も、この移籍への双方の希望が変わることはなかった。神戸移籍後の岡野の新しい背番号は年齢と同じ29となった。

試合前の岡野の話「がんばるしかないです。とにかく今は結果を出したいし、やっと決まってよかったです。神戸はきれいな町で住みやすそうですね。(神戸は)みんなでがんばるチームなので、僕も一体となってがんばっていきたい。(ほかのチームからも誘いがあったと思うが)自分が試合に出られないときにすぐに誘ってくれてとてもうれしかった。できるだけ神戸で長くプレーをしたいし、2002年もここでやりたいとは思うが、今は契約の話なのでなんとも言えない。(右のアウトで起用を考えられるが)足を買われたと思うので、それを活かしていきたいと思う。背番号は29、ちょうど僕の歳と一緒ですね」



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