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前半19分、右サイドを切れ込んで行った森島寛晃(C大阪)が、相手DFと競り合い、ゴールライン際にドリブルで持ち込む。この日、左サイドで先発した服部年宏(磐田)がゴール前に走り込んでいたことで、スペースが十分に生まれ、ファーサイドに走ってきた柳沢敦(鹿島)がフリーとなり右足でダイレクトで決める。日本はいい時間帯に先制した。 豪州の高さとFWのポジショニングから比較的に低い位置に押し込まれていた日本の守備陣も、この得点の後に高い位置を維持して攻撃的にボールを回し始める。湿度が80%を上回るという悪環境の中で、前戦のキリン杯(大分)の際とはまったく違った質の高いフィジカルパフォーマンスも見せ、後半も動きが落ちずに当然のことながら終始主導権を握った。 後半8分には、左サイドから服部が柳沢と中央でワンツー。服部が珍しく右足で蹴りこみ2点を奪った。また、ベンチが柳沢と中山雅史(磐田)を交代しようとレフリーが中断する直前、柳沢が倒されPKをもらう。しかしすでに試合を止めるホイッスルが鳴っていたこともあって、トルシエ監督はピッチに入ろうとする中山にPKを逆指名。これに中山が応えて、柳沢と交代して最初のプレーでPKを決めた。中山のゴールはアジアカップ予選となったマカオ戦以来。 選択肢の広がりと結果、その両方を手にして、日本代表のゲームはひとまず終了。秋に予定される遠征で再度始動する。 トルシエ監督「タイトルがかかっていた試合に闘争心を持って臨んだことに満足している。試合の当初は全体のリズムに懸念があったが、みな知性を持って、日本サッカーが弾けるようなゲームを見せてくれた。(PKのシーンは)交代を告げた直後にPKとなった。私は、中山は責任のある仕事のできる人間で、しかもJリーグ全体のやる気というものを彼が象徴していると考えていた。『PKは蹴れるか』と聞いたら、中山が驚いてはいたけれど『準備はできています』と言ったので蹴ることになった。しかし、これをもって柳沢が蹴るのにふさわしくないということではまったくない。むしろ体調はすばらしくよく、その逆かもしれない。ただ、あそこで中山が蹴ることで、より大きな効果を得られることを考えただけのことだ」
久々の左サイド先発、攻守で「MVP」ともいえる動きをした服部「(右足のシュートは)びっくりですね。ゴールのイメージはあったけれど、ゴール自体はまったく見ていなくて、ああ、ワンツーがうまく来たな、どこに蹴ろう、と狙ったら入った。左サイドでの先発には、監督からもこれといった制約は与えられずに自由に、と言われていた。それもあって、攻撃で高い位置まで上がろうとしたのがよかった。相手との駆け引きもうまくできたと思う」
1点目をアシスト、スペースを作る動きを果たした森島「1点目は、ハット(服部)がゴール前に走り込んでいるのが見えた。前半の最初はなかなか難しかったけれど、ああいうときには落ち着いて、ボールがしっかり回るまで待つことが大事だと思う。点に絡む動きがスムーズにできるように、常に意識を持っていたい」 今日が誕生日、昼にはお祝いをされ、無失点がプレゼントとなった川口能活(横浜FM)「この気温と湿度の中で高いパフォーマンスを求めるのは本当に酷だと思うけれど、そんな中でいいゲームができてよかった。昼食のときに、みんなに誕生日を祝ってもらい、ちょっとしたお礼のスピーチをしたんですが、涙が出るほどうれしかった。今日は絶対に勝つというモチベーションを与えてもらいました。落ち着いて、姿勢をしっかり取れば(得点を)奪われない自信があります」
「褒めてつかわす」
しかし、皮肉なのは、あのときは舞台を自ら降りたのに対して、この日は舞台に自らが上がろうとした途端に幕が下りたような格好になったことだろうか。すでに交代を告げるホイッスルが鳴ってしまっていた。もちろん待つことはできるが、監督はより大きな「効果」を求めて「演出付き」の勝負に出る。 中山が「準備はできています」と監督に自らもPKを蹴る意志をアピールしているとき、ピッチでは選手たちが「柳が出てしまうから、隆行(鈴木、鹿島)に蹴らそうかと話していた」(服部)という。しかし、中山が蹴ると言いながら交代で入ってきたために、中山が蹴ることになる。 服部は試合後笑った。 「ヤナギ(柳沢)が交代になってしまったんで、みんなで隆行だね、と話していたら、蹴るって入ってきたからね。また外すんだろうな、と楽しみでニヤニヤしながら(中山のPKを)見ちゃいましたよ。自分のシュートもさることながら、あれもびっくりですけどね」 監督が試合前に課したテーマは「選択肢の広がり」と、当然のことながら相手のメンバーを見ても「勝つこと」だった。
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