8月12日

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世界陸上
最終日
女子マラソン、男子4×100リレーほか
(カナダ・エドモントン)

 現地時間の朝8時から行われた女子マラソンで、土佐礼子(三井海上)が国際大会初出場で銀メダルを獲得する大健闘を見せた。2時間26分01秒で優勝したシモン(ルーマニア)は、シドニー五輪で高橋尚子(積水化学)と競り合って銀メダルを獲得しているが、これまで世界陸上や五輪などの大きな大会では「無冠」と言われてきた。しかし、この日は2時間26分1秒でキャリア初の金メダルを獲得した。
 スローペースとなったレース序盤にはディタ(ルーマニア)が飛び出し、2位集団との差を2分近く広げ、独走を32km付近まで続けることとなった。一方、2位集団では、18km付近でリディア・シモン(ルーマニア)がペースを上げると、土佐、渋井陽子(三井海上)らもそれに合わせてペースアップを図る。
 スタート間もなくから独走を続けていたディタが32km付近で2位集団に吸収されると、34kmあたりから土佐、渋井、シモン、ザハロワ(ロシア)が抜け出して先頭集団を形勢。そこからザハロワがやや後れを取り、35km付近からは土佐、渋井、シモンの3人に集団が絞られた。
 土佐が仕掛けたのは37km過ぎの給水地点。シモンも帽子を取ってこれについて行くが、渋井は少しずつ遅れ始める。ここからはシモンと土佐の一騎打ちとなり、コモンウェルス・スタジアムへの下りのアプローチでシモンがスパートすると一気に土佐との差を広げ、2時間26分1秒のタイムで金メダルを勝ち取った。必至で食い下がった土佐は2位でゴール。3位には渋井を抑えてザハロワが入った。渋井は4位と、惜しくも表彰台に届かなかったが、体調を崩したなかで粘って上位入賞を果たした。松尾和美(天満屋)は30キロ手前で集団から落ちてしまって9位(2時間29分57秒)。補欠から急きょ出場した松岡理恵(天満屋)は2時間34分45秒で22位、腰痛に苦しんでいた大南は2時間42分25秒で37位に終わった。
 97年のアテネ(鈴木博美、金メダル)、99年のセビリア(市橋有里、銀)に続いて、日本は女子マラソンで3大会連続でのメダル獲得となった。また、日本女子は団体戦で金メダルを獲得し、「女子マラソン最強国」の看板を守った。

  選手名 5km 10km 15km 20km HALF 25km 30km 35km 40km FINISH
1 シモン
(ROM)
17:59 35:16 53:05 1:10:22 1:14:08 1:27:01 1:45:08 2:02:07 2:18:49 2:26:01
- 17:17 17:49 17:17 - 16:39 18:07 16:59 16:42 -
2 土佐礼子
(三井海上)
17:59 35:14 53:03 1:10:22 1:14:08 1:27:02 1:45:09 2:02:06 2:18:48 2:26:06
- 17:15 17:49 17:19 - 16:40 18:07 16:57 16:42 -
3 ザハロワ
(RUS)
18:00 35:14 53:04 1:10:23 1:14:08 1:27:01 1:45:09 2:02:07 2:19:02 2:26:18
- 17:14 17:50 17:19 - 16:38 18:08 16:58 16:55 -
4 渋井陽子
(三井海上)
18:00 35:14 53:03 1:10:23 1:14:08 1:27:02 1:45:09 2:02:06 2:19:02 2:26:33
- 17:14 17:49 17:20 - 16:39 18:07 16:57 16:56 -
5 オベーレン
(GER)
18:00 35:14 53:03 1:10:23 1:14:08 1:27:01 1:45:08 2:02:17 2:20:09 2:28:17
- 17:14 17:49 17:20 - 16:38 18:07 17:09 17:52 -
6 バルソシオ
(KEN)
18:00 35:15 53:04 1:10:23 1:14:08 1:27:01 1:45:09 2:02:22 2:20:49 2:28:36
- 17:15 17:49 17:19 - 16:38 18:08 17:13 18:27 -
7 ゲメチェ
(ETH)
18:00 35:16 53:04 1:10:23 1:14:08 1:27:02 1:45:09 2:02:40 2:20:57 2:28:40
- 17:16 17:48 17:19 - 16:39 18:07 17:31 18:17 -
8 モルグノワ
(RUS)
17:59 35:15 53:03 1:10:22 1:14:08 1:27:01 1:45:09 2:02:22 2:20:45 2:28:54
- 17:16 17:48 17:19 - 16:39 18:08 17:13 18:23 -

9 松尾和美
(天満屋)
17:59 35:15 53:04 1:10:23 1:14:08 1:27:02 1:45:33 2:03:56 2:22:10 2:29:57
- 17:16 17:49 17:19 - 16:39 18:31 18:23 18:14 -
22 松岡理恵
(天満屋)
18:00 35:18 53:32 1:11:59 1:15:51 1:29:48 1:49:21 2:07:46 2:26:30 2:34:45
- 17:18 18:14 18:27 - 17:49 19:33 18:25 18:44 -
37 大南敬美
(東海銀行)
17:59 35:15 53:05 1:10:58 1:15:02 1:29:09 1:50:14 2:11:25 2:33:06 2:42:25
- 17:16 17:50 17:53 - 18:11 21:05 21:11 21:41 -
※上段は通過タイム、下段は5kmごとのラップタイム


3度目のマラソンで銀メダルを獲得した土佐礼子「とにかくリズムを守って、レースの流れに乗っていくことを考えました。自分ではかなりいいペースだと思っていたのに(初めの)5キロ18分で、あれ、調子が悪いな、と思いました。どんなレースになるのかがわからず、(鈴木秀夫)監督には自分のリズムで行け、とだけ言われていました。それと、下り坂であまり足を使うな(無理をして出なくていいということ)と。30キロを過ぎて前に出ようと思った。シモンにはラスト勝負では勝てないってわかっていましたから、35キロ過ぎて、少しずつ、少しずつ(ロング)スパートをかけてはいたんですが、(彼女が全然離れないので)ああまた来たか、ああまた来たか、と思っていたらトラックに入ってしまいました。メダルはうれしいです。昨日、練習の後、こけてしまって(笑)、コンタクトがずれたな、と思ったら、ドーンと。ひざを打って、腰を打って、でもレース中は苦しいほうが精一杯で、痛いのは忘れてました。休みをもらって、シブの(故郷)栃木にでも行こうかな。忘れてました、賞金4万ドルもらえるんですか! やった!」

2度目のマラソンで一度は体調を崩したが4位と粘りに粘った渋井陽子「(3位のザハロワに抜かれたとき)彼女は下りで一気に抜いて離れていきました。うまいですね。(4人になったがと聞かれて)いえ、3人しか見ていなかったんですが、でも私はたぶんメダルには入れないなと思った。体調があまりよくはなかった。(熱が出たことはそれほど影響はないが)あのときにはリンパも腫れていて、一日治して、監督から『大丈夫だから』と言われていた。ここで3番とって調子こいちゃうと次につながらないから。でも、苦しい中でも粘れるようになったのが収穫。苦しいですが、戦っているという感じがします。マラソン2回目でダメになったと言われるのが悔しかった。苦しいときも土佐さんが支えてくれました。今回、私、すげえ、大人になったと思いません?」

9位と粘った松尾和美「今朝、微熱が出てしまって……。風邪ではなかったけれども、ちょっとだるかった。調子がいいのは本当でしたが、こちらに来てから動きはよくなかった。悔しい。ここまで一生懸命やってきたので、しばらく休みたい。集団があまりにスローで、エチオピアの選手から、肘鉄、スパイク(キック)などものすごかった。最後まで帰ってこられてよかった」

補欠から一転、代表になった松岡理恵「とても疲れました……(全身に鳥肌が立って走りながらも体が冷えていった、と話していた)」

腰痛で思うような練習を詰めなかった大南敬美「腰のほうは、もう5日前に治っていました。リラックスして走るよう言われていたんですが、もう最初からきつくてダメでした。この世界選手権を反省にして、またがんばりたい」


 メダルの期待もされていた男子4×100リレーでは、第3走者の藤本俊之(東海大)とアンカー・朝原宣治の間で、インコースを走っていたアイボリーコーストのランナーの腕が藤本にあたり、体がぶれてしまいバトン渡しが遅れた。この影響もあり、優勝したアメリカからはちょうど1秒遅れの38秒96で5位となったが、世界選手権では史上最高位の好成績を収めた。

第1走者・松田 亮(広島経済大)「今日が一番いい走りだったと思う。もっともっと走れると思っていました」

第2走者・末續慎吾(東海大)「次は200メートルで19秒の走りを目指してがんばりたい。いいメンバーだったのでもう少し力を出したかった」

第3走者・藤本俊之(東海大)「手が相手とぶつかって胸にあたりました。悔しいです。これをバネにこれからがんばりたい。(後輩の)末續と二人で、できれば2年後に借りを返したいと思います」

アンカー・朝原宣治(大阪ガス)「決勝なので(オーバーゾーンも覚悟で)ギリギリまで待って飛び出した。戦えるメンバーでした。まだ力も少し残っているので、ヨーロッパGPでもう少しやって日本に帰ろうかと思う。(メダルを取ると口に出して)言わなくても今日はみんなメダルを狙っていたと思う」

※世界陸上エドモントン大会期間中、sportsnavi.comでコラムを連載します。ぜひ、そちらもご覧ください!

増島みどり「世界陸上スペシャル」



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