1月3日

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第77回箱根駅伝
復路
箱根芦ノ湖畔〜東京大手町
出場15校、5区間、109.2キロ

 2日の往路で37年ぶりの優勝を果たした中央大に8秒差と、2年ぶりの総合優勝に向けて絶好のポジションにつけた順天堂大は、復路最初の6区山下りの宮井将治で早くも中大をとらえてトップを奪取した。そのまま勢いに乗ってゴールをする計算が、8区、9区と思うように記録が伸びず、9区では入りの1キロを2分35秒と積極果敢な走りで飛び出した駒澤大・高橋正仁に7キロ過ぎで並ばれ、そのまま16キロもの激しいデッドヒートを展開した。残り1.5キロで最初でただ1度のスパートをかけた高橋に、順大・高橋謙介はついて行くことができず最終区を前にトップを譲った。

 今大会もっとも注目を浴びた、激しい紫紺対決(※両校のタスキの色から)となった最終10区は、3年連続でアンカーを任された順大・宮崎展仁がトップの駒大を落ち着いて捉え、タイミングを見て地力の違いでスパート。ここで駒大を引き離して、結局復路5時間30分57秒、通算11時間14分05秒と、駒大に3分近い差つけて、2年ぶり10度目の優勝を果たした。合わせて、今年の大学タイトルを、全日本インカレ(陸上競技大会)、駅伝3冠の出雲、伊勢、箱根と、4冠すべてを奪うグランドスラムを達成した。

 駒大は、復路の7、8、9区で区間賞を奪い、本来ならば大躍進を遂げられるところが、あと1枚の層の薄さに泣いて今年は2位となった。また、昨年シード落ちし今回は予選会からのスタートとなった法政大が、前日の3位に続いて復路でも7位と踏ん張り、総合4位と大躍進を果たした。

 来年のシード校(9位以内)争いは、山梨学院大と早稲田大が熾烈な戦いを展開したが、最後は山梨が30秒差で振り切って9位となった。また復路のスタートで、法大が前日の55秒差でスタートするべきところ、審判団がミスをしたためにさらに25秒遅れて出発するハプニングがあった。このため、法大は記録から25秒差し引いたタイムをゴール記録とすることとなった。

■史上初の4冠、駅伝なら90、91年の大東文化大以来の3冠となった順大・沢木啓祐監督
「戦う前には、今回区間賞は4つくらいは取れるだろうかと望みをかけていたがそうは行かなかった。今年の箱根を見ても力が拮抗しており、うちが出血(ブレーキ)を最小限に食い止めたことがあえていえば勝因ではないか。出雲、伊勢と駅伝を取ったところでほかの大学が誰もなしえなかったことに挑戦したいと思った。それが目標となったが、気持ちははやって結果的には肉体的にも追い詰めてしまった。今回は過去10回の優勝のうちでももっともメンバーがガタガタの中での優勝となった」

■紫紺対決も2位に終わった駒大・大八木コーチ
「復路も決して悪いわけではない。しかし、順大に比較すると、あと1枚が足りないということになる。9区の高橋は本当によく走ったと思うし、全体的にもあえてブレーキというなら区間ひとつくらいなものだろう。選手は、面白いレースをしなければと積極的に走ったと思うし、勝負をしていたことを評価したい。9区に渡すときには、相手が崩れない限り2分の差がなければ難しいと分かっていた。来年にむけて、とにかく下級生の底上げをはかってレベルアップをしたい」

■予選会からの出場ながら4位と快挙を果たした法大・成田監督
「出来過ぎです。毎日練習を見てたわけですが、監督さえここまでやれると計算してなかった。去年は29秒差での予選会となったので、あれ以来、練習でも常に29秒差を悔しいと言い続けてここまで来た。きょうの復路で25秒ロスしてしまったときには、あれえ、また29秒か、と嫌な予感がしましたが(笑)。選手は力以上のものを出し切ってよく走った。来年は、シード校としての走りを見せたい」


「たどりついた境地は」

 学生陸上界一強気で鳴る、しかも学生にとっては未だに「怖い」存在でもある沢木監督が、会見になってようやく「弱音」を吐いた。
「まあお話すると、これでよくも走れた、とあきれるようかもしれませんが……」
 過去の優勝の中でも最悪の状況だった、と今年のチームを見舞ったハプニングを苦笑しながら羅列した。
 10区間のうち、唯一の区間賞となった4区の野口英盛は、原因不明の下痢で入院していた。高橋謙介と宮崎展仁も同じ症状だったが、幸いに1週間ほどで回復していたが、2区の岩水嘉孝は肺気胸、宮井将治は坐骨神経痛、とまさに満身創痍が12月下旬まで続いていたという。
 野口はメンバーから外そうとまで考えた。しかし午前の練習であきらめ「24日のクリスマスには、もう(メンバーを組むこともできずに)終わったと私もフテ寝してましたからね」と、監督さえ完全にギブアップする中で、まずは困っていた5区山上りを、奥田真一郎が志願し、野口の調子が奇跡的に上向いた。
 こうした調整の失敗は本来、順大にはもっとも起き難いことだ。監督、ドクターが密着し綿密な検査を繰り返すからだ。しかし、その伝統をもってしても失敗しかけたのが、目の前に立ちはだかったあまりにも大きな壁だった。
「欲というか、こうなったら何が何でも、と思わなかったわけではない。それが色々な意味でのプレッシャーとなって心身に影響した可能性はある」
 9区で自身も快走とはいかなかった高橋はそう分析する。駅伝の3冠は、出雲、伊勢の全日本、そして箱根。しかし昨年9月のインカレを取ったことで、学生タイトル史上初の4冠の壁が目の前に現れることになった。
 モチベーションが高すぎて、しかもそれを達成しようとすれば練習で追い込もうとする。「全員が三代(OBで一昨年までのエース。現在は富士通所属)と同じ練習をしてしまった。筋肉の疲労は甘くなく、もっとも苦しい時期に一気に噴出したような感覚」と監督も明かす。
 チームドクターと相談して、休ませて、それから栄養の補給で何とか五分五分に立て直して臨んだ箱根だった。
 順大は、徹底した管理と練習、さらに戦略を強固な3本柱に、記念すべき21世紀最初の箱根駅伝で10勝目をもぎ取った。今回は守りに徹した中での勝利で、区間賞が1つに終わったことはそれを物語る。しかし、他校は「順大の層の厚さにやられた」と口びるを噛んでいた。
 区間賞1つで総合優勝を果たす──この構図の背景には、従来は「山(5、6区)を制するものは」とか「(花の)2区を制するものは」といった、10区間の部分的な戦略が箱根の勝敗を分けるのだとされた。
 しかし、そういう時代が20世紀で完全に終わりを告げたことを、この日の順大が示唆している。つまり、どの区間でもすべての個所でトップレベルのランナーを揃えなくてはならないのだ。スピードの平均化が進むであろう箱根の21世紀を占うには、十分なレースだったのではないか。
 それにしても10勝すべてを手にし、グランドスラムを手中にした沢木監督の言葉は印象的だった。
「野口のときもフテ寝から、これではいかんと思い直して午後の練習にかけた。この日の10区での逆転劇を見ても明らかだったが、結局200キロもの距離に勝とうとするならば、最後の最後まで諦めてはいけないということだ」
 百戦練磨の監督の口から、諦めてはならない、と実にシンプルな答えが出たこと自体、その苦しさを物語っている。同時に、「諦めない」とは単なるメンタルの話などではなく、駅伝の、ランニングの、そしてスポーツの奥深さと真実を語っているのかもしれない。

「スパートは最初で最後」

 学生スポーツの醍醐味を、駒大の高橋正仁は存分に味あわせてくれた。昨年アンカーを走り今年は主将となった3年生が9区でたすきをもらった時には、順大から27秒差。花の2区の裏版ともいわれる最難関区間だけに誰もが慎重にレースに入ると想像する状況だった。しかし高橋は、自分との勝負にかけた。
 入りの1キロを実に2分35秒。型破りのスピードと勇気で前をゆく高橋謙介(順大)を追い始めた時点で、勝負はあったのかもしれない。7キロ過ぎ、早くも追いついたときには、順大・高橋は「何か踏ん切りがつかずに走りに迷いがあった」と、レース後心境を明かした。あまりのペースに後半潰れると心配する声もあったが、正仁にすれば一刻も早くつかまえて、並走することでプレッシャーをかけたかったのだ。
 記録競技にも、こうした先制パンチが存在するのである。7キロから約15キロ、謙介が右に動けば、正仁は左。正仁にすれば、謙介の表情や息使いを感じてスパートのタイミングをうかがうには並ぶしかなかった。
「19キロで謙介さんの顔を見たら、汗が渇いていて苦しそうだった。そこでペースアップを考えた。でも中途半端なスパートはダメなので、この一回と思い勝負した。ぼくは無名ですから気楽に走れたんです。行けるところまで行けば、キャプテンのぼくが悔いさえ残さなければいいと思った」
 区間新記録はならなかったが、それでも、入りの1キロを2分半で飛び出し、緻密な計算なもとに無謀に見えるチャレンジに挑む。怪我で走れない時期も経験しただけに、23キロにかけた思いは、彼のスパートと同様に半端なものではなかった。
 高橋正仁のそうした姿勢は何よりも、2日間で200キロもの道のりをテレビで観戦したファン、沿道で応援したファン、すべての人々の気持ちを強く揺さぶったはずだ。

第77回箱根駅伝総合成績
順位 大学名 往路成績(順位) 復路成績(順位) 総合成績
1位 順天堂大学 05:43:08(2) 05:30:57(1) 11:14:05
2位 駒澤大学 05:45:24(4) 05:31:36(4) 11:17:00
3位 中央大学 05:43:00(1) 05:36:17(6) 11:19:17
4位 法政大学 05:43:55(3) 05:36:28(7) 11:20:23
5位 神奈川大学 05:54:58(12) 05:31:34(3) 11:26:32
6位 大東文化大学 05:56:43(13) 05:31:22(2) 11:28:05
7位 帝京大学 05:48:55(6) 05:39:39(12) 11:28:34
8位 日本大学 05:51:15(8) 05:38:02(10) 11:29:17
9位 山梨学院大学 05:49:51(7) 05:39:27(11) 11:29:18
10位 早稲田大学 05:53:45(11) 05:36:03(5) 11:29:48
11位 日本体育大学 05:53:25(9) 05:36:50(8) 11:30:15
12位 拓殖大学 05:53:38(10) 05:37:27(9) 11:31:05
13位 平成国際大学 05:48:15(5) 05:46:10(14) 11:34:25
14位 国学院大学 06:02:24(14) 05:43:31(13) 11:45:55
東海大学 記録なし

第77回箱根駅伝区間賞
区間 選手名 大学名 記録 備考
1区 野村佳史 中央大学 01:03:38
2区 カーニー 平成国際大学 01:07:43
3区 北島吉章 帝京大学 01:07:45
4区 野口英盛 順天堂大学 01:06:00
5区 杉山祐太 拓殖大学 01:13:49
6区 金子宣隆 大東文化大学 00:58:21 区間新
7区 揖斐祐治 駒澤大学 01:03:17
8区 武井拓麻 駒澤大学 01:04:48
9区 高橋正仁 駒澤大学 01:09:49
10区 真名子圭 大東文化大学 01:10:19 区間新


アクセンチュア ドリーム サッカー
日韓オールスターズ×世界オールスターズ
(横浜国際総合競技場)
天候:晴れ、気温:10.3度、湿度:20%
観衆:46,740人、19時1分キックオフ

日韓オールスターズ 世界オールスターズ
1 前半 1 前半 0 1
後半 0 後半 1
17分:コ・ジョンス プロシネツキ:72分

 2002年日韓W杯に向けて、両国で初めて結成された合同チームが、世界オールスターズと対戦。メンバーの大幅な入れ替えなどで混乱が予想された中で集まった約4万6000人のファンを前に、新時代の幕開けを告げた。
 前半17分、日韓選抜の高宗秀(コ・ジョンス、韓国、水原三星)が、パラグアイ代表GKチラベルト(ストラスブール)を相手にフリーキックに挑む。左脚ききの高がゴール左側を狙うと読んだチラベルトは、わざと自らの右サイドをガラリとあけて(高からは左)挑発。しかし、高はこのボールを見事にコントロールし、右サイドに一瞬動いたチラベルトの裏を書いて、まったくスペースのなかった右隅にシュート。チラベルトも裏をかかれて一歩も動けずにこれを見送った。
 組織的なプレーはまったく練習していないだけに、後半も1対1のプレーで互いに凌ぎを削り、後半28分には、クロアチア代表のプロシネツキ(スタンダード)がDFのクリアボールをカットし切り替えして右脚で25メートルの強烈なロングシュートを決めて同点とした。
 この日、新春のゲームを行なっていた三浦知良(神戸)も新幹線を乗り継いで後半10分から出場。ゴールはならなかったが、旧友プロシネツキら世界のトップ選手とのゲームを「厳しいけど楽しい」と評していた。
 ドイツ代表の元主将・マテウスは、この試合を最後に(国際大会としては)引退を表明している。

マテウス「お互いに万全ではない時期に行なった試合だが、ナイスゲームだった。しかしもっとも大事なことは日韓で合同チームが結成されたことだ。日本には2日ほど滞在できただけだったが、とてもエキサイティングだった」

三浦知良「日韓の合同チームといって、こうしてあっさりと何気なく終わってしまっているけれども、冷静に考えればもの凄いことだったんだと思う。互いに、いい面も弱点も分かっているし、言葉が通じない分インスタントになってしまうけれど、こういう試合はもっとやってもいい。プロシネツキのシュートは凄かったけれど、悔しいよね。もっと自分も1対1で個人技をやりたかったけど、なんかアルディレス監督が、パス、パスってベンチで叫んでいてねえ……(報道陣も爆笑)」

松田直樹(横浜)「ババンギダ(ナイジェリア、ゲンチレルビルリジ)が速いのが印象的だった以外はそれほど凄いと思わなかった。きょうの仕事はロングシュート1本だけでしたからねえ。今年もシュートは入らなさそうですね」

川淵三郎・Jリーグチェアマン「(メンバーの大幅な変更で払い戻しをしたため)お客さんは心配したけれども、逆に、新たにキップを購入したいという方も出てきてくださって急遽当日券を準備することになった。日韓の今までの歴史を思うと、きょうは壁がひとつ乗り越えられて21世紀のスタートにふさわしいものになった。日韓が負けたら面白くないし、ちょうど引き分けでよかった。Kリ−グからもクラブの社長がお見えになって交流できたことも大きい」

「やられて、なお気分爽快」


 こんなイベントは意味がないという声もある。強化とは何の関係もなく、時期から言っても無意味だ、とする意見もある。
 しかし、そもそもすべての試合が強化だけを目指すわけではなく、そんな国のスポーツは恐ろしい。「騙された」というファンもいるが、「払い戻す」チャンスは10日まである。
 逆に、こうしたいわば「華相撲」的サッカーもそう捨てたものではないと、選手たちは試合後、口々に話していた。なぜならば、勝敗に関係なく、サッカー選手として「個人対個人」の勝負に挑めるからだろう。
 この日、FWのパパンギダと対面した服部年宏(磐田)は、「めちゃくちゃ速かったね。ああやって前を向いて中に切り込んで来られると何もできないわ」と笑いながら、世界選抜とのゲームを振り返る。
 こうした試合では組織プレーの練習などまったくできず、個人の1対1の力試しだけになる。服部は、リーグとはまったく違い、相手に前を向かれては突進され、それをかろうじて止める、こうした動作の繰り返しが非常に厳しかったし、同時に楽しかったという。
 ババンギダは、ゴールを決めることはできなかったがチャンスメークのために切り込み、スペースをつくり、おとりになるなど、体調が悪い中にあって軽快な動きを見せていた。速さとは動きだけではなく、判断であり、切り替えだったと服部は話す。
「久々、こんだけやられて気分爽快、気持ちいいよ。プロシネツキのシュートなんてもう半笑いしちゃったけどね」
 相手DFについて、中山は言う。
「2番(トロッタ、アルゼンチン、リバープレート)なんて、Jリーグじゃ絶対にここまで詰めては来ないってところまで詰めてくる。体に一度でもそういう感覚を覚えるのは大事だから、それに来季に向けてすごくいいモチベーションになります」
 試合ではなく「ゲーム」だったが、それでも選手が体を使って過ごした90分が、「くだらない」とか「無駄」などということはない。

日韓オールスターズ   世界オールスターズ
1  キム・ビョンジ(蔚山現代)
3 秋田豊(鹿島)
12  松田直樹(横浜)
4 チョン・グァミン(安養LG)
6 服部年宏(磐田)
13 明神智和(柏)
14 コ・ジョンス(水原三星)
15 中田浩二(鹿島)
7 キム・ドフン(全北現代)
9 中山雅史(磐田)
10 チェ・ヨンス(安養LG)




1 ホセ・ルイス・チラベルト(ストラスブール)
5 ブレント・コルクマツ(ガラタサライ)
8 ローター・マテウス
12 カッカ・カラッツェ(ディナモ・キエフ)
6 アーロン・ビンター(アヤックス)
10 アリエル・オルテガ(リバープレート)
14 ブライアン・ロイ
17 エムレ・ベルゾグル(ガラタサライ)
18 ホルヘ・ボラーニョ(パルマ)
13 ティヤニ・ババンギダ(ゲンチレルビルリジ)
16 ネルソン・クエバス(リバープレート)

16 高桑大二朗(鹿島)
2 カン・チョル(富川SK)
5 イ・イムセン(富川SK)
8 パク・ナミョル(城南一和)
11 三浦知良(神戸)




19 トニー・メオラ(カンサスシティー・ウィザード)
2 ロベルト・トロッタ(リバープレート)
3 マルシオ・サントス(サントス)
7 ロベルト・プロシネツキ(スタンダード)

試合データ
日韓   世界
14 シュート 20
15 GK 14
3 CK 8
9 直接FK 14
5 間接FK 4
5 オフサイド 4
0 PK 0

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