11月25日

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女子マラソン山口衛里、岡山県記録会出場
5000メートル
(倉敷市・市民運動公園陸上競技場)

 シドニーオリンピック女子マラソンで7位に入賞した山口衛里(天満屋)が、来年のエドモントン世界陸上(カナダ)でのトラック出場を目指して始動した。すでに11月3日には、淡路女子駅伝で3区5.3キロを走ってチーム3位(区間3位)に貢献しているが、トラックレースは五輪後初めて。山口はスタートから、現時点の体調の中では積極的に走り、3000メートルを9分27秒で通過。残る2000メートルも3分10秒前後で刻み15分48秒22(1位)でまずまずの始動となった(自己記録は15分42)。
 トラックレースでは、五輪出発前の8月、同じ倉敷で15分47秒をマークしている。
「ちょうどあの時と同じくらいの記録です。練習も現在は5、6割程度ですし今回は12月の駅伝のためにも、きちんとしたレースをしたかった。良くはないですが、まあまあです」と話していた。
 山口は、マラソンのためにもまずはトラックのスピードに磨きかけたいとしており、世界選手権では10000メートル(32分07)の代表を狙っている。また今年は、12月10日の全日本女子駅伝(岐阜)、同23日の加古川ロードレース(5キロ)に出場する予定。
 女子マラソンの代表では市橋有里(住友VISA)が23日のハーフマラソン(名古屋)で五輪後初レースに出場。高橋尚子(積水化学)は、12月の実業団駅伝で復帰することになっている。


★Special Column★
〜2000 J1 最終節に向けて〜
「柏と手作り弁当」

 渡辺 毅は「オレたち地味ーズですから」と笑った。
 昨年、柏が年間通算成績で2位を獲得しそうな時期だった。
 雑誌「Number」で、躍進を遂げた柏のレポートを掲載することになり、編集者の藤森さんとともにクラブハウスで西野 朗監督、DFの渡辺、少しずつ少しずつ階段を上ろうとしていた途上中のFW北嶋秀朗に話を聞き、また数試合の取材から多くの選手の話を聞いた。
 カレカ、ストイチコフらがプレーしていたことは過去の話であり、ほかのクラブのようなブラジル色、ヨーロッパ色などの強い個性もない。
 そういうチームがなぜ年間通じて安定した力を発揮できたのかを知りたいと思った。
 今も心に残るのは、渡辺が柏のカラーを聞いた際、「地味ーズ」と笑ったこと、そしてチームで最北、青森県五戸出身のボランチ下平隆宏の話である。
 下平はこんなたとえでチームを表現してくれた。
「柏のサッカーですか? いわば弁当の味なんじゃないかと。それも手作り弁当。素朴で質素で、豪華じゃないけど、ほかのどこにも売っていない、まあなかなかのいい味だと思うんです」

 すでに8年目を迎えたJリーグにあって、名門といわれた柏のここまでの道のりは決して楽なものではなかった。J2からの昇格でも壁に何度か跳ね返された。
 しかし、下平の表現を借りるならば、手作り弁当の最大の特徴は何より「下ごしらえ」にあったはずだ。見た目の豪華さ華やかさとは別に、すべての「素材」にはそれぞれとていねいな下ごしらえ、つまり強化と育成がされ、素材そのものも、華やかではないが、力強い。素材の味を十分に引き出した、暖かな手作り弁当が柏のサッカーの持ち味を象徴している。あす26日、Jリーグは昨年決定した日程にも関わらず、最終戦で優勝が決定するという信じられないほど劇的なマッチメークによって、2000年の幕を閉じる。

 鹿島も若手を代表に送り込む苦しい事情の中で、困難とされた世代交代を成し遂げた。手作り弁当に対し、長い時間、高いレベルで作られて来た鹿島のサッカーは、まるで味も見た目も洗練された見事な懐石料理のようである。
 しかし楽しみなのは、ともにどのクラブよりも個性的な「味」を持って、トーナメント戦のように用意された舞台に立つことだ。両チームとも前日の仕上げは万全である。
 心配があるとすれば、個人的にひとつ挙げる。表現方法はともかく、サッカーの根本的な思想、存在意義において、現在、もっとも好きな柏ゴール裏の応援が、抗議の度によじ登るネットのない国立競技場で、あの溢れるエネルギーをどう爆発させるのかということだけだ。
 いい試合とは「2000年11月26日の試合を指すのだ」というゲームを。

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