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久しぶりのニューヨークシティマラソンの取材は、なかなか面白いものでした。 以後、これで4度目でしょうか。しかし当時も、そして非常に残念なことに今も、日本には大都市を制限なく走れるフルマラソンがありません。当時、賞金レースの取材をするたびに、その規模と、賞金などの組織力、何よりも1万、2万といった人たちがそれと同じほどの数にのぼるボランティアに支えられて街中を走るようなレースの存在が驚きでもあり、同時に羨ましくもありました。 ニューヨークも一時は財政難で大変な時期もありましたが、それでも税金と、その税金によって作られている道路、公園は「市民のものである」という考えが変わることはなかったようです。2万人というと、想像もつかないほどのランナーの数ですね。しかしニューヨークは毎年、トップアスリート、海外から参加するどんな国のランナーにも一日中、道路を提供してきました。「タックスペイヤー」と言いますね。税金を払う人々のために、すべての利益が還元されなくてはならないということです。大体、警察とのやり取りは非常に不毛なもので、東京マラソンのような男女のトップエリートと、しかも厳しい難関を越えられるこれもエリート市民ランナーとでも言いましょうか、彼らがたったの3時間半くらい道を使うことでも大変なのです。こうした会議の取材を何度もしてきましたが、必ず繰り返されるのは「道路は公共のものであって、一競技団体、私企業(スポンサーですね)に公共の利益を妨げるようなことはできないし、第一、警察の仕事はマラソンの警備ではない」となります。しかし「公共の利益」こそ、好きに道路を使うことなんです。ニューヨークにあって東京にないもの、それは「市民マラソン」しかもトップランナーとともに走れるフルマラソンです。一方では、日本には駅伝があって、今ごろ、東日本だ、九州一周だ、と全国たすきだらけではないでしょうか。やればできるはずなのです。 日本では福祉などさまざまな話はされますが、一方ではスポーツにおいて、税金を払う人々が十分に楽しめるものが、東京、大阪といった大都会に乏しいのではないでしょうか。 弾丸ツアーではありましたが、久々のニューヨークシティマラソンでスポーツの面白さをまた思いました。と同時に、何年もいい意味で変らない市民のスポーツと、悪い意味で変革されない市民のスポーツの差異をしみじみと感じました。大都市にフルマラソンを、と願わずにいられません。 それではニューヨークJFK空港で皆様の健康をお祈りして 増島みどり |