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しかし、前半は湘南のペースにはまり得点できず、後半は逆に浦和が完全に主導権を握りシュート8本を放ちながらも(湘南は1本)またもゴールを奪えず、試合は延長戦に入った。 ともに3人を交代して挑んだ延長後半、浦和はFKのチャンスを得る。ペナルティエリアやや右の位置で、主将の小野伸二が直接を狙うと読んだ平塚の壁を見て、小野はこれを左の阿部敏之に流す。壁も崩れてしまった隙間から阿部が左足でロングシュート。このボールが平塚のFW松原良香の腰に当たってゴールとなり、1−0で勝ち点2を手中にした。 浦和はこれで勝ち点を77としたものの、大分(勝ち点 75)が先に試合を消化しており、何としても90分以内に勝って勝ち点3を奪いたかっただけに悔いの残る結果となった。残りは2節となり、最終戦まで気の抜けない昇格戦線となった。 浦和・横山監督「大変苦しいゲームだった。予想はしていたが、相手が非常にがんばって良いサッカーをしていた。早めに点を取れなかったのが苦しんだ原因。勝ち点2となったのは残念だが、いま言っても取り返しのつくものでもないので次に向けてがんばりたい」 湘南・加藤監督「勝つチャンスはあったが、決めきれなかったのが最後に押し切られた原因。選手は持てる力をすべて出し切ってくれたし、自分自身もやれることはやった。ただ、サポーターに勝ち星をプレゼントできなかったことが残念だ。(浦和に4連敗となるが)弱いから勝てないのでしょう。自分の力も足りなかったし、選手の水準の差もあったと思う」 延長Vゴールの阿部「自分は(FKを)中に入れるだろうと思っていたが、(小野から)自分のところにボールが来たので驚いて、とにかく枠に入れようと思い切って打った。90分で勝たねばならない試合だったし、勝ったがふがいなさもあった。残るは泣いても笑っても2試合。サポーターには応援して欲しい」 19歳のGK西部「体力的に後半からは特に厳しくなった。声を出すのが自分の仕事なので、何とかそこだけは切らさないようにした。あとは気持ちの問題。自分も下手ですが、気持ちだけでは負けないと思ってピッチに立っている」
「壊れてしまったポンプのような」 試合を終えた選手は口々に「ここまで来たら、あとはもう気持ちの問題です」と繰り返してバスに乗り込んで行った。
本来ならばバックからの押し上げ、あるいは、前線が中盤で一度預け「間」を作ってから、というようないわば「ポンプ的な」仕事が入らなくてはならないところが、ポンプなしで水をくみ上げているため間延びした状態で、試合開始から延長でVゴールをもぎとるまで一度も修正されることはなかった。 「(問題点は)その指摘の通りで、中盤の幅があまりにも広がってしまって、パスが分断される。中途半端な長さのパスをすべてきょうはカットされたわけです。だからといって、僕ら前のほうが一度預けてプレーできるかといえばそれもできなかった。試合中の流れをもっと的確に判断して(チーム戦術だけではなくて)自分たちで判断していかなければならないとあらためて思った」 試合後、小野は通路での立ち話でそうコメントし、壊れたポンプ状態の水汲みをいかにすべきかを考えていた。前の選手の、一刻も早く点を取りたい、と、後ろの選手の後ろを取られるミスはされまい、とする両者の気持ちがシステムのある部分を狂わすことは多々ある。中盤が仕事をしていないのではなくて、仕事の内容が明確にならないままにみな走ってしまっているのではないか。 FWで起用されているグビツァも生かされていない。彼自身のプレーというよりも、「彼にあててボールを展開する」とする横山監督の意図が、まったく伝わっていない。クサビの役割というには、オフサイドを連続しているし、空中戦にといってもヘディングが1本。次節の大宮戦には、「まだ右足が蹴れる状態じゃない」と監督は話すがFWでこうした苦しい試合に大きな力を発揮するであろうベテラン・福田正博が復帰する見込みもあるという。 小野は、「今までも色々な試合を経験してきましたが、今回のように、そうですね、ワクワク感のない緊張というのは初めてです。同じなのは負けたら意味がないということですか。いい時ばかりじゃないし、何をやっても上手く行かないときはあります」と、落ち着いた笑顔を見せながら、残り2試合1週間の緊張に備えているようだった。 目的(=昇格)がはっきりし勝たねばならない時こそ、あえて丁寧に中盤で一手間かけなくてはいけないのではないか。いわば急がば回れ、である。「故障個所」は残念ながらいま完全な工事をしている時間がない。残り2試合でいかに応急処理しておくかが重要な課題となる。
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