19日に行われる東京国際女子マラソンの会見が行われ、シドニー五輪女子マラソンで銅メダルを獲得したチェプチュンバ(ケニア)、一万メートル金メダルのデラルツ・ツル(エチオピア)、日本ではアテネ五輪に向けて期待度No.1の土佐礼子(三井海上)ら国内外の招待選手19人を含む309人の出場が発表された。
シドニー五輪後、国内での最初のレースでもあり、チェプチュンバ、ツルら強豪に、2時間24分36秒の記録を持つ土佐、小松ゆかり(サニックス)ら日本の若手がどんなチャレンジを見せるのか、高橋尚子(積水化学)の金メダルから新しい流れに乗った、日本女子マラソンの未来を占う重要なレースとなりそうだ。
会見に出席した桜井孝次強化本部長は「昨年この大会で、山口さんが2時間22分台をマークして日本の選考レース、あるいは女子レースの高速化に火がついた。そういう意味でも、今回の日本勢の走りを楽しみにしたい」と、この1年の日本女子マラソン界の変貌ぶりを強調した。
高橋尚子(積水化学)のシドニーでの金メダルが1年というスパンでのゴールなら、山口衛里(天満屋)が、千葉真子(旭化成)とともに飛び出し、2時間22分12秒の日本歴代2位をマークした昨年のこのレースは「スタート」と呼べる勢いと衝撃、意味を持ったレースだった。
ペースメーカーもなく、男子との混合レースでもなく、なおかつ片道の「ワンウェイ・コース」でもない東京でマークされた記録によって、日本の選考会、大阪、名古屋すべてで2時間22分台がマークされる予想を大きく上回るような結果となった。今回、優勝争いが期待される土佐は、名古屋で高橋とともに走って、その時高橋から2分遅れで2位となっている。選考会が2時間22分で争われるようなことがなかった少し前ならば、とてつもない記録で、しかも選考会の記録の中では、山口、高橋、弘山晴美(資生堂)に続く4番目の記録だったが、扱いは極めて小さかった。
春のサーキットもこなしており「あの時、高橋さんの強さを思い知ったような気がしました。夏の間、あのタイムは決してフロックで出たのではないということを示したいと思ってました」と控え目に話していた。中国での高地トレーニングなどを積んで強くなっており、アテネに向けては、市橋有里(住友VISA、シドニー15位)とともに若手No.1と期待される逸材である。今回の走りは来年のエドモントン世界選手権を決める上でも重要である。
日本選手の6連覇もかかり、さまざまな点で女子マラソンの進化と真価が問われるはずだ。
昨年の東京では、山口のほか、鈴木博美(積水化学)、千葉らが五輪出場権獲得をかけ走った。鈴木は途中でマメを作ってしまいゴールするのが精一杯だった。
その後トレーニングを再開し、3日の東日本実業団駅伝で1年ぶりに走る。
シドニーで転倒してもなお7位で戻ってきた山口は、アキレス腱に痛みがあるが同じ3日の淡路駅伝に出場する。昨年の東京の直前に10,000メートルの内定を受けながら、それを断ってマラソンにかけた弘山晴美(資生堂)も東日本実業団に出場する。5日には有森裕子(リクルート)がロルーペ(ケニア)とニューヨークを走る。1日、取材で会った弘山は「本当に早い一年でした」とふと笑っていた。
長く厳しかった一年を終えた今、彼女たちがリタイアせずに走り続けていることだけが、「この一年」を静かに、熱く語っているのだろう。
実りある秋、実り多き「再起」であることを。
■エドモントン世界陸上マラソンの選考方法 日本陸連は昨年の五輪選考での混乱を反省材料とし、6月の理事会で来年の世界選手権(カナダ・エドモントン)のマラソン選考方法について明確なラインを設定した。
女子は、今回の東京から、来年の大阪、名古屋、の3レースで日本人1位になること、2時間26分を突破すること、の2点を条件に、これを満たした選手を3月の理事会を待たずに即決する方針を決定している(男子は12月の福岡、来年の東京、別大、びわ湖の4レース)。
世界選手権は団体戦でW杯を兼ねるため、最終的なエントリーは5人まで可能となる。