10月23日

※無断転載を一切禁じます


2000 LaSalle Bank Chicago Marathon
シカゴマラソン
22日午前7時半(日本時間22日午後9時半)スタート
天候::晴れ、気温:13度→15度、風:微風

 シドニー五輪の女子マラソンで補欠を務めた小幡佳代子(東京陸協)が今年1月30日の大阪国際女子マラソン以来となるマラソンに出場し、2時間31分59秒で5位となった。小幡は大阪で2時間25分14秒をマークし日本歴代5位に位置する。

男子 結果
順位 選 手 所属 タイム
1 Khalid Khannouchi アメリカ 2:07:00
2 Josephat Kiprono ケニア 2:07:28
3 Moses Tanui ケニア 2:07:46

17 森川貴生 NKK 2:17:15

女子 結果
順位 選 手 所属 タイム
1 Catherine Ndereba ケニア 2:21:33
2 Lornah Kiplagat ケニア 2:22:36
3 Irina Timofeyeva ロシア 2:29:13

5 小幡佳代子 東京陸協 2:31:59


日体大、シドニー五輪報告会
(東京都内ホテル)

 シドニー五輪柔道女子48キロ級で金メダルを獲得した田村亮子(トヨタ)が、現在も在学中の日体大(大学院)報告会に、女子競泳400m個人メドレーの田島寧子、レスリンググレコローマン76キロ級・永田克彦、ソフトボールのエースピッチャー、高山樹里ら3人の銀メダリストと出席した。
 田村はここまで帰国以来一日の休みもなく会合、報告会といった行事に参加し続けている。復帰戦は12月10日の福岡国際女子柔道となる。

「娘と携帯で……」

 願っても願っても手にすることのできなかった金メダルを胸に田村が帰国してから丸々1か月が経過した。
 この日もパーティ会場の片隅で会ったが、とても話すような状況ではない。田村はこちらの肩に後ろから手を置いて、「お久しぶりです。お世話に……」と何か言い出そうとしたが、関係者に「次のビデオ撮りですから」とあっという間に連れて行かれてしまった。彼女に限って、金メダルをもし獲得していなくても同じ状況であったことは予想できる。しかし、これまで2度の銀メダルとは明らかに「何か」が違う。常に付き添う、母・和代さんは「金メダルを獲った日以来、1日もゆっくり話していないんです。亮子もですね、かなり疲れているみたいで、それが心配です。こんなことになるなんて、金メダルって本当に凄いことですね。かえって大変になったんじゃないかって。一緒に動いているはずなのに、いつも携帯電話で話しているんです」とうれしさを噛み締めながらも、戸惑っていた。

 会場では、イベントのひとつで「田村亮子さんへの質問を受け付けます」とアナウンスがされていたが、和代さんは「私も手をあげて、今晩とあすはどこに行くの? って質問しちゃおうかしら」とふと笑った。「これが終われば母娘で温泉へ行く」、とシドニー五輪の期間中あれほど楽しみにしていただけに、ふとした笑いを気の毒に思った。
 ここまで帰国から出席したパーティー、イベント、すべて合計すると十数か所にもなるという。その間に取材が入り、休みは1日もなかったともいう。

 金メダルを彼女に獲って欲しいと思ったのは、それさえ獲れば、少しは楽になるのではないかと想像したからだった。
 福岡女子国際柔道で初優勝を遂げた14歳から続けてきた孤独な戦いと、連勝という物理的な数字のハードルの連続に、金メダルが句読点を打ち、少しは休息もできるのではないかと勝手に思ったからでもあった。3度の五輪に挑むこと、それがどんなに苦しい戦いなのか想像ができなかったからこそ、シドニーを前にした日々を取材しながら「休める」ことだけが救いのように思えた。

 しかし実際のところ、田村が夢だった金メダルを手にした9月16日から、またも新たな戦いがスタートしてしまったのかもしれない、と、この日の報告会場で動き回る田村を見ていてあらためて思った。
「本格的に稽古に入るのは11月からになりますね。金メダルを獲った以上、福岡で不様な戦いをすることなど絶対にできませんからね」
 田村はそう言った。

 充実感が忙しさを紛らわすエネルギーだというのなら金メダルのパワーもうなずける。しかし、田村の現在の日程、また高橋尚子(積水化学)と2人の金メダリストがこなす日程は、彼らの練習以上に厳しいものであるかのようだ。
 結局、金メダルを獲得しようが、国民の期待とやらに答えようが答えまいが、競技者としての生活は何ら変ることがない。休むことなどできないし、楽になることもなければ、気を抜くことなどなお更できないのだ。新たな、さらに高いハードルが目の前に現われるに違いないのだから。
 決して終わらない前進、これをもしスポーツと呼ぶのだとすれば、こんなに過酷で同時にいたずらな魔物もいないだろう。
 彼女はこれから、一体何を追うのであろう。

 帰り際、廊下を駆け抜けて行く田村に手を振った。田村は一瞬立ち止まって「ウッス」と両手を腰のあたりで広げ、畳の上での挨拶をおどけて笑った。次に会うのは、五輪以降の初戦となる12月の福岡、11連覇をかけた鬼気迫る戦いを見る日になるのだろうか。
「いつになったら休めるのか」
 後ろ姿にそう問いかけた。

BEFORE LATEST NEXT