5月20日


柔道48キロ級
田村亮子下見に到着

気温18度、快晴

 女子柔道のシドニー五輪代表、田村亮子(トヨタ自動車)が2度目となる下見のためにシドニー入りした。
 今回は、競技場(ダーリングハーバー)の下見と休養を兼ねており両親、後援会関係者、またスタッフら総勢8人でシドニーに到着。トヨタ自動車の現地法人や総領事館、また日本人会などへも挨拶に訪れることになっており、田村は「五輪とまったく同じようにシュミレーションをしたい」と話している。21日には、メルボルンに向かう。

「長嶋さんがロブスターを……」

 92年のバルセロナ五輪から「休養」という言葉とは無縁の生活を送ってきた田村が、家族、スタッフとともにシドニー入りをした。
 飛行機の到着は早朝7時半。機内ではほとんど寝ていないと青白い顔で苦笑しながらも、数十名を超えたテレビクルー、新聞記者たちからの過酷な取材注文にも嫌な顔ひとつせずに応じる。
 出発前に巨人軍長嶋茂雄監督から「シドニーに行くなら、必ずロブスターを食べてください。ちょっと大きいですけど、これは食べなきゃだめですよ」と教えられたエピソードも披露。
「過去2度の五輪ではわざわざ現地に下見に出かけるような気持ちにならなかった。今回こうやって出かけられたことは意気込みの表れでもありますし、気力が充実したからこそできると思う。今回も気持ちをリフレッシュしながら充実させることができればいい」
 何気ない言葉だが、バルセロナ、アトランタの前とはまったく違う状況で迎えるシドニー五輪に対する「構え」が見える。
 昨年の福岡で小指を骨折。追い打ちをかけるように反対の指の腱を痛め、そんな中でも選考をかけた体重別選手権に強行出場した。3度目の代表になったが休む間もなく熊本での強化合宿に参加した。
 これまでの田村なら焦りに翻弄されたかもしれない。
 しかし、この怪我との葛藤をあえて「吉」ととらえ、乗り切ることをひとつのトレーニングに変えた。練習と五輪への準備に集中することだけに終始するこの時期、下見というよりも息抜きにシドニーを訪れたことは、彼女にとって発想の転換を意味するはずだ。過去2度との五輪と違う点は、十分なキャリアがあることである。怪我はむしろ余裕を生む要因を与えた。
「今回の下見は五輪のリハーサルでもあります。実際に会場を見て、ここが自分に合うんだ、と思うこと、金メダルを絶対に取りたいんだと思うこと。その手応えを得たい」
 息抜きであり、酷使した指を休めるためにも稽古をする予定は今のところ具体的にはない。しかし「どこへ行っても私は柔道家ですから」と、姿勢を正した。
 この日午後には市内のクージービーチで時差、疲労を抜くため、浜辺でのランニングを行った。メルボルンに入り、23日に再びシドニーに戻る。

 18日からコースの下見を行っているもう一人の金メダル候補、高橋尚子(積水化学)はこの日早朝、前日までの前半のコース試走に続いて後半の試走をおこなった。

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