5月14日


J2
コンサドーレ札幌×サガン鳥栖
(札幌・厚別公園競技場)

札幌   鳥栖
2 - 0

 J2開幕以来、対戦相手も一巡して(10試合)開幕戦と同じ鳥栖との対戦となった札幌は、前半10分過ぎ、ここまで9得点とJ2のゴールリーダーでもあるFWエメルソンがシュートを決めるが、これがオフサイドと判定されノーゴール。29分にはエメルソン、MF野々村芳和のワンツーでゴール前に突破したところを、鳥栖のDF古川隆志がクリアしようとしたがこれがオウンゴールとなり幸運にも先制した。しかしほぼ「完璧に近い内容だった」と、攻守のバランスが取れている状態ながらも前半はそれ以外の得点ができないまま終了。
 後半は雨のせいで重い芝に疲労がたまったのか、攻撃陣の足が止まってしまった。逆に再三攻め込まれる場面があり、これをGK佐藤洋平がセーブするなど守備の力で逃げ切り、終了間際にはセンターライン付近で相手DFのこぼれ球を拾ったエメルソンがそのままドリブルで4人を抜いてゴール。2−0とし勝ち点を24に伸ばした。

岡田武史監督「前半はバランスが取れ、非常によく、(意志の徹底が)パーフェクトともいえるほどだったが、どうしても先制してからダメを押す1点が取りきれないところがある。きょうは洋平(佐藤、GK)に救われたし、彼を中心とした守備が粘ってくれたのが良かった。ビジュはホホ骨(4日の湘南戦、全治3週間の診断が出ていた)の陥没骨折で無理はさせらないと思ったし、私自身、陥没骨折の経験があるのでかなり(痛みが)ヒビくんじゃないかと聞いたら、全然ヒビかないということで、なんか回復力が違うみたいですね」

 この試合で今シーズン13点目、リーグ得点王を独走中のエメルソンに試合後5分間インタビュー

──最初のゴールはオフサイドになりました
エメルソン まあ仕方ない。あれ以外にももっと入れないといけない点もあった。まだまだ点を取れると思う。
──J2のチームと一巡してみての感想は
エメルソン とにかくコンサドーレというチームのためにいい働きをしたいということだけ考えている。岡田監督を中心に、絶対にJ1に上がるんだという強い気持ちでやるだけ。対戦チームには左右されない。
──(ロッカーから出て来るのが遅く)怪我ですか
エメルソン 実は最後のプレーでボールをトラップしたときに、あそこに当たってしまってねえ……。もう痛くて痛くて。でもゴールをとりあえず入れてこようと思って(周囲が爆笑)、治療は後にしたんだ。
──きょうは母の日です。何かメッセージは
エメルソン そう、きょうの1点を北海道のお母さんに、そして全国のお母さんに捧げます。どうもありがとう。

「あのフランスW杯の貯金は」

 試合数がまちまちだが、札幌はJ2を一巡して上位グループをしっかりと守った好位置につけている。怪我人も戻り、外国人選手との動きのコンビネーションも噛合えば苦しい夏場を乗り切る計算も立てられる。
 岡田監督は「きょうの前半みたいに、攻守のバランスが取れた形でできる時間帯もあるのだが、もう1点を取りきれない。きょうは神経が参ったし、もうちょっと楽にやらないと体が持たんね」と試合後笑っていたが、チームの上昇には手ごたえがあるのだろう。

 思えばちょうど2年前、岡田監督は日本代表を招集し、最後の国内合宿を御殿場で行いフランスに向かっていた。アジア予選中に加茂監督の解任、そして後任となり息つく間もなく予選突破、そして本戦へと進んだ。
 そんな中で岡田監督はことあるごとに「自分の意見」を協会にぶつけていた。日本協会の事務局に岡田監督が現れると空気が緊迫したものに変るとまで言われたほどで、代表の強化、協会の将来に対してもかなりの勇気を持って改革を提言していた。
 フランスでは勝ち点を上げられずに帰国した後は、代表監督のオファーを固辞して辞任。しかし自分の経験、課題、初のW杯と今後の強化ビジョンと選手の育成、こうしたものすべてに詳細なレポートを書き上げた上で協会を後にした。
 その中には、「強化には長いビジョンを持ってほしい。ナショナルチームの意向を統括し、日程や強化合宿の指定を行えるセクション、そしてできれば4年を1人の監督に任せるくらいの計画でやれればいいのでは」
 こういった全体的な提言から、「攻撃における1対1の課題」など試合個別のリポートにいたるものまで記された「岡田レポート」は今どう活かされているのか。

 あまりの不手際、煮え切らない内部調整のお粗末さ、そして対外的にも無意味な発表を繰り返した結果、協会はファンからもメディアからも、もしかすると選手たちからさえももはや「怒り」の対象としてではなく、「お笑い草」といわれるほど権力も信頼も失墜した状態である。
 2年前、監督の智恵と、選手の勇気というわずかな盾によって乗り越えようとしたはずのW杯初出場という最初の壁が存在したはずである。
「今の監督問題? 自分は何も言える立場じゃあないでしょう」
 岡田監督は試合後、静かにそう言うだけだった。しかし代表監督として言うべきこと、継承するためには言わなくてはならないことはすべて言ったはずなのだ。
 今回の騒動の中、協会の犯したもうひとつの、いや、もしかすると最も大きなミスは、98年の貯金を財産として増やすことも、もしかすると使うことすらもせずにみすみす捨ててしまったということなのだ。取り返しなどつかないほどのミスであることが、むなしい。

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