6月で本契約が終了する日本代表トルシエ監督の評価についてこの日午後、釜本・強化推進本部長ら(推進本部7人)が約1時間半の会議を行いそれぞれの委員の評価を明らかにした。この評価自体を、大仁・技術委員長が10日夜にまとめて11日午前、岡野俊一郎会長に提出、基本的には5月25日の理事会でトルシエ監督の今後の去就が決定することになるが、岡野会長の判断によっては理事会そのものが25日から繰り上げられる可能性もある。
評価レポートは、「イエス(契約延長)、ノー(6月での終了)ではない」と釜本氏は明言しており、このレポート評価を包括的な判断材料として理事会が議論をする、とされる。
日本代表はハッサン2世国王杯(6月4日から、モロッコ)、キリン杯と日程が組まれており、監督問題の紛糾が代表の強化に影響しないかどうかが懸念される。
釜本本部長の会見一問一答
──どんな話がされたのですか
釜本部長 レポート作成のためにそれぞれの強化委員の話を聞いて、それを大仁君が今晩徹夜でまとめてあすの朝11時に岡野会長に提出します。
──意見の統一はしたのですが
釜本 していない。意見統一はしないでレポートを提出するだけ。イエス、ノーは触れていません。今年になって私が言っているのは、トルシエ監督のこの1年と何か月かを、契約が切れる6月にはまとめますよ、という話で続投がどうだとか、そういう話を(レポートに)まとめると言ったことはない。レポートを見て決めるのはあくまでも理事会であって、レポートに続行とかそうでないかは書くことはない。
──2002年の監督は2年間やったほうがいいというお考えは
釜本 2002年の監督にこの時点で将来をやってもらいたいという気持ちは当然あるし、それは変らない。委員の意見が食い違うとかいう話は(イエス、ノーになるし)私個人の意見をここでいうことはしたくない。
──今後の日程ですが、かなり切迫したものになると思いますが。
釜本 各クラブのみなさんには当然選手を出していただくわけだからすみやかに対応しないといけない。(臨時理事会の決定はまだなので)5月25日の理事会で発表されることになるが、その時点で(指揮をとる)新監督(トルシエ監督続投の可能性も含めて)が決まり、同時にメンバーが発表されるだろうし、そうあるべきだと思う。モロッコ遠征になると選手はもうすぐに出発になるが、日程はきついがそれもこなしてもらいたい。
──理事会が早まる可能性は
釜本 それは岡野さんがあすレポートを見てから判断されるでしょう。
──いずれにしても、日程的には時間がないのではないでしょうか
釜本 ええ。急がないといけません。それは時間がないわけですからすぐにやるものです。
「あくまでも理事会が決定する」と、岡野会長をはじめ釜本推進本部長も繰り返し、事実、意志決定機関は理事会(全国9地域の代表らによる)で行われる。しかしそれよりも前に、事実上の山場がある。
11日、岡野会長は強化推進本部委員7人がそれぞれ意見を述べ、それをまとめたレポートを受け「三役会議」を招集する予定(場所時間全て未定)になっている。
三役会は旧幹部会で、会長、副会長、専務理事が出席して行われる、いわば「代理理事会」でもある重要な意志統一の場ともいえ、重要なのは強化本部会でも理事会でもなく、この両者をつなぐ三役会になる。
この席上でどういった話し合いがされるかにトルシエ監督の契約がかかっている。
監督の本契約は6月一杯で、この契約期間の中にすべての金銭、ボーナス、付帯する条件(住宅など)がすべて織り込まれている。これが6月で切れることから、釜本本部長をはじめとする強化の現場は「この契約期間中の成果をまとめてレポートした上で(その後のオリンピック、アジア選手権のオプションも)検討する」と一貫して主張してきた。
6月以降については「付帯条件」いわゆるオプション、とされてきた部分だ。五輪予選、アジア予選が突破されればトルシエ監督がその大会の指揮も取る、ということになっているが、もちろんアジア選手権の予選などは相手のレベルと比較しても突破は当然のこと。
仮にアジア選手権は突破したが、五輪はダメだった場合はどうするか。あるいはA代表のアジア選手権では内容が著しく悪かったが、五輪は本大会に進出した、となった場合、五輪だけを任せられるかなど、どう評価を下すかなど「不確定要素」があったからこそ、本契約を双方にとってもっとも都合の良かった6月で打ち切ることを選択したとされる。
「オプションは、内容を吟味しないことには、はい、そのまま自動続行しますよ、というわけには行かない性質もの」と関係者は話す。
こうした内容を含めて三役会で検討されることになるはずだが、良くも悪くも岡野会長のリーダーシップがどう発揮されるかに、監督の今後がかかる恰好になる。
会長は、トルシエ監督の契約について「オプションの契約通り、五輪も、アジア選手権も指揮を取ってもらうのが筋というものです」と2月のアジア選手権突破の際、個人的な見解、とした上で意見を述べている。
岡野会長のいわばリーダーシップが発揮されれば、五輪、アジア選手権までの続行が濃厚で、逆に強化推進本部の評価が大きく取り上げられるならば、監督とは6月一杯で契約を打ち切り、付帯条件に対する何らかの保証はした上で新監督を選出することになる。
強化の現場では、五輪やアジア選手権の後ではなくW杯まで丸2年の契約にこだわりを見せているからだ。
いずれにしても、意見の統一、あるいは不統一がされるとすれば三役会議での話であり、現時点では内部の意見調整すら明確な形で統一をされていない。公益法人(財団法人)である団体としてある意味で非常に「情けない」状態でもある。
少なくても、関係者は紛糾しているかのように見える状態を自ら招いてしまったという事態は自覚しなければならないはずだ。ハッサン国王杯、キリン杯と今年の代表の中では重要な日程が続く。この騒動でサポーターからは連日協会にトルシエに続行をという電話が集中しているという。
「一体どうなっているんだ」と真っ先に電話をかけたいのは代表選手のはずだが。