5月3日


Jリーグ ディビジョン1 1stステージ 第10節
川崎フロンターレ×ジュビロ磐田
(等々力陸上競技場)
キックオフ:14時3分、観衆:16,843人
天候:晴れ、気温:23.3度、湿度:49%

川崎F 磐田
1 前半 1 前半 1 5
後半 0 後半 4
06分:寺田周平 藤田俊哉:44分
藤田俊哉:49分
ラドチェンコ:64分
川口信男:81分
藤田俊哉:86分

 優勝戦線のサバイバルレースを生き残るために取りこぼしは許されない磐田は前半6分、川崎Fのコーナーキックからヘディングを許し、そのこぼれ球をDFの寺田周平に押し込まれ先制を許した。しかしこの後、磐田は守備の統率が取れていない中盤、特にMF塩川岳人のサイドを直線的に突破する試みで切り崩しにかかり、川崎FのDF陣を振り回した。

 磐田の縦の突破は有効的で川崎DFラインは振り回され、前半ロスタイムには磐田がPKを獲得。これを主将の藤田俊哉が入れて同点として折り返した。後半は一方的に磐田のペースとなり、開始直後の4分にもPKを藤田が決めて勝ち越し。19分には中盤からのミドルパスを藤田、奥、ラドチェンコとつないで3−1とし、試合を決めた。その後は36分に川口信男が右足で、また41分には藤田がまたもPKを決め、93年にJリーグが始まって以来初めてとなる1試合でPKだけのハットトリックという「珍記録」も打ち立てた。

 磐田はアジアクラブ選手権から帰国しケガ人が続出するなど体調管理が難しい中で、5得点という大量得点で連勝を果たし、勝ち点を20、得失点でもプラス10として優勝に向けて好位置をキープした。
 またこの試合は、川淵三郎チェアマンとトルシエ日本代表監督がそろってVIP席で試合を観戦した。

磐田・ハジェヴスキー監督「最初の失点は反省すべき点だが、全体的には非常によく動き、選手のアイディアも生かされた試合だった。日程は確かに私たちにとって厳しいものだが、悲観することはない。ケガ人、体調を崩した者が戻って来れば問題はない」

川崎・ゼッカ監督「先制点までは良かったと思うが、ロスタイムでPKを決められたのが痛かった。全体的に左のサイドを突かれてしまったことが大量失点の原因になった。塩川は、攻撃では非常にいいものを持っているが守備ではまだまだだ」

「これ、おいしいじゃん」

「PKによるハットトリックは初めてでしょうか?」
 藤田の3本目のPKで記者席から沸いた珍記録への質問にJリーグの記録員が回答するまで、試合後30分以上を使い公式記録を慎重に照会をしていた。1試合での得点ならばすでにランキングも作成されているが、内訳、しかも「PK」となると特別にマークしているものではなく、安易な回答はできないということであろう。これほど珍しい記録は藤田が樹立したというよりよりも、1試合で3本のPKを与えるようなファールを繰り返す川崎F側の記録として留めてもいいくらいかもしれない。

「初めてと言われてもねえ。なんか大喜びするような点でもありませんからね。第一、3本目を蹴るときなんて、新吉さん(菊池、川崎FのGK)は『おーい俊哉、どこ蹴るんだよ!』なんて聞くし、ボールを置いていたら森山さん(泰行、FW)が寄って来て、これ(PKで3点)っておいしいじゃん、とつぶやくんですよ。もう蹴りにくいったらありゃしない」

 試合後は報道陣と笑いながら3本のPKを振り返ったが、「おいしい」だけで3PKを決められるかといえばそうではない。
 1本目、川崎のGK菊池が動くことを見越して、右足からど真ん中に蹴り込んだ。2本目は、軸足を左方向に蹴るように見せて右へ。そして3本目は左隅を狙い、3本すべて違うコースと球種でPKを決めて見せた。
 今年は体調管理も例年にないほど上手くいき、2月から続く強行日程でも非常に高いレベルでのパーフォーマンスを維持している。秘訣は「しっかり休むこと」と言うが、昨年のアジア選手権の後の鹿島戦で延長ゴールした瞬間、疲労で動くこともできずにピッチに寝ていた姿とは180度違うのではないか。多くのチームが個人のパフォーマンスの伸びに悩み、ケガやコンディショニングに四苦八苦しているなか、強行日程を消化しながらもMFの1人がこれだけの躍進を遂げているのだから、磐田が今年もまた上位にいることは当然であろう。
 藤田はこれで今シーズンのチーム最多得点者となった。

「いろいろ大変だね、って何て言うのか?」

 試合開始から35分が過ぎた頃、トルシエ監督が通訳のダバディ氏とともに等々力競技場に到着した。コメントは一切しなかったものの表情は落ち着いており笑顔も浮かべるなど、リラックスしたようすだった。VIP席では先に到着していた川淵チェアマンと対面。チェアマンによれば「いろいろと大変だね、というのをフランス語でなんていうのかわからなかったんだけど通訳してもらったら、トルシエは、こんなことはサッカー界ではよくあること。何も気にしていない、と言っていた。彼も(家を出られないなどしているので)心配してたんだけど、元気そうだったから安心した」と会話を交わし、談笑しながら試合を観戦していたという。

 同じ場所には磐田の荒田社長もいたが、荒田社長も「チェアマンはトルシエ監督が来る前にも、(こんなにいろいろと報道が先行してしまって、情報をしっかりと管理できない自分たちが)みっともないよな、と話していた。なんと声をかけようか、私も難しいですねと話していたんだが、それでも実際はいい雰囲気でした。大勢いたんでゆっくり話せなかったでしょうが」

 去就問題では報道はどの競技であっても常に先行するが、今回はこの中で釜本邦茂副会長、幹部である森健兒専務理事、木之本興三強化推進副部長らが発言をし、さらにオファーされたと言われるアーセナルのベンゲル監督、英国の新聞などが入り混じって、「もうごちゃごちゃ」(協会関係者)とため息がもれるような状態が延々と続いている。サッカー界の関係者には、たとえ会長であっても記者からの質問には必ず立ち止まって答えるというオープンな気風がある。無論、場合によって会見と立ち話を使い分けているが、こうした日常会話の中では、「きょうは何もしゃべらないよ」と言いながらも、記者の術中に見事にはまって話してしまっているケースが多々ある。チェアマンはこの日、まだ何も発表されていないのに、決まったかのように既成事実が報道されてしまうことに、自戒を込めて「とにかく、協会がまとまっていない(一枚岩ではない)ような印象をみなさんに与えたり、混乱させてしまうことが一番良くない。会長が言うように、この件に直接関係しない者(会長と釜本氏以外)は話すべきではないし、混乱を招くことを自分たちでしてはならない」と、情報操作に対して改めて慎重な姿勢を見せていた。

 また、「決まっていないからこそ、みんなそれぞれの感想を話したわけで、それが(まだ検討しているという)証拠でもある」と、5月10日に釜本強化推進本部長から岡野俊一郎会長に提出されるトルシエ監督の「評価レポート」がまず優先されることを強調。その結果、25日の理事会が早まる可能性などについては「岡野会長がリーダーシップを取られると思う」とした。

 10日から25日までは時間的に2週間のブランクがあるため、理事会は緊急理事会となって早めに招集される可能性が高い。
 一方トルシエ監督は試合観戦後も無言だったが、協会関係者によればJリーグの視察は予定通り行うとしており、「サッカーではこんな報道は珍しいものではない。私は協会関係者と話をするのであって、メディアと話し合いをしているのではないから気にしてない」と、余裕を持って対応しているという。

「メンバーは落としてません」

 磐田の荒田社長は試合後、「チェアマンから、なんだきょうはずいぶんメンバーが違うなあ、と言われたので、これはメンバーを落としたんじゃなくてみなケガですから、とちゃんと説明しましたよ」と苦笑した。
 福岡のピッコリ監督が、メンバーを温存するためにナビスコカップをリーグとまったく違う若手で戦ったことで、福岡はJリーグからの注意を受けるとともに、「ベストメンバーで戦うこと」と記した規約に反した可能性もあるとして裁定委員会にかけられることになっている。磐田の場合はアジアクラブ選手権があったため、FWの中山雅史、高原直泰、DFの福西崇史らが故障しており、荒田社長は骨折した服部年宏がケガを押して出場しているなど現状を必死で説明したようだ。チェアマンは納得したとか。

「名波の行く先は……」

 セリエAヴェネツィアを退団する名波浩の来季の契約について、イタリアから1日に帰国した名波の個人代理人を務める八木氏が、この日、現状を荒田社長に報告した。荒田社長は「八木君からは報告を受けたが、現地の(契約交渉をする)代理人には、(名波は)どうするんだといった非公式な打診はあるようですね。でも、セリエAに上がってくるチームもあるので、それを含めて5月の末から6月上旬に具体化するはず。いずれにしても、日本には戻らないし、ヴェネツィアにも残らないことだけははっきりしている」とした。


他会場の試合結果
名古屋グランパスエイト 1-2 ヴィッセル神戸
鹿島アントラーズ 0-3 ヴェルディ川崎
ガンバ大阪 2-1 セレッソ大阪
京都パープルサンガ 3-4 アビスパ福岡
サンフレッチェ広島 2-0 横浜F・マリノス
清水エスパルス 2-1 FC東京
柏レイソル 2-1 ジェフユナイテッド市原

順位表
ゴールを決めた柏の北嶋秀朗(DFは山口智)
チーム 試合数 得失差 勝ち点
1 磐田 9 7 0 2 +10 20
2 清水 9 7 0 2 +6 19
3 横浜 10 6 0 4 +4 18
4 C大阪 10 6 0 4 +5 17
5 東京 10 6 0 4 +4 17
6 10 7 0 3 +1 17
7 V川崎 10 5 0 5 +1 14
8 鹿島 10 5 0 5 0 14
9 市原 10 4 1 5 -1 13
10 広島 9 4 1 4 +2 12
11 福岡 10 5 0 5 -4 12
12 G大阪 10 3 2 5 0 11
13 名古屋 10 4 0 6 -2 11
14 神戸 9 3 1 5 -0 10
15 川崎F 10 2 1 7 -10 7
16 京都 10 1 0 9 -16 3

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