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日本陸連はこの日、シドニーオリンピックの男女マラソンの代表選手を、理事会、評議会を経て決定した。 市橋有里のコメント「立派な先輩方が選ばれて、心強い限りです。一緒に練習させていただくことはないかもしれませんが、お互いに刺激し合い、励ましあってシドニーで会心の走りができたらいいな、と思います」 バルセロナ五輪銀、アトランタ五輪銅メダリストの有森裕子(リクルートAC、今回は大阪女子マラソンで五輪に挑戦)の話「選考方法や過程にはさまざまな意見があると思いますが、選考結果が出た以上、選ばれた選手が気持ちよく本番を迎えられるように見守っていくことが大切だと思います。代表選手は、自らが目標としたレースで全力を尽くし、納得できる結果を出した人たちです。私としても選考レースで結果を出し、代表に選ばれた選手みなさんに素直におめでとうを言いたい。オリンピックに出場できる誇りと喜びを大切にシドニーのスタートラインに立って欲しいと思います」 「一発選考レースを実施して欲しい」 日本陸連(東京渋谷区)ではこの日、午前中、強化と幹部の下案を作成するための打ち合わせが行われ、その案を理事会にかけて決定。資料配布のみを評議会に先駆けておこなった。選考理由については、まだ会見が行われていないが、JOC(日本オリンピック委員会)の八木会長が会見を行った。 会長は、12日の名古屋女子マラソンにも観戦に訪れており、「高橋さんの快走で、(女子マラソンチームに)筋金が入った。陸連も決定は大変だったと思うが、こういう結論になったのだから、あとは気持ちよく戦わせてあげたい」と総評を述べた。 そして選考方法について、「みなさんが一緒に出るレースをケアして欲しいとお願いした、最後は順位で決めるのではなく、記録になった。内定した人(市橋のこと)が27分で、ほか3人が22分というと、素人目にみても、町の中でスポーツを知っている人たちから見ても、なぜ(27分が)強いか、という常識的な質問も沸く。陸連主催で一発レースを作るようにお願いしたい」と、選考方法について提案をした。 会長はこれまで、女子マラソンを金メダル有力種目と位置づけ、「いっそ6人で行って現場で絞れば」などと仰天プランを発言するなどしていた。この日は「余計なことは言いたくないので」としながらも、選考方法に提案をした。「金メダルを取って、国民の皆様の期待にこたえたいと思うし、JOCとしてはスポンサー企業から具体的な援助、栄養とか環境面でのサポートを積極的にしていきたい」と、金メダル有力種目に全力を傾けることを約束した。なお、会長は、「男子については何も言うこともなく……」と話していた。
また代表選考から漏れた弘山晴美(資生堂)が夫の勉氏とともに、同場所で会見を行い、「オリンピックのスタートには立てなかったけれども、マラソンランナーとして次のレースは楽しみにしたい。これから目標を切り替えて10,000メートルで代表を狙い、代表になれればメダルを狙います」と、毅然とした表情とユーモアを交えながら話をした。 陸連ではまず原案を作る部会で3人の代表と補欠を決め、結果的にはこの原案が、理事会、評議会でも承認された格好となった。 女子選考ではまず12日の名古屋国際女子マラソンで優勝した高橋尚子(積水化学)が決定。残る一議席を、山口衛里(天満屋)と弘山が争う恰好となり、その結果、「弘山選手は大阪で(世界一と言われる)シモンと競り合って勝負をした。山口選手は難コースとされる東京で、あれだけの強さで優勝を果たした。どっちが上と見るか、十分に議論を重ねた結果、山口となった」と桜井・シドニー五輪強化特別委員長が説明。女子マラソン3人はそれぞれ五輪初出場となる。 男子の川嶋伸二(旭化成)も、「フィス(スペインのチャンピオン)と競り合ったことが非常に大きい」とした。男子の3人も初出場(川嶋はアトランタ補欠)。 山口は、陸連合宿を行っている延岡で(男子の川嶋も同じ)、高橋はこの日午後、名古屋から帰京した足で積水化学本社(港区)に赴いてそれぞれ会見を行った。 なお、補欠をいつまでおくか(誰かに故障などが出た場合の交替時期)は、今後検討することになった。 「原案を作った強化担当者会議、宗茂・シドニー強化特別委員会委員長の評価基準」 モスクワ五輪、ロサンゼルス五輪のマラソン代表でもあった宗氏が、この日の選考基準について解説をした。 弘山夫妻の会見から(抜粋) ──今の気持ちを聞かせてください 山口衛里の話(会見より抜粋)「東京でシドニーをつかんだと思ってきたが、正直辛い時期もありました。日の丸を背負うこと以上に、シドニーではいいレースをしたいし、今年の最大の目標にがんばりたいと思う」 高橋尚子の話(会見より抜粋)「昨日(名古屋国際女子マラソン)走るまでは、『オリンピック、オリンピック!』とずっと思い続けてきたのに、きょうになったら逆になんだかオリンピックという実感がわかなくなってしまった。今は、これでようやくもう1本マラソンを走れる、昨日のようにまた楽しいマラソンを走れるんだという気持ちで一杯です。きょう、起きたときから、気分もとてもよくて足も痛くなかったんです。だから監督と60分のジョギングをして、東京に戻ってきました」
※参考:女子代表3選手のプロフィール ●市橋有里(いちはしあり)/1977年11月22日、徳島県鳴門市出身。157cm、40kg。大麻中学で陸上を始め、卒業と同時に上京、陸連の長期プロジェクト「東京ランナーズ倶楽部」に所属し、浜田安則コーチに師事。97年の名古屋国際でマラソンデビュー。98年の東京国際では浅利純子とデッドヒートの末、2位。4度目の挑戦となった99年世界陸上で銀メダルを獲得し、史上最年少(21歳)メダリストとなった。昨年11月にシドニー五輪代表に内定。 ●高橋尚子(たかはしなおこ)/1972年5月6日、岐阜県岐阜市出身。163km、47kg。藍川東中から陸上を始め、県岐阜高から大阪学院大に進学。大学ではインカレで1500m2位が最高位。4年の秋、高卒しか採用しないリクルートの合宿に自費参加し、強引に内定をもらう。小出義雄総監督(現・積水化学監督)の指導で力をつけ、97年の大阪国際では2時間31分32秒で7位に入った。99年アジア大会(タイ・バンコク)では酷暑の中でのレースを制し、日本最高記録(2時間21分47秒)をマーク。歓迎会で「オバケのQ太郎」を熱唱したことから愛称は“Qちゃん”。 ●山口衛里(やまぐちえり)/1973年1月14日生まれ。名門西脇工業高からダイエーに入社。不況のあおりを受けて陸上部が廃部となり、95年4月より岡山に本社のある天満屋に所属。98年の北海道マラソンで2時間27分36秒のタイムで優勝し、一躍シドニー五輪の有力候補に名を連ねる。99年11月21日の東京国際女子では難しいとされるループコースを2時間22分12秒(=日本歴代2位)の好タイムで走り優勝している。 |