2月23日


デイリースポーツ社制定
「ホワイトベアスポーツ賞」表彰式
(日本プレスセンター内)

 20日の千葉国際クロスカントリーを当日になって欠場した市橋有里(住友VIS A)が表彰式に出席し、「とにかくあの日(20日)は寒かったです。足は特に問題はありません」と、元気な様子を見せた。剥離骨折など精密検査の可能性もあげられたが、病院などでの診察は受けなかったという。

 また、式の合間には、浜田安則コーチとともに立ち話での会見にも応じ、「3月15日からの中国・昆明合宿(1800メートルの準高地)に向けては、体に余裕を持たせていい練習ができるようにしたい」と意欲をのぞかせた。体に筋肉を増やすように、今はあえて「緊張をたるませる時期」(浜田氏)ととらえ、体重も40キロから2キロ増やして肉体改造に少しずつ取り組んでいるという。市橋は、高地に上がった際のヘモグロビン(鉄分)の増加が非常に効率的で、浜田氏は「世界陸上前のサンモリッツでの高地練習後は、13(女性の平均値は11から12程度)を越えていた」と、シドニー本番へも高地練習を取り入れていく方針を示し、6月からのマラソン練習で本格的にスタートを切る予定だ。

 浜田コーチは激化する女子マラソンの選考にも触れ「(東京、大阪の日本選手の活躍に比べてタイムの遅い)市橋でいいのだろうか、と皆さんに言っていただくことは、過大評価をされることよりもはるかにいい。だから、私たちとしては、それを励みにしています」と、落ち着いた様子を見せた。
 同賞は、昨年の活躍を評価された選手に対して贈られるもので、ほかに、柔道世界選手権金メダリストの篠原信一、陸上女子短距離の新井初佳、特別賞として京都産業大のボウリング部が表彰を受けた。

「あとは歴史が証明してくれるでしょう」

 20日のクロスカントリーの前日会見では、あまりの報道陣の多さに、多少驚いていた浜田コーチと市橋も、この日は表彰式ということで取材人数も少なかったせいか、選考についてのデリケートな質問にも答えた。
 市橋に内定が出た後の選考会、すなわちここまで東京と大阪で2時間22分台がマークされ(山口、弘山)、さらに日本最高記録を持つ高橋尚子が3月12日に名古屋国際を走ることから、もしここでも22分台がマークされれば、選考は大混乱となる、と見られている。22分が3人並んだ場合、世界歴代5、6位に相当する記録を出してでさえも、代表には選ばれない選手が1人出るからだ。

 こうした点から、市橋内定への様々な点での「風当たり」に変化が出てはいる。しかし、市橋もこの日「(銀メダルを取った)世界陸上の前にも、(サンモリッツでの)合宿から5キロ16分40秒くらいのペースは想定して練習はしていましたし、レースでも(浜田さんから)速ければ16分30を切るようなこともあるかもしれない、とは言われていましたから、スピード、スピードと言われても、それが自分にとって未知のものではありませんから」と、少しだけ「(体重を増やしたので)ぷっくりしてます」とホホを紅潮させて笑顔を見せた。

 浜田氏も、これまで多くは語らなかったが、この日は「専門的な見地から見れば、市橋の世界陸上でのラップは高く評価されてもいいと思っている。東京や大阪(の国内レースでは)、ある程度タイムの予測ができるが、選手権などではどうなるか全く想定が不可能。その中で、最大(5キロペース)18分近くから、(もっとも苦しいとされる)30キロ以降で16分45まで上がっている。こうした対応力という点で、決して、今の22分台の記録と比較して劣っているということはないのではないか」と、評価されるべきポイントを明確に示した。

 そして「選ばれたことに、皆さんが不安だ、あれでいいのか、と言われていることは、その逆よりもずっといいでしょう(過大評価されることよりも、の意味)。ですから2人でも、そのほうが逆に本番に向けてはいい励みになる、と捉えています。それに、結果については、おそらく歴史が証明してくれるはずですから」と話し、本番への準備に自信をのぞかせた。

 一方、今回の選考についての問題点は、「市橋が代表に内定したこと」ではなく、「内定の方法論」にある。91年の東京世界陸上では、事前に「成績が優勝な者には、翌年のバルセロナ五輪代表に内定をする」といった「決議」がされた上で、同年11月に谷口浩美(東京金メダル)、山下佐知子(東京銀メダル)が代表に「決定」したのに対して、今回は、「世界陸上のグレードとレース内容を見た上で判断するという、いわば「内々の暗黙の了解」的な内定となった点に違いがあり、強化担当の現場からは今後も追及を受けることになるだろう。

 アトランタ五輪の選考では、選考会での記録がもっとも良かった鈴木博美が大阪で2位になったという理由で落選。有森裕子が銅メダルを獲得した反面、真木和、浅利純子は惨敗している。単に記録ではなく、総合的に評価をすることが本番の結果につながるというのなら、五輪前のレースのみを選考対象とする選考会そのものの方式を、根本的に見直さなくてはならない。

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