1月10日


バスケットボール全日本選手権
男子決勝
(午後2時、代々木第2体育館)

三菱電機 61 36−39 71 東芝
25−32

 17年ぶり2度目の決勝進出を果たした東芝は、19年連続出場、今大会第一シードでもある三菱電機に対して序盤から守りを主体に主導権を握った。前半終了間際には、一度は三菱に2点を入れられ36対36と同点にされた。しかし、最後のボールを節政貴弘がハーフライン上からシュート。残り時間なしで放った最後の3ポイントで39対36と、後半への弾みをつけた格好となった。後半には、前半では最大8点だった得点差を少しずつ広げ(後半は32対25)71対61で逃げ切った。
 東芝は全日本初制覇。リーグ戦では2年連続2位となっているだけに、こちらでも優勝を狙う。

東芝・吉田健司監督「ここまで来られたのは、いろいろな人たちのお陰です。きょうのゲームは、昨年12月11日のリーグ戦で負けた試合のリベンジをすると、みんなで誓っていた。試合を通して、1対1(で孤立を)させたことが良かった。17年前の決勝では自分はまだ新人、それで試合に5分出してもらっただけで舞い上がってしまった。その時から考えても、今回はまったく違う感情です」

三菱電機・村田健一監督「東芝さんは非常によく訓練されたチームで厳しい試合になった。最終的には、うちのチームオフェンスが機能しなくなってしまったことにすべての敗因がある」

「貯金合戦の行方」

 バスケットボールは、いわば貯金合戦のようなスポーツだ。1点、2点、3点を細かく貯めて最後に大きな貯金箱と引き換えにする、そんな感覚に似ている。
 例えば最後のフリースローを落としたところで、そこに至るまでの「水漏れ」が本当の原因であり、最後の1本ゆえに負けるわけではないのだ。
 だから、取れる時に存分に取っておかなくてはならないし、いらない点は絶対に与えてはいけない。これがバスケットボールの、トップレベルで戦うバスケットボールの唯一絶対の鉄則である。
 この試合で、鉄則を守り通したのは東芝だった。試合のハイライトは後半ではなく、前半突然やって来ることになった。終了間際、節政貴弘にボールが渡り、節政はこれを迷わずセンターラインから14メートルものシュートを放つ。
 この直前のプレーで、三菱は時間一杯を使ってクラインシュミットの2点で同点とした。本来ならばこれでしてやったり、東芝にしてみれば前半最大8点の差も無駄に終わるところだ。しかし、節政は「前半の終わりだから」などと試合を見切らなかった。1点の貯金にこだわったプレーの結果だろう。
「練習でも必ず、ハーフラインからのシュートを練習してます。何人かでつなげて、残り時間なし、という設定でやっていましたから、プレー自体は特別なものではありませんでした。でもまさか入るとか……」
 試合後、本人が一番驚いていたようだ。興奮しても、「騒ぎはロッカーまでだった」と、まぐれではなくてもぎ取った3点に、チームは極めて冷静だったという。たかが3点差、されど3点。
 同点、と思ってまさにコートをひきあげようとしていた三菱のガード沖田は、「ボールを見送った時、まさか入るとは思いませんでした」と、不思議にも前半「終了」時点で相手に受けた、「先制」パンチを試合後悔やんでいた。
 節政の冷静さは、後半にも東芝を救った。終了前3分を切ってからのフリースロー64点から67点4本をすべて決めた。これで勝利を完全なものにした。前半に見せた3ポイントシュート、後半に見せたフリースロー1本ずつの4点。節政のプレーは、バスケットボールの面白さと怖さ、その両方を十分に示す7点だったといえる。そして、この日「1点」の重みを最後まで徹底した東芝は、初優勝にふさわしい戦い方をしたのではないか。
 吉田監督はリベンジといったが、本当のリベンジは2年連続の2位で終わっているリーグで優勝を果たしたとき、過去の自分たちを克服した時に終わるはずだ。

「世界観の欠如」

 すでに男女とも五輪出場を果たせなかったバスケットボールの、日本の最高峰の戦いには、決定的に足りないものがある。
 この日は、三菱電機と東芝と電機メーカー同士の対戦となった。会場は、東芝と三菱の「社員」が詰め掛け、応援も両社のカラーを打ち出したものだった。
 それ自体何も悪くはないが、一方では代々木体育館の中に、どうすることもできない閉塞感も漂っていた。企業スポーツからいい意味で脱却しなければ、その先の国際舞台など見えてこないのではないか。企業という防波堤に守られた内海を向いていては、外海に真の関心を持つこともできないはずだ。
 現在、プロ選手は長谷川(ゼクセル)と南山(いすゞ)の2人のみ、あとはすべて社員プレーヤーである。
 目指すべき方向がプロ化なのか、それともリーグ改革なのかは分からないが、いずれにしてもギリシャ五輪に向けてのスタートはすでに切られていなくてはならないし、協会の明確なプランも立てておくべきだ。
 面白いのは優勝した東芝の選手がリーグのプログラムに書いた将来の夢。ほとんどの選手が「幸せな家庭生活を築く」である。家庭生活を壊せなどというつもりは毛頭ないし、別の点ですばらしい話だ。
 しかし一方で、東芝の選手だけではなく、リーグや選手権の競技プログラムの問いに「幸せな家庭生活」と書くような思想自体が、日本のバスケットボール界全体を象徴しているような気がしてならない。
 歴史に新しいページを記した初優勝が、どうかそれだけで完結せず、ギリシャにつながるように、日本のバスケットボールの将来が映される優勝であって欲しい。

2000東京ハーフマラソン

 東京お台場では、2000東京ハーフマラソンが行われ、男子では富士通の高橋健一が、これまでの日本最高を12秒更新する1時間0分30秒の日本最高記録をマークして優勝を果たした。女子では南アフリカのエレナ・マイヤーが、1時間7分33秒で優勝した。
 女子の日本選手最高位は、東京ランナーズ倶楽部の市川良子(JAL)の5位で1時間9分4秒。また大阪女子マラソン(30日)に出場予定の、ディフェンディングチャンピオン、リディア・シモン(ルーマニア)は調整の一環として出場し、1時間8分34秒で4位と、順調な仕上がりぶりを見せた。シモンは大阪まで日本で練習を続ける。

BEFORE LATEST NEXT