クワガタムシは愛好者が確かに多いのは事実である。
しかし、クワガタムシそのものは日本に生息する甲虫約10000種・亜種の1%にも満たないマイノリティである。
クワガタムシの図鑑や写真を載せた書物は書店にあふれているし、いまや日本産のクワガタムシの同定に困ることはほとんどないだろう。
その反面、それ以外の虫の場合には、その虫がなんという名前で呼ぶのが適当な虫かすぐには分からない場合が多い。
しかし、目の前の虫がなんという学名で呼ぶのが適当な虫かということは考えることができる。
同定とは、その標本の特徴を抽出し、これまで知られている名義タクソンに一致するかどうかを検討すること
をいう。
やはり、採集した以上はきちんと標本として残して、正確なラベルをつけておいておくのがよいだろう。
世の中にはなんでこんなちっこくて汚い虫を集めているのか?という人もいるのである。
個人が採集できる標本の数には限りがあるので、 あるグループのまとまった標本(しかも、あまり昆虫採集者がいない地方の)は貴重である。
そういう物好きには喜ばれるに違いない。
もし、採集をするうちに興味のある虫がでてきたら、自分でそのグループを集めて並べてみるといい。
これまで同じ虫と思っていた虫が、だんだん別の虫に見えてくる。
逆に、これまで違うと思っていた虫がある一定の法則のもとに一つのグループにまとまるような気がしてくる。
一個体だけを見ていたのでは決して分からなかった違いが、あるいはそのタクソンが持つ個体変異の幅が見えてくるのである。
このような同定には最低でもルーペが、そしてできればビノキュラ(実体顕微鏡)が必要になってくる。
とはいってもビノキュラは安いものではないし、一般に手に入りにくかったりするだろう。
しかし、最近はデジカメ付きの簡易実体顕微鏡も安く販売されるようになったので十分一般の人でも利用できると思う。
実際に学名を当てはめるためには、何らかの形で資料を集める必要がでてくる。
まずはじめは、図鑑であったり、博物館パンフレットのようなものだったりするだろう。
しかし、図鑑などは紙の枚数に制限があって、特徴の記述は短く、不鮮明な写真が1枚きりなどという場合も多い。
もしかすると、個人で良く調べている人は、ホームページで多数の写真や、類似種の分別点を公開しているかもしれないので探してみるのも一つの方法だろう。
このような人たちは、分類学者でなくても分類学者並によくわかっていることがあるので、いろいろ教えてもらうと大変参考になる。
いずれにせよ、資料としては子供向けのハンドブックではとうてい物足りない。
そして、保育社の原色甲虫図鑑I〜IVでも物足りなくなってくる。
終いには原記載論文を集めはじめるのである。
同定は、高級なパズルを解いている感覚に似ている
と私は思うのである。 |