学名のススメ(1)-4

ふじもり@えりー


ちょっと一息

なにやらややこしいことを言われて頭がパニックになる前に一息入れることにしよう。
ここまで出てきた種の学名というものを実際の虫の名前でおさらいしておこう。

<例1>属名+種小名 (和名:ヒメオオクワガタ)

Dorcus montivagus

<例2>属名+種小名+亜種小名 (和名:ヒラタクワガタ日本本土亜種)

Dorcus titanus pilifer

<例2>属名+亜属名+種小名+亜種小名 (和名:オオバヤシヒメハナカミキリ)

Pidonia (Pidonia) limbaticollis ohbayashii

例3は耳慣れない虫かもしれないが、2003年の月刊むし7月号(カミキリ特集号)のトップ記事であるヒメハナカミキリの仲間である。
通俗名はオオバヤシヒメハナカミキリと呼ばれる虫である。
ヒメハナカミキリは日本で多様に分化している種であり、小型でとくに美麗というわけでもないのでカミキリ屋の間ですら人気は薄いのであるが、種分化の研究材料としてよく調べられている虫である。
そして、とにかく似たような種がたくさんあって分かりにくい悩ましい種でもある。
とにかく、この種の学名の意味は、Pidonia属、Pidonia亜属に属する、limbaticollis種の中部山岳帯に産する亜種ohbayashiiということになる。
北関東日光周辺には基亜種であるニッコウヒメハナPidonia (Pidonia) limbaticollis limbaticollisが、四国には亜種ブロイニングヒメハナカミキリPidonia (Pidonia) limbaticollis stephaniが生息している。
それぞれの階級に属する学名はスペース1字でもって結合されていることがわかるだろう。
亜属名がある場合には種の学名は正式には亜属名も含めて記述するべきであるが、長ったらしくなるし、属名と種小名だけで1種類の虫に固定されるはずなので表記上亜属名は省略されることがある。
また、何度も引用するときは、

最初の一回だけは省略せずにきちんと書いて、2回目以降は属名、亜属名は頭文字だけに省略してよい

ということになっている。 すなわち

P. (P.) limbaticollis ohbayashii

と書いてもよいとされている。
ただし、同じ著作中に属名の頭文字が同じで、種小名も同じ別の種類の虫のことについて述べている場合は、混乱を防ぐためにも省略せずに書くべきであろう。
また、省略するときは学名の省略であることを明瞭にするためにピリオド " . "を間をおかずに書くべきである。

 



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