『日常』を置去りにして


 係員に連れられて迎えのバスに乗り込むと、大阪空港で出会った見覚えのある顔が「こいつ何してんねん」と冷たい視線を投げ付ける。「すみません」だって・・・。
 バスはニューワールドホテル目指してビルの立ち並ぶ街中を走る。お世辞にも綺麗とは言えない雑居ビル。どの窓からも洗濯物がいっぱいぶら下がっている。二階建のバスが大きく傾きながら街角を走り抜ける。見るもの全てが珍しい。バスの中では係員が今後の日程について少したどたどしい日本語で説明している。ホテルのチェックインに備えて、パスポートと航空券を集める。明日の午前中はオプショナルツアーに参加するように申し込む。市内観光に飲茶の昼食付き。まずは様子を伺ってみよう、一人ぼっちも不安だから。
 10分ちょっとでホテルに着いた。濃いエンジ色のニューワールドホテル、今まで見たこともないスケールで僕の目の前に立ち塞がっている。トランクはホテルのボーイさん達に任して、手荷物だけ持って玄関へ。一階はいろんなお店へとつながる通路みたいになってて、長いエスカレーターで二階のフロントへ。係員がまとめてチェックインの手続きを済ませてくれる。僕に渡されたルームキーは1119。11階の19号室。またまたいろんな説明を受ける。帰りの航空券は係員が預かることになっているみたい。この人に再び会わなければ日本に帰れない。最後に係員の名前と会社の電話番号を教えてもらって別れる。係員はソオンキョとパウゴントという二つの名前を持っていた。耳で聞いても分からないので手帳にサインしてもらうが難しい漢字でさっぱり読めない。
 さあ、これから部屋に入って荷物を受け取って。おっとその前に両替を。日本と違ってここ香港にもチップの習慣がある。20HK$紙幣をフロントでコインに。「Excuse me.Please change small」続いて何処で迷子になっても、このホテルに帰れるようにとホテルカードを貰う。「Please give me a Hotel card」よしよしこの調子!
 各駅停車のエレベーターに乗って11階へ。ありました僕がこれから三晩お世話になる19号室。鍵を開けて入ってみるとなんとシングルルーム。ツインに一人で泊まってもシングル料金でOKと聞いていたが幸いシングルが取れたようである。一応、部屋の機能を点検して、一息いれているとコンコンとノックの音。1$コインを二つ握ってドアを開けると、ポーターさんが僕のトランクを持って立っていた。トランクをベッドの傍に置いてもらって「Thank you」と言ってチップの2$を手渡す。ポーターさんはニコッとこそしなかったが別に文句も言わず出て行った。初めてのチップもこれで大成功!この辺りでやっと自信とマイペースを取り戻してきた。トランクの中身を確認して、まだ陽が高いので散歩、いや探検に行く準備をする。


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