「不文集」
係員に指示された時間が近づいたので、出発ゲートをくぐって出国手続きを。まずは出国カードをパスポートにホッチキスで止めて写真と顔をにらめっこ。(どっちが男前?)スタンプをポンッと押してもらって無事通過。続いて手荷物検査。人間と荷物は別々にX線検査を受けて、次のカウンターでデイパの中身をほじくり出して念入り。OK、さぁ向うへと振る係官の手に、なんだか香港を追い出される思いがして少し未練が残った。
搭乗までの時間を免税店で過ごす。香港でお世話になった「KENT」を1カートン。1500円出して120円と$0. 30のお釣り。香港の雑誌を買おうと思ったが、英語で書かれた南華社出版の日本ガイドを2000円で購入。遠く離れても、思うはやはり日本のこと。何も知らない日本について、視点を変えて再学習するのもいいのでは。
面白い本を一冊見つけた。その名も「不文集」中を覗くと、びっしり漢文が詰まっている。これはきっと、香港のれっきとしたエロ文学なのだろうが、帰り点さえ打って無い純然たる漢文を、貧しい僕のおつむで解読することは不可能。だけど、漢文だからこそユーモアに溢れ「美人小便」「恥毛長短」等の文字に「大股びらき」の雑誌が氾濫する日本では堪能出来ないエロスを僕に語りかけてくれる。チラリズムと同様、そんな文学のカケラに僕は欲情を注られてしまう。こんな少々低俗なことでも、想像を巡らせて大脳を刺激してやれば、僕のピーマン頭も少しはましになるのではと惜しみなく1080円払う。
搭乗を間近に控え、ゲートの側で親子連れと一緒に待つ。旦那は雲隠れして、一人で幼児二人の世話をする奥さんは大変。泣きわめく赤ん坊のよだれをタオルで拭いてやっている僕を案内嬢はパパと勘違いして「どうぞ列の前の方に」と英語で話しかける。「僕そんなに老けて見えますか、お姉さん?」
退屈した僕は窓の外を指指しながら「Which plane will we get on, Jumbo or TriStar?」と案内嬢に聞いてみる。窓の外にはグリーンのジャンボが止まっているので、すぐ「Jumbo」という答えが帰ってくるだろうと思いきや「Pardon」と首を傾げる。もう一度繰り返して言うと、暫くしてから窓の外の飛行機を指さしながら「Boeing」グギッときた!「Jumbo」という単語は通じなかったのである。
キャッホー!なにはともあれ、ジャンボに乗る機会に恵まれたのだ。
やっと搭乗が開始され、広々としたジャンボに乗り込んだ。流石にエコノミー・クラス、壁に向かい合った最前列に僕の46Gシートはあった。
3時5分発キャセイ・パシフィックCX502便は香港啓徳空港を飛び立った。僕は小さな窓から、ハプニングに始終した旅を振り返り「あぁ来て良かった!」と心の中でつぶやきながら、小さくなっていく高層ビル群を見送った。
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