MESSAGE
この後の日程は免税店でショッピングをして空港に行き、食事をして3時のフライト時間を待つらしい。バスは雨に煙る香港の街中をぐるぐると回り回ってBank of Americaの対面のDuty free shopに横付けされた。免税カードを貰って店に入る。1時の集合まで自由時間らしい。店内には「さぁこれが香港の土産ですよ」と言わんばかりに「香港」「HongKong」とプリントされた商品が所狭しと並べてある。僕は店内をぐるっと一周して回った。けっしてショッピングを楽しんだのではなく、トイレを捜していた。何処にでもあるチョコレートを二つ買って、僕は店を出た。
僕の足は霧雨の中、Lucのホテルへと向かっていた。昨晩の別れに心残りがあった。せめてもう一度彼等に会って「さよなら」が言いたかった。コンコン。730号室のドアをノックしてみるが、何の応答も無い。留守なのだろうか。いや、踊り疲れ飲み疲れてぐっすり眠っているに違いない。せっかくのところを無理やり起こしてやるのも可愛そう。「Thank you」とドアに向かって呟いて、その場を去った。フロントに降りて置き手紙をすることを思いついた。カウンターに置いてあるメモ用紙に「Dear Luc and John. Thank you very very much. I have a special time with you. Have a good trip!」それだけしか言葉を思いつかなかったけれど、僕のすべてだった。「Please give this message to Luc Tuyau. Room number 730」と言って託づけた。なんだか良く通じなかったようだけど「OK」と言って受け取って貰えた。少しだけ心が軽くなったような気がした。
旅立つ時にお世話になった人や友達に土産を買わなくちゃと気だけは焦っても、何を買っていいのか思い当たらない。ゆっくり考えるのもいいだろうとマクドナルドに入ってシェイクを注文。流石に日本とまったく同じシステムに安心してズーズー!$5也。
一息入れた後、どうせ土産買うなら免税店より一般の店の方がいいだろうと、キョロキョロ歩き回る。小さな絹製品を売っている店を見つけて入ってみる。綺麗なテーブルクロスやネクタイ・スカーフが天井まで届く高い棚に山と積んである。男性用にネクタイ、女性用にスカーフをと、これにしようかあれにしようかと迷う。店のお兄さんは日本語が達者のようで、僕がたどたどしい英語で尋ねると流暢な日本語で説明してくれる。そんな時どっと疲れが出てしまう。何故かに日本人であるということを表面に出したくなかった僕は国籍不明のエトランゼでいたかった。とは言っても、英語では微妙な表現が出来ず、そんな時には日本語も混ぜて話した。いったい僕は何者だ?どんなに背伸びしても、たかが知れている。僕の微かな“抵抗”であり“突っ張り”だった。
結局、メクタイ5本、スカーフ5枚、花瓶敷3セット、チャイナドレス1着を電卓の値引き合戦の末、$290+4千円で買う。日本語も通じるし、日本円も通用することは確かに心強かったけど、その反面なんだか少し怖かった。その辺に日本と香港の経済的、人的関係の結び着きを解く鍵が隠されているような気がする。日本にとって香港は何であり、日本は香港にとって何なのであろうか?僕のような一過性の旅人には、その辺のところは良く分からないけど、深い関係があることは確かであろう、僕がこうして香港にいるということは。
みんな大きな土産袋を抱えて再びバスに乗り込み、啓徳空港へと向かった。
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