巴士(ぱー・しい)に揺られて
僕は、昨日行けなかったヴィクトリアピークへピークトラムに乗って、などと思っていたが、Lucは赤柱〔スタンレー〕に行こうと言っている。スタンレー?いったい何があるの?予備知識まったく無し。何処でもいいから、あえてLucにも尋ねない。さて、それはどこでどうやって行けばいいのやら?
もう、他人に聞くのは苦にならない。おじさん日く、「6番のバスに乗りなさい」さてバス停は何処かと歩いて行くと、在りました在りました大きなバス・ターミナル。そしてそこには6番のバスが待っていてくれました。沢山の欧米人が仕切りの平行棒に座って待っているる。スタンレーはきっと、観光地に違いない。すぐとなりで同じように真似して座る。なかなかいい気分。Lucが親切にコーラを買って来てくれた。
持つことしばし、バスの運ちゃんがやって来た。前もってポケットに準備していた$2.50を料金箱に落として、ためらわず2階へ駆け上がる。僕に分かっているのは、スタンレーと言う地名だけ。そこがどんな所なのか、まったく知らない。ただ、移り変わる景色を2階の窓からポケッーと眺めるだけ。
そのうちバスは、ビルの谷間を縫うように、山手へと向かって行く。しだいに高度を稼いで、香港の高層ビル群が針千本の剣山のように見える。途中には、立派なテニスコートも在り、この辺りも高級住宅地であることを伺わせる。
だんだん山道となり、木の枝がバタバターと窓を殴りつける。それでもバスは、けっしてスピードを落とさない。轟音をうならせ、黒煙をはいて怒り狂った闘牛の勢いで登って行く。まるで、向島の立花へ行くのに、高見山の峠を越えて行ってるようだ。〔すぐ日本と比較するようじゃ、僕もスケールが小さい〕
峠を越えると海が見えてきた。奇麗な海岸線が続いている。そして、それとなく分かる白いリゾートホテルが幾つも建っている。バスは海めがけて、坂をどんどん下って行く。 バス停が近づいたのか、そろそろ1階へ移勤する人が増えてきた。バスは海に近い小さな停留所に止まった。みんなどやどやと降りて行く。言い出しっペのLucも良く知らないらしい。「ここがスタンレー?」と他のお客さんに聞いている。どうでもそうらしい。 はっきりとした目的を持った旅もいい。また、あてどなくさまよう行き当たりばったりの旅もいい。何があるのか、何が起こるのか、すべてが未知数。だけど、一人ではなかなかそうする度胸が無い。スタンレー、さあ、いったいどんな所なんだろう?
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