■ フロント・エアロ・ウィッカーを自作する ■ |
フロント・エアロ・ウィッカー(垂直型整流板)を自作して、
リップスポイラー部の左右に追加装着。
●1999-07-23:新製、●1999-07-27:追記、●1999-07-29:追記、●2002-02-16:レイアウト変更&あとがき追記
【図1】 自作フロント・エアロ・ウィッカーの装着状態。こんな感じです(左側画像は塗装前の状態)。
1.まえがき(ウィッカー;wicker
とは何ぞや?) |
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今回は私には珍しく、ボディまわりの、それもエアロパーツ(!)の自作に挑戦してみることにしました。イメージ的には、上の画像にあるように
オプションで装着した 「NEWアドバンストバンパーII 」
の下側からボルトオンで装着できるような、左右の”垂直型整流板”の製作を思いついたわけです。そう、簡単に言うと、フロントの左右に独立して装着するリップ型のスポイラーなのですが、通常のスポイラーと決定的に異なる最大の特徴は、それが”L字型”をしており、ボディの左右端面に対してクリアランスを保ったまま、垂直方向に伸びる形を採るという点なのです。 この 「ボディに対して一定のクリアランス(すきま)を保った垂直型の整流板」 のことを、いったい何と呼んだら良いのか? はっきり言って、自分で自分の作った作品(スマン、あえて作品と呼ばせて下さい・・・)にどのような名前を付けようと、それは私の勝手ではあるが、どうせなら少しでもカッコよさげな名前を付けたいというのが人情である(注:笑う人は笑ってやって下さい)。 色々と悩んだ末に、確かランサーエボリューションが進化していく過程で、リヤウィング(巨大なリヤスポ)の下に、(本来のスポイラーとは別に)さらに空気の層を左右に振り分けるための 「ウィッカー」 と呼ばれるエアロパーツを追加装着していたことを私は思い出したのだった。「・・・ウィッカー?! って、一体、何だろう・・・?」 そこで 一応、辞書でそれらしき単語を調べてみました。すると確かにありました、「wicker」。その意味するところは、小学館プログレッシブ英和中辞典によると、 1.(名詞)小枝、枝編み細工(品) となっています。ふむふむ。厳密に解釈すると、枝編み細工ではないが、ボディに対してクリアランスを保ったまま
「浮いている」 状態は、あたかも車体本体という 「幹」
から自作の整流板が
「枝が上方に伸びて行くように分岐している」
状態、すなわち「wicker」
状態と比喩しても良いのではないか、という結論に達し、今回はウィッカーという言葉を使うことにしたのです。「ウィッカー」
の前に「エアロ」
と付けたのは、その役割(←実際に役に立つかどうかは別として)を強調するためと、言葉に勢いを付けたかったための2点からです。 |
2.段ボールを利用して、型取りする |
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↓ 1999-07-27:更新(中段、ここから下を加筆) ↓ 【図2】 まずは段ボールを使って、頭の中のイメージを具現化してみる。 まず最初に行う作業は、型取りです。段ボールを使って、自分の頭の中にある作品の完成イメージを、実際の大きさ(実物大)で具現化してみます。 もちろん最初から一発で型取りが出来るとは思っていません。 この手の作業には、イメージと現実との微妙な 「ズレ」 がつきものだと思います。段ボールで模擬的に一次試作をし、「こんなハズでは無かった・・・」 ということがないよう、細かな修正点を加えます。あるいは、その場で新たに思いついたアイディアを加えてみて、そのアイディアの採用可否を検討します。 【図3】 細部の仕様に検討を加えていく。その例をボツを含めて示す。 |
3.調布市のKAZさん、発泡塩ビ板にトライする |
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さて、形状が決まって型取りが終了すると、次はいよいよ素材の購入です。当初、私は手慣れたアクリル板での製作を予定していました。しかし、近所のホームセンターに行ってみると、今回私が必要とする大きさのアクリル板(約60cm×90cm)は、思いのほか値段が高い
(1枚数千円) ことがわかりました。
DIYで何かドレスアップ用品を自作する場合は、部品の値段の高低が非常に重要なポイントの一つでもあります。既製品を買った方が安くつくならば、自作する意味がありません。 【図4】 当初のアクリルで製作する予定を変更。発泡塩ビ板にトライ。 そこで代替素材として、塩化ビニル板を検討してみました。単に「塩ビ板」 というと硬質塩化ビニル樹脂を示すことになり、これはアクリルに似た被加工性を持ちますが、衝撃に対して非常にもろく(つまり割れやすい)、穴開け加工にも注意を要します。今回のようなエアロパーツ(車体下部に設置する)には素材として適しません。ところが塩ビ板にも 「発泡塩化ビニル板」 という素材があるのです。 その名の通り発泡している(非常に微細な空気層を持ち、比重が0.7程度)ので軽く、ドリルでの穴開け加工にも適しています。つまりは被加工性に優れ、割れにくいのです。比重が小さく軽いので、強度的な面での不安が出てきますが、そのぶん板厚を稼ぐ(t=3mmを採用)ことでOKとなる見込みです。 あと、もし問題点があるとすれば・・・。そう、私はアクリル板の加工経験はあっても、「発泡塩ビ板」 の加工経験は無かったのです。果たしてアクリルのように簡単に熱で曲げ加工できるのか? 塗装は簡単に素材表面にのって、剥がれ落ちないのか? 疑問点が浮かびますが、何といっても値段の安さが魅力です。板厚が t=3mmで大きさ45cm×90cmのものが2610円です。しかもこの大きさは、左右のウィッカーが同時に採れるギリギリ (必要最小限) の大きさです。 これはもう、試してみるしかありません。いつまでも過去の素材(?)
にこだわることなく、常に自分の手で (加工できる素材の)
守備範囲を広げていく必要もあります。こうして私は
「発泡塩ビ板の加工にトライする」
ことになったわけです。ちなみに、この素材のメーカー名は
「アクリサンデー(株)」、色番は
「E−7001白」、です。そう、塗装(レッドマイカを予定)の際に、下地処理として白色を塗る手間を省くため、あらかじめ白色の発泡塩ビ板を選んだのでした。 |
4.KAZさん、初の失敗・・・か? |
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↓ 1999-07-29:更新(下段、ここから下をさらに加筆) ↓ さて、発砲塩ビ板はカッターナイフで切り抜くことができます。この点は、アクリルよりも確実に切削加工性に優れていることが分かりました。ただ板厚が t=3mmあるので、素材をカットするまでには何度も何度もラインに切り込みを重ねていく必要はあります。こうして切り抜いた素材は、いったんバリ取りをしておきます。各部のバリ取りをした後は、ボディに固定するためのボルト穴(2ヶ所)をドリルであけます。バンパー自体が、ちょうど左右2ヶ所ずつブラケットを介してボディに固定されているので、共締めとするわけです。素材の穴をあける位置は、慎重に現物合わせで決めます。 ここまでの作業は順調です。さあ、次の工程はいよいよ曲げ加工です。カットした素材をL字型に曲げる作業です。今回は1パーツあたり1ヶ所の加工であり、しかも曲げ形状は直線状 (θ=90°弱の曲げ) と単純ですから、きっと私の中に油断する心が生じたのでしょう。私は何をアセったのか、上の画像(図5の左側)にあるように、この大切な曲げ加工を、何と調理用ガスレンジで行ってしまったのです。これが失敗の始まりでした・・・。 【図5】 曲げ加工にアセリは禁物(↓これは失敗例)。急がば回れ。 曲げ加工の基本は、曲げる部分にのみ(局部的に)熱を与えて膨張させ、軟化したところで希望形状に折り曲げた後、すかさず扇風機や水道水などを当てて急冷することです。曲げたい部分以外のところまで熱を与えてしまうと、素材の余計な部分まで膨張・軟化・冷却させてしまうことになり、結局、作品にゆがみやたわみ、うねりなど寸法上の微妙なズレを生じさせる原因を引き起こしかねないのです。 そうです、ガスレンジでは、狙った部分以外の広い範囲に渡って熱を与えてしまうため、素材全体が
「焼きナマされて」 シャープな曲げ加工が困難となる
ばかりでなく、ゆがみ(うねり)まで生じさせてしまったのです。・・・やってしまいました。途中で気づきましたがあとの祭り、強引に曲げ加工してみたものの、結果は図5の右側にある通りです。画像では分かりにくいかも知れませんが、近寄って見ると確かにゆがんでいるのがバレてしまいます。・・・工具を変えて(工芸用ガスバーナーを使って)再加工することにしました。 |
5.塗装後、ドアエッジモールを取付け |
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結局、工芸用ガスバーナー
(イメージとしては、超強力ガスライターといった感じのもの)
を使って、再度曲げ加工をし直します。加工上のコツとしては、山折りとなる側の表面と谷折りになる側の表面それぞれに熱を与えること、ただし、両者均等に熱を与えるのでは無く、「山折り側:谷折り側=7:3」
程度の割合に振り分けてあぶり出すことですね。理由は、山折りする側は表面に近いほど
(曲げ半径が大きいほど) 素材を伸ばす (=熱膨張させる)
必要があるのに対し、谷折り側はむしろ素材を圧縮させるような柔軟ささえあれば足りるからです。 【図6】 曲げ加工は、曲げたい部分のみ熱を加えて加工する(バーナー使用例)。 果たして今度の結果は・・・。バッチリ決まりました、ゆがみはほとんど無く、ホントに思惑通りに曲げることができたと思います。ここまで来れば、あとは塗装如何(いかん)が作品全体の出来・不出来を決定づけることになりそうです。 さて、その塗装色ですが、前から決めていた赤色にします(レッドマイカ系をセレクト)。これは、すでに自家塗装してあるサイドプロテクターの赤と同系列色です。実際に使用したスプレーは、「ウィルソン・ホンダ車用R−72P・トリノレッドパール」です。なお上塗り用のクリアは「ホルツ・クリアA−4」です。 そのウィルソンの缶スプレー(新補修カーペイント)ですが、缶底が丸くなっており、中に入っている「かくはん用の」 ボールが 「塗料をよく混ぜる」 という工夫が施されています。うん、ラウンドボトム という発想は確かに良いのですが、私が使ってみた素直な印象としては、ノズルがすぐに詰まりすぎ。ちょっとスプレーしている間に、すぐにノズルが詰まってしまい、塗料が均一に拡散しないで塗装ムラが出来やすい・・・と思ってしまった。これなら、過去に使った 「ソフト99」 とか 「ホルツのウレタンスプレー」 の方が、ノズルの目づまりが起こりにくくて使い勝手が良かったように感じます。 予想外だった
「ノズルの目づまり」
と格闘しながら、何とか塗装作業を終了。十分に乾燥するのを待って、次の仕上げ工程に入ります。その仕上げ工程とは、エアロウィッカーのエッジ部分(端部)に
「ドアエッジモール」 を貼り付ける作業です。
単に塗装しただけの状態で車両に装着しても良かったのですが、発泡塩ビ板のカットラインを
そのまま露出させるよりも、縁にモールを張りめぐらせた方が質感がより高まると判断したわけです。図6の右側が、その貼り付け作業風景です。モールの仕様は
「表シルバー・裏黒」
です。シルバーの縁取りは目立つのですが、サイドプロテクトモールと連続した共通のイメージを持たせるために、あえてその仕様でいくことにしました。 |
6.スタビライザーボルト&ゴムで制振 |
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さあ、いよいよ最終工程に突入です。エアロウィッカー(←使い慣れない言葉なので、書くのがちょっと恥ずかしい
)は
垂直型整流板なので、基本的にはボディとのスキマが一定値(2〜3cm程度)を保つように設置します。ここで、走行状態での路面からの振動や空気抵抗による
「ブレ」 を防ぐために、簡易的な 「スタビライザ」
を追加することにしました。その仕組みは、エアロウィッカーそのものの反発力を利用した、とっても簡単なものです。また、用意するものはボルト&ワッシャ&ナット+ゴムキャップです。 【図7】 振動(共振)防止のために、スタビライザー代わりのボルト&ゴムキャップを装着する。 話しが前後してしまいますが、発泡塩ビ板を曲げ加工するときに、曲げ角度の狙い値をθ=90°ちょうどにするのではなく、θ=80°程度というように、やや鋭角気味にしておく (=折り曲げ量をやや多めにしておく) のです。こうすることによって、エアロウィッカーは初期状態(=イニシャルの静止状態)ではθ=80°に折り曲げられていたものが、今度は設置状態では強制的にθ=90°にまで 「押し広げられた」 状態となるため、常にボディの内側に向かって安定した収縮力が働くことになるのです。 一方、エアロウィッカーの上部(前後方向)には2ヶ所、穴をあけておき、ここに図7の右側にあるような、ボルトの先端にゴムキャップを被せたものを取り付けておくのです。つまり、部品の組み付け順序(運転席側)で説明すると、以下のようにするのです。 ←車体外側 車体内側→ このようにして設置すると、「ゴムキャップ込みでのボルト長さ」
が、ウィッカーと車体とのスキマ量に一致することになります。しかも、ゴムキャップを押しつけるときの荷重はウィッカーそのものの反発力によるものであり、ボディへの接点はゴムキャップ本体であるから(ボディにも)キズが付きにくいと思われます。万が一、懸念点があるとすれば、ウィッカーそのものの反発力が
「時間の経過と共に、次第にへたってくる」
恐れがあるかも知れない・・・(?)という1点ですね。 |
7.あとがき |
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何はともあれ、このようにして私の初めてのエアロパーツ自作は終了しました。今回は今までに手にしたことの無かった新しい素材(発泡塩ビ板)の加工にトライできたことが、実は一番の収穫だったのかも知れません。皆さんもエアロパーツに限らず、自作ドレスアップにトライしてみてはいかがでしょうか? 失敗しても成功しても、楽しいですよ。 ↓ 2002-02-16:追記 ↓ このエアロウィッカーの 「その後」 をお伝えすると、まず、装着したままでユーザー車検を受けてみた。場所は東京都の多摩自動車検査・登録事務所だ。実はこのエアロウィッカー、発案当初から 「車検に通ること」 を念頭に置いていたので、ボディの最大寸法ラインからはみ出さないようにサイズを決めて制作していたのだ。 しかしながら、いくらボディの外寸からはみ出ていないとはいえ、ボディ外板から浮いている (ウィッカー状となっている) ことを指摘される可能性もある。つまり、事故など万が一の事態が発生した場合、歩行者の保護という ”安全上の理由” から好ましくないと現場で判断される可能性があるとも考えていた。例えば、かつて一部で流行した 「ブーメラン型センターホイールキャップ」 などの類がその例だ。・・・だが実際には、その考えは私の取り越し苦労だった。車検場での審査結果は全く問題なく、OK判定であったことをここに報告しておく。 さて、そんな車検対応・自作エアロウィッカー(笑)、現在は取り外して保管している。理由はミニサーキットを走る機会があるからだ。その経緯については、「パーツ装着・その後」
のページにて詳しく述べているので、興味のある方は一読していただければ幸いである。 |
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(フォグランプグリルの自作) (ラジコンボディでスピーカーカバー)