超不定期更新コラム

3/10 味わい表現について(1)

3/5のワインスクールの講義で勉強になったのは、同じ作り手(エティエンヌ・ソゼ)による村名(ピュリニィ・モンラッシェ)とグランクリュ(シュバリエ・モンラッシェ)の味わいの違いでした。値段にして7倍というこの両者の差が実際どれほどのものだったかということはまあ置いておいて、印象的だったのは、味わいのバランスの違いです。かたや酸味がいきいきとして感じれれ、かたやふくよかな丸い酸に感じられたのですが、これが実は酸の量の違いというよりは、果実の豊かさに起因するものだということに、今更ながらなるほどと感心しました。すなわちより高価なシュバリエモンラッシェは果実味がより凝縮して豊かなので、相対的に酸はあまり出しゃばらなかったけれども、ピュリニーモンラッシェの方は、やや果実味が弱い(といってもあくまでグランクリュと比較してですよ。念のため)ため、逆に酸がいきいきと感じられたわけです。

ワインの味わいは、酸、果実味(甘み)、苦み(渋み)、それに加えてアルコールのボリュームというそれぞれの要素の相対的なバランスによって成り立っているのは周知のとおりです。どれかが足りなければ、バランスが悪いワインになってしまいますし、逆にどれかの要素が強ければ、それによって他の要素がマスキングされることもあります。すべてがバランスがとれていれば、偉大なワインとなるわけです。あんまり高級なワインを飲みつけていない私ですが、最近の事例だと、3/4に飲んだルロワのクロヴージョなどはまさにそういう例なのかもしれません。

これらの要素の中でも、味わいを構成する上で特に重要なポイントとなるのは「酸」だと言われています。白ワインは言うに及ばず、赤ワインにおいても、タンニンは年月とともに溶け込んでおだやかになりますが、酸は減ることはないですから。

たとえば、ソーテルヌの甘口ワイン。「どんなお菓子職人にも真似できない」と言われているCh.ディケムの官能的なまでの甘さは、しっかりした酸に裏打ちされたものであり、これが単に甘いだけなら安いソーテルヌに見られるようなベタッとした重々しいワインになってしまいます。

また、先日飲んだ「アルマヴィーヴァ」。こちらは果実味も豊かでタンニンも緻密ですばらしいのだけど、なにかが違う、と思わせるのは、酸度の低さによって、全体の構成がのっぺりした与えていたからでしょう。

ところで、認定試験の時、私はどうもこの「酸」が苦手でした。というのは、テイスティング講座で「これは酸味はひかえめ」と自信を持って書いたワインについて、講師の方に「このワインは酸味が豊かです。」と言われて、え〜っ思ったことが何度もあり、なんでだろう?と思っていたのですが、今から思うと、今回のスクールのように酸があるのだけど他の要素にマスキングされている場合とかがよくわかっていなかったんですね。

このような酸味、甘み、渋みを知覚するためのレッスン法が、岡本麻理恵さんの「ワイン・テイスティングを楽しく」(白水社刊)の164ページからの下りに紹介されています。(ちなみにこの本、「こんな本を〜」のコーナーでも書きましたが、テイスティングの入門書としてはほんとうに良く書かれていると思います。)方法は、紅茶とレモン果汁、ハチミツなどを使うもので、家庭でも簡単に試せます。私も近々試してみようと思ってますので、結果は後日レポートします。