これまでさまざまな作り手のワインを飲んできましたが、初めての作り手との出会いはいつも変わらず楽しみです。特に今回開けるアンベール・フレールの場合、その血筋からも期待が高まろうというものです。血縁関係が複雑に絡み合うブルゴーニュでは、誰それの親戚筋と聞いてもそれほど驚きませんが、ほかならぬクロードデュガ、ベルナール・デュガピの従兄弟となると話はちょっと別、ですよね。
抜栓すると、ヌメッとした手ざわりのコルクで、かなり上の方までワインが染みてきているのが少し気になります。
色は濃いルビーですが、エッジはまだ赤紫で節度のある色調です。
香りはカシスや ラズベリーなど、黒とよりは赤系を感じる果実、オレンジピール、スパイス、それにスッとするミンティなニュアンスがあります。樽香もありますが、凝縮された果実香がマスキングしている印象です。味わいは果実がドカンとくるタイプではなくて、あくまでも全体のバランスと透明感で勝負というタイプでしょうか。思いのほかグリップが弱く、舌の上をスルスルと流れていってしまうことにやや戸惑いを覚えますが、それだけテクスチャーが滑らかだということの裏返しでもありましょう。酸度は高めですが、豊かな果実が静かに拮抗していて、透明感のあるクリーンな味わいに好感が持てます。ただ、現時点ではフィニッシュにかけて苦味を伴ったタンニンと前述の酸とが優勢になり、バランスを欠くのが残念です。
これが年月を経ると改善されるものなのか、それとも熟成しても引きずってしまうものなのか、とりあえずは、ボトル半分明日に残して試してみようと思います。【88?→89+】
翌日:2日に分けて正解でした。翌日は香りもよく開いてオークのニュアンスが強く出るようになり、味わいはクリーミーさをまして、グリップもしっかりしてきました。なによりフィニッシュの雑然としたところが治まったのが好印象です。
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