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孫が初めて見た個展

  明石瞳「私の100号展」

2011.09.22. 掲載
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明石瞳さんは、金沢美術工芸大学油絵科を卒業された画家で、家族ぐるみで親しくお付き合い頂いている明石賢三先生の奥様である。このサイトに受賞作品の紹介や、瞳さんのご友人と過した楽しい夜のことなどを載せている。

その瞳さんから、100号の油絵17点を中心とした個展を開くとの案内をいただいた。以前にも何度か個展を見せていただき、その度に感動する作品に出会ってきたが、今回は孫娘に見せてやりたいと思った。


図1.明石瞳「私の100号展」の案内はがき


3歳にならない幼児を個展に連れていくなど、非常識もはなはだしい、はた迷惑だと人は思うだろう。しかし、瞳さんはそれを許してくれるに違いない。それに、孫は1年前、2時間あまりのミュージカルを、騒いだり愚図ったりせず、3度も見続けた実績があり、あまり迷惑にはならないのではないかと考えた。

なぜ、孫に見せてやりたかったかと言えば、生後10ヶ月のころ、孫は私たち祖父母のマンションに来ると、壁に掛けてある図2「青い帽子の女性」の絵を眺め、笑いながらこの絵をじっと見つめるのが習慣になっていたからだ。隣には風景画があるのに、そちらは見向きもしない。それが何度も続くので、この子は、この絵が好きなのだと分かった。1歳にもならないこどもにも、好きな絵があるのだということに驚いた。

実は、この絵は私のお気に入りで、欲しい欲しいと思っていたら、思いがけず頂戴することができたのだった。孫もその絵が好きなのだから面白い。


図2.「青い帽子の女性」


100号と言えば、1621x1303mm という大きなサイズで、展示室が広いから、孫にもよく見え、よく分かるだろう。今は、アニメのビデオを、大画面で熱心に見ているが、お気に入りだった「青い帽子の女性」を描いた画家のほかの作品に対して、どのような反応をするのか知りたかった。また、絵というものが好きになるかもしれないし、孫にとって非常に良い経験になるだろうと考えた。

9月16日金曜日に、大阪府立現代美術センター展示室A・南館1Fにある会場に入った。ここはパスポートセンターの1階上にある。展示室は予想していた通り広々としていて、天井が高い。調べて見ると、天井高は3.6m、展示壁面は、15m の壁面が2面、16.7mが1面、10.3mが1面だった。


図3.展示室の平面図と孫が選んだ絵


孫は入り口から向かって右手にある15mの壁面に行く。どの絵が好きかと尋ねると、図4「母と子」を選んだ。


図4.孫が最初に選んだ絵「母と子」


次に16.7mの壁面に移動すると、図7「少女と檸檬」を選んだ。しかし、入口左手にある15mの壁面に展示されている絵には興味を示さなかった。

入口に並んだ10.3mの壁面は、30号以下の作品が8点展示されている。その中央右寄りにある絵の前に走って行き、図5「帽子の女性」が好きだと言う。よほどこの絵が気に入ったようで、何度尋ねても、この絵を選ぶ。


図5.「帽子の女性」20号


そして、向かいにある16.7mの壁を指さし、「さっきのと同じだわ」と言う。指さす先には、2番目に選んだ図7.「少女と檸檬」がある。その右側には青樹賞受賞作品「王妃マリー・アントワネット」の絵が並んでいる。また、左端には大阪府知事賞を受賞した「流れのように」が見える。


図6.孫が指さす壁面に図7「少女と檸檬」の絵が見える


孫の言う、同じとは何のことかとよく見ると、どうやら、どちらも帽子を被っているのが同じだと言っているようだ。この絵は3年前の明石瞳さんの受賞作品の中で紹介している。


図7.孫が2番目に選んだ「少女と檸檬」の絵


生後10ヶ月のころ、孫が喜んで見ていた絵が「青い帽子の女性」で、今回の個展で選んだ絵の3点のうち、2点が帽子を被っている。帽子が好きなのか、好きな絵がたまたま帽子を被っていただけなのかは分からないが、いずれにしても面白い。

3点の中では、最後に選んだ絵が断然お気に入りのようだ。人のこころの面白さで孫の気質を書いたが、1.意思表示が強い、2.選択で迷わない、3.こだわりがある、という気質が今回も表れているように思う。

孫を観察し、それをビデオ記録することに神経を集中していたので、いつもよりは作品を鑑賞する時間が少なかったかもしれない。美しい100号の絵が展示室の3面を埋め尽くしている様は素晴らしく、堂々として壮観であった。

しかし、私もまた孫と同じで、いや真似をして、20号の図5「帽子の女性」が一番好きだと言いたい。この絵は個展の案内はがきに(図1)に印刷されている。ということは、個展の主もまた、お気に入りということではなかろうか? 図4「母と子」、図7「少女と檸檬」も孫と同じで、その次に好きな絵である。

図4から図7までの写真は、ハイビジョンビデオから切り出した静止画であるため、鮮鋭度は劣るが、ビデオの方では、良い記録ができた。文字と写真を使って説明するよりも、動画ははるかに雄弁だ。

この個展を鑑賞したあと、孫と爺婆3人は、幸せな気分で、阪神デパートのオモチャ売り場に向かった。


明石瞳さま、たくさんの素晴らしい絵を見せていただき、ありがとうございました。以前「絵は私のいのちです」と話されたことばが、より納得できます。人生の歩みの見事な証です。おめでとうございます。


<2011.9.22.>

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