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大腸がん術後 中性脂肪が異常高値

2018.08.04. 掲載
2018.08.22. 追加
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目次
1.はじめに
2.中性脂肪が異常高値
3.栄養学的知識の整理
4.中性脂肪高値に関する考察
5.中性脂肪高値への対応
6.まとめ


1.はじめに

今年の2月に大腸がんの手術を受け、手術体験記をこのサイトに載せた。続いて、手術後をどう生きるかをまとめ、術後経過良好、さあ〜したいことを始めるぞと思ったら、中性脂肪が異常高値という問題が突如現れた。

結果を知らされたとき、著しい脚力低下への対応の一つとして、栄養補給に頑張ったこと、検査時の食事制限が不十分だったこと、若い頃から中性脂肪高値の傾向があったこと、体質?が咄嗟に頭に浮かんだ。

臨床を離れて12年になる。これを機会に、中性脂肪を中心にした栄養学的な知識の整理をしておきたくなった。

資料は web検索を中心に、市販図書も参照した。


2.中性脂肪が異常高値

大腸がん手術後、排便機能の回復、脚力の回復、貧血の回復などの問題が順調に進んで、気を良くしていたら、7月3日の血液検査で中性脂肪値が 885 という異常高値であることを知った。


表1.大腸がん術後の検査データ

その時、ショックを受けることなく、微笑みながら、「体力回復のため、栄養のある食事の摂取に頑張りましたので、そのせいではないかと思います。次回の検査までに中性脂肪値が下がるよう努力します」と内分泌代謝内科の医師に申し上げた。

私が開業医を務めていた2005年、69歳のころまで、欧米では中性脂肪は動脈硬化の要因として重要視されていなかったこと、40歳代から自分の中性脂肪値が800を超えることを何度か経験していたから、心配しなかったのだろうと思う。

しかし、医学も進んでいるはずで、この機会に中性脂肪に関連した栄養学的知識をまとめたいと思った。

栄養学の知識を一つはWEB検索で、もう一つは図書から得ようと試みたが、WEB検索では莫大な量の広告宣伝記事が多く、その中から学術記事を見つけることは極めて難しかった。

栄養学の書籍として「データ栄養学のすすめ」を購入したが、科学としての栄養学を学ぶ基礎となる良書であると思う。


図1.データ栄養学のすすめ


3.栄養学的知識の整理

◆肥満度

日本肥満学会では、BMI:22の場合を標準体重とし、25以上のを肥満、18.5未満を低体重としている。

計算式は
     BMI=Wweight(kg)/height(m)/height(m)

私の場合は、 168cm 61kg で
Body Mass Index(BMI)は21.6、普通体重の下限である。


◆水分

健康な成人男性で約60%、女性で約50%が水分

摂取:飲料水1,300ml、食べ物1,000ml、代謝水200ml
排泄:尿1,500ml、糞便100ml、皮ふおよび呼吸から900ml

体重の1%消失(61ml):喉の渇き
体重の2%消失(122ml):不快感・食欲不振


◆脂質(Fat)

脂質とは、油脂、脂肪酸、グリセリロール、中性脂肪等を合わせた総称で、単純脂質、複合脂質、誘導脂質に分けられる。

  単純脂質
    中性脂肪(neutral fat)
       トリアシルグリセロール、トリグリセリドとも呼ぶ、略称(TG)

       1分子のグリセロールに3分子の脂肪酸がエステル結合したトリアシルグリセロールを
       トリグリセリドと呼ぶ

       グリセリドとは脂肪酸とグリセロールのエステルを指す

       食品の中に最も多く含まれている
       エネルギー源として利用され、過剰になると体脂肪として脂肪細胞の中に蓄えらる

       体脂肪は内臓脂肪と皮下脂肪に分けられる

       食べ物を供給できないとき、体脂肪は代謝が速い脂肪酸に分解して利用される

       食事中の中性脂肪が腸で吸収され、血液中にとり入れられた外因性中性脂肪と、
       いったん肝臓にとり込まれた脂肪が再び血液中に分泌された内因性中性脂肪から
       構成されている

       血液中に中性脂肪が増えると、悪玉LDLは小型化して血管壁に一層入り込みやすくなる
       小型の LDL は通常の LDL よりも酸化されやすいので超悪玉 VLDL と呼ばれる

       中性脂肪の増加によって善玉 HDLのコレステロールの量が減るという

       TC:血中総コレステロール HDL-C:HDLコレステロール LDL-C:LDLコレステロール

       TC=HDL-C + LDL-C

       LDL-C=TC − HDL-C − TG/5 Friedewald の計算式 欧米、日本動脈硬化学会で採用

       中性脂肪=脂肪、 体脂肪=内臓脂肪 + 皮下脂肪

       糖質の方が脂質より中性脂肪になりやすい
       脂質は一度糖質の形となり、エネルギーとして余ると中性脂肪に変る

       食事により体内に取り込まれた中性脂肪は、十二指腸から分泌されるリパーゼの働きで、
       脂肪酸とグリセロールに分解される

       分解された脂肪酸とグリセロールは小腸で吸収され、小腸壁でまた中性脂肪に合成される

       体内に蓄積された中性脂肪は、エネルギーが不足するとグリセロールと脂肪酸に分解され
       遊離脂肪酸として必要とする部位に送られる

       過剰に生成され余った遊離脂肪酸は肝臓へ送られ、中性脂肪へと再合成される

       肝臓で再合成された中性脂肪は、皮下脂肪や内臓脂肪として蓄えられ、その後は消費され
       るか、再合成されるかの繰り返しとなる

       肝機能の悪化や過食などにより、血中に中性脂肪があふれる

       食事によって血中の中性脂肪は上昇と降下を繰り返すが、約12時間で元の値にもどる
       量が多くても、戻る時間はほぼ12時間である


図2.食事による血中中性脂肪の推移

       中性脂肪の検査は食後14時間以後に設定するのが正しいデータを得るために必要

       中性脂肪は脂質、糖質、タンパク質から合成できるので、これらも14時間摂取しない


図3.中性脂肪と糖質


図4.中性脂肪と糖質とタンパク質


  複合脂質
    リン脂質
       細胞膜や、血液の中で脂質を運ぶリポタンパク質の膜を構成する

       コレステロールと同じく細胞の構成成分で、水と油の両方に溶けやすい性質がある
       ブドウ糖や電解質、炭酸ガスなどが細胞膜を通過するのに重要

  誘導脂質
    脂肪酸(Fatty acid)
       脂肪酸は脂質の主成分で、多くが、脂質を構成するグリセロールと結合して存在する
       油脂は、このグリセロールに、3つの脂肪酸が結合したものから構成されている

         飽和脂肪酸  乳製品、肉などの動物性脂肪などに多く含まれる
         不飽和脂肪酸 植物油や魚に多く含まれ、必須脂肪酸もこの仲間
           EPA・DHA 魚類(特に青魚)には中性脂肪を減らすオメガ3脂肪酸が含まれて
                 いる

         遊離脂肪酸  中性脂肪が分解されてできた成分
                水に不溶であるため、血漿蛋白アルブミンと結合して、可溶化される
                活動のためのエネルギー源として、すぐに使われる

    コレステロール(cholesterol)
       細胞膜、胆汁酸、ステロイドホルモンの材料として利用される
       食事によって摂取するものが20〜30%、肝臓でつくられるものが70〜80%
       食物では、卵黄、イカ、エビなどに多く含まれる

       糖質や脂質が分子レベルまで分解されたアセチルCoAという物質から、
       複雑な反応段階を経て、コレステロールが合成される

    血液中のコレステロールや中性脂肪
       コレステロールや中性脂肪は脂質なので、血液の中では単独で存在できない
       そこで、コレステロールや中性脂肪は水になじみやすい「アポタンパク質」という
       特殊なタンパク質などに外側を囲んでもらい、
       リポタンパク質という球状の構造をして血液中に存在している

      5種類のリポタンパク質がコレステロールや中性脂肪を全身に運ぶ

    リポタンパク質として運ばれる脂質
      カイロミクロン(chylomicron)
        トリグリセリドの輸送体。リポタンパク質の大部分を占める
        比重:最も低い、粒子径:最大、中性脂肪:85%、コレステロール:7%
        食品から吸収した脂質(中性脂肪)を筋肉などエネルギーが必要な組織へ運び、
        残りを肝臓へ運ぶ
        肝臓で再合成され、VLDLとなる


図5.リポタンパク質カイロミクロンの構造

      VLDLコレステロール(Very Low Density Lipoprotein cholesterol)VLDL-C
        肝臓で分泌され、末梢においてリパーゼの作用でトリグリセリドを失い、IDL経由で
        LDLに変化する
        超低比重リポタンパクコレステロール
        比重:超低い、粒子径:大、中性脂肪:55%、コレステロール:19%
        肝臓で合成された脂質(半分以上が中性脂肪)を、全身の末梢組織まで運ぶ
        その途中で中性脂肪が分解され、筋肉や脂肪細胞に送られ、残りはIDLに換わる

      IDLコレステロール(Intermediate-density lipoprotein cholesterol)IDL-C
        中間比重リポタンパクコレステロール
        レムナントコレステロール(remnant like particles cholesterol)とも呼ぶ RLP-C
        比重の小さいLDLで、速やかにLDLに変化するので、健常人の場合の存在量は僅か
        比重:かなり低い、粒子径:中間、中性脂肪:24%、コレステロール:46%
        VLDLが分解する過程で、分解速度が遅くなった場合にできるリポタンパク
        VLDLとLDLの中間の性質があり、動脈硬化を促進しやすいと言われている

      LDLコレステロール(low density lipoprotein cholesterol)LDL-C
        低比重リポタンパクコレステロール
        悪玉コレステロール
        比重:低い、粒子径:小さい、中性脂肪:10%、コレステロール:45%


図6.リポタンパク質の模型

      HDLコレステロール(High Density Lipoprotein cholesterol)HDL-C
        高比重リポタンパクコレステロール
        善玉コレステロール
        比重:最も低い、粒子径:最小、中性脂肪:5%、コレステロール:24%
        血液中や動脈壁に貯まったコレステロールを回収して肝臓に戻す



図7.リポタンパク質の種類

      悪玉コレステロールと善玉コレステロール
        悪玉コレステロールはLDLコレステロール、
        善玉コレステロールはHDLコレステロールを指す
        同じコレステロールであるが、コレステロールの乗っているリポタンパク質が異なる

        LDLコレステロールは、LDLリポタンパクによって全身の細胞まで運ばれる
        その後、LDLコレステロールは、細胞の受け入れ口から細胞内に取り込まれるが、
        細胞が必要とするコレステロール量には限りがある

        コレステロールの多い食品をとり過ぎるなどでLDLコレステロールが増え過ぎると、
        細胞に取り込まれることができず、血液中にあふれる

        余ったLDLコレステロールは、動脈の内膜層(動脈内壁の一番上の層)に付着する

        HDLは、動脈壁に付着した余分なコレステロールを回収し、肝臓に運ぶ

        体内の脂質代謝の状態をみるには、LDLコレステロールとHDLコレステロールのバラ
        ンス関係を把握する必要がある

      non-HDLコレステロール
        (総コレステロール)−(善玉コレステロール) =(non-HDLコレステロール)
        血管に悪さをするリポタンパク質コレステロールをまとめたもの


◆炭水化物(Carbohydrate)


図8.炭水化物の分類

糖質(saccharides)
  ご飯、パン、めん、いも、果物、砂糖、はちみつなど

  人間の主要なエネルギー源として摂取しているのは、でんぷん等の糖質類である

  糖質は小腸上皮細胞にてグルコース・フルクトース・ガラクトースなど単糖類に分解された後、
  血管に移行し門脈を経て肝臓に移動する

  肝臓から血管を介し全身の細胞に届けられ、細胞内で代謝され、エネルギーに変換される

  体の中で1gあたり4kcalのエネルギーになる、すばやく使える(短時間のスポーツ向き)

  体内での存在量は少なく、血中のブドウ糖と、肝臓や筋肉にグリコーゲンとして貯蔵される
  食べた糖質がすぐ使う量以上の場合、体脂肪(皮下脂肪と内臓脂肪)となって蓄積される

  上昇すると膵臓のβ細胞からインスリンが分泌され、肝臓や細胞が取り込む動きを活発にしたり、
  グリコーゲンや中性脂肪への変換を促し、血糖を下げる

  低下すると肝臓のα細胞からグルカゴン、副腎皮質からカテコールアミンが分泌され、
  肝臓に貯留中のグリコーゲンを分解して血糖値を上げる

  人間が1日に必要とする炭水化物は総エネルギー必要量の50%から70%

  糖類:糖質のうち砂糖やブドウ糖などの単糖類・二糖類の総称

    単糖類
     ブドウ糖(グルコース)
      果糖の70%位の甘さ、動物や植物の生命維持に欠かせない
      エネルギー源の一つ、果物、ハチミツ、血液などに遊離し
      自然界で最も多く存在する糖分

      食事から摂取された糖質は、小腸でグルコースに分解され、
      グルコースが体内に吸収される

      体内で主要なエネルギー源として利用されており、
      特に脳での通常時のエネルギー源として利用されている

      高濃度のグルコースは生体に有害であるため、インスリンにより
      血糖濃度が常に一定範囲に保たれている

      細胞内に入ったグルコースはすぐに解糖系により代謝される

      解糖系=1分子のグルコースから、2分子のピルビン酸が生成される代謝過程
      この過程の中でATPというエネルギーが産生される

      ATP(adenosine triphosphate)
      生体内でエネルギーの「通貨」としての役割を果たす物質
      アデノシンに3つのリン酸がつながったもので、
      そのうちの端から2つが高エネルギーリン酸結合をしているため、加水分解されて
      リン酸が1つとれてADP(アデノシン二リン酸)、
      さらに1つとれてAMP(アデノシン一リン酸)になるときに
      大きなエネルギーが解放され、エネルギーとして利用される

      糖毒性
      インスリンによる血糖の制御ができず生体が高濃度のグルコースにさらされると
      糖毒性が生じ、これが長く続くと、微小血管障害により
      糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症などを発症する

     果糖(フルクトース)
      吸収も消費も穏やかなエネルギー源、甘みが強くてコクがある

      果糖は血糖値を上げずに小腸で吸収された後、
      門脈を通じて肝臓に送られ、ブドウ糖に転換される
      そのブドウ糖が中性脂肪を増やすので、果糖も中性脂肪を増やすことになる

    二糖類
      2つの異なる分子が結合して結晶を作っている
      分解して単糖類にしないと吸収できないので、吸収されるのには時間がかかる

     蔗糖(スクロース)
      ブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)が合体したもの
      体内に入ると水分で瞬時に分解され、ブドウ糖と果糖に分かれて吸収される
      ブドウ糖より血糖値の上がり方は緩やか

     乳糖(ラクトース)
      グルコースとガラクトースとが合体したもの

    多糖類
     グリコーゲン
      グルコースがたくさんつながった多糖類
      動物の体内ではグルコースはグリコーゲンとして蓄えられる
      食べ物から摂った糖質は、消化された後、最終的にはグルコースに変わる

      小腸で吸収され、血液に乗って全身に運ばれ、全身の細胞でエネルギー源として利用
      糖質のエネルギー源は無酸素状態でもエネルギーに変わることが可能で即効性がある

      余ったグルコースは、まずグリコーゲンとして肝臓や筋肉に蓄えられるが
      グルコースの貯蔵量は少ない

      余ったグルコースは、インスリンの作用で、グルコースをTGに変え、脂肪細胞内へ
      取り込まれ、体脂肪(内臓脂肪と皮下脂肪)となる

      体内でグルコースが少なくなると、グリコーゲンを分解してグルコースを作る

      肝臓に蓄えられたグリコーゲンは主に血糖の供給源として利用される

      筋肉に蓄えられたグリコーゲンは、筋肉が収縮する際のエネルギー源として利用される

     でんぷん
      穀物や、イモ類、豆類などに多く含まれている多糖類
      植物ではグルコースはでんぷんとして蓄えられる
      このでんぷんに含まれている多糖類は、アミロースとアミロペクチンの2種類がある

  インスリンのはたらき


図9.インスリンのはたらき

      インスリン分泌不足:糖が細胞内に入れず、血液の中に溢れて高血糖になる

      インスリン抵抗性:インスリンが効きにくい状態
        過食、運動不足、肥満、加齢、ストレス等の環境因子と関連が深い
        →糖が細胞内に入れず、血液の中に溢れて高血糖となる

        インスリン抵抗性の改善
          低カロリー食と運動 ビグアナイド系薬(BG薬) 例:メトホルミン

      グリセミック・インデックス(Glycemic Index GI)
        食品ごとの血糖値の上昇の度合いを間接的に表現する数値

        食品の糖質 50グラム を摂取した際の血糖値上昇の度合いを、
        グルコースを100とした場合の相対値で表す

        食品の条件でGIは変わり、データにばらつきがある

        同じ食品でも品種や調理方法によって値は変わる
        よく炊き込むと消化吸収されやすくなり、GI値は高くなる
        固茹での蕎麦、パスタのGI値は低くなる

        GI値の低い食品を先に食べると、食事全体としてGI値が低くなる効果はある

      糖新生
        脂質やアミノ酸など糖質以外の物質からグルコースを合成する代謝で、
        肝臓や腎臓で行われる

        肝臓の機能の一つで、ピルビン酸や乳酸、クエン酸回路の中間体などから
        グルコースが作られる

        グルココルチコイドによって促進され、インスリンによって抑制される

食物繊維(dietary fiber)
    人の消化酵素では消化することのできない食べ物の中の成分

  水溶性食物繊維 (SDF : soluble dietary fiber)
    消化管の中でゲル状になり、他の食物を包み込んで血糖値の急上昇をおさえる
    脂肪分を包み込んでその一部を未消化のまま排せつする
    昆布、わかめ、こんにゃく、果物(りんごやみかん)、里いも、わかめなどの海藻

  不溶性食物繊維 (IDF : insoluble dietary fiber)に
    胃腸で水分を吸収し、腸を刺激し、蠕動運動を活発にする
    便の量を増やして便秘を防ぐ
    穀類、野菜、イモ類、こんにゃく、豆類、キノコ類、果実、海藻、甲殻類


◆タンパク質(protein)

  あらまし
    食べたタンパク質はアミノ酸に分解される
    小腸で吸収され、全身の細胞に行き渡る

    遺伝子(DNA)に従って、20種類のアミノ酸が再び結合され、タンパク質になる
    カラダの約20%を占めるタンパク質を作るのがアミノ酸
    成人のからだには、約10kgのタンパク質があり、毎日300g前後が合成され、分解されている

    アミノ酸のうち、体内で合成することができない9種類は、必須アミノ酸と呼ばれ、
    食事から摂取する必要がある

    タンパク質は20種類のアミノ酸が結合してできたもの
    タンパク質の種類は約10万種ある
    タンパク質は体を動かす生命活動のほとんどを司っている

    1985年から、大豆のアミノ酸スコアは100に改定された
    これは窒素1gあたりで、9種の必須アミノ酸を委員会基準以上の割合で含むということ

    脂肪の少ない赤みの肉、鶏の胸肉やささみなどは、高TG血症にあまり関係しない
    イカ、エビも高TG血症にあまり関係しない

  はたらき
    1.エネルギー源になる
     1g当たり4kcalのエネルギー量を持ち、タンパクを摂り過ぎたら脂肪に変わる
     エネルギーが足りなくなると、筋肉も分解されてエネルギー源となる
    2.身体を構成する
     筋肉、皮膚、爪、髪などあらゆるものが、タンパク質でできている
     骨のコラーゲンはタンパク質
    3.酵素を作る
     栄養素の代謝に必要な代謝酵素や、食べ物を分解・吸収する為の消化酵素がある
    4.免疫に関わる
     身体を守る免疫機能に関係するのが免疫グロブリンというタンパク質
    5.脂質を運ぶ
     リポタンパク質(Lipoprotein)は、脂質とアポタンパク質が結合したもので、
     脂質を載せた船に相当している

      1)カイロミクロン、略称 CM
      2)VLDLコレステロール、略称 VLDL-C
      3)LDLコレステロール、略称 LDL-C
      4)HDLコレステロール、略称 HDL-C

      LDLは、コレステロールなどの脂質がアポタンパク質に包まれたリポタンパク質で
      LDL-Cは、LDLというリポタンパク質に含まれているコレステロールという脂質である

      カイロミクロンは、中性脂肪などの脂質がアポタンパク質に包まれたリポタンパク質で
      その中に含まれている中性脂肪も同じ名前で表す

    6.酸素を運ぶ
     ヘモグロビンというタンパク質が酸素を運ぶ

    7.血液を固める
     特殊な酵素の働きによって最終的に血が止まる

    8.ホルモンをつくる
     消化管、脳神経系で機能を調節するペプチドホルモンはタンパク質

  タンパク質を構成する20種類のアミノ酸
     必須アミノ酸9種、非必須アミノ酸11種

  アミノ酸スコア
     食品に含まれるタンパク質の質を評価する指標
     スコアが高い食品は主に動物性食品
     植物性食品では大豆が100


◆食後高中性脂肪血症

あらまし
  食後、血液中の中性脂肪が異常に増えることを食後高脂血症という

  糖質の多い食事をとれば、健康な人でも中性脂肪はある程度増えるが、
  食後高脂血症ではその増え方が著しく、時間が経過しても十分に下がらない

  食事で取り込んだ中性脂肪は、最初はコレステロールも少し含んだ大きなかたまりになっているが
  すぐに脂肪酸という小さい物質へとどんどん分解されていく

  脂肪酸は、細胞に取り込まれ、エネルギーとして使われる

  食後高脂血症では、この中性脂肪の分解がスムーズに進まず、
  レムナント(RLP)という分解途中の中性脂肪のかたまりが血液中に長くとどまる状態

  レムナントが血液中に長くとどまると、血管壁に入り込みやすく、
  その結果、コレステロールがたまって動脈硬化を引き起こす

  レムナントは、脂肪が不完全燃焼したときにできる燃えかすのようなもので、
  内臓脂肪の蓄積に伴って血液中に増えやすい

  レムナントはそのままの形で血管壁に入りこむため、
  動脈壁が厚くなり、血液の通り道を狭め、血流を妨げる

  レムナントは赤血球の膜にも入りこみ、赤血球が固くなって毛細血管を通り抜けられなくなり、
  ついには毛細血管を破る

  血管の破れた場所には、修復するために血小板が集まって血栓を形成し、血管を詰まらせる

  レムナントはメタボリックシンドロームの人に生じやすい

  「メタボ」と診断されるのは、へその高さの腹囲が、男性で85センチ以上、女性で90センチ以上
  中性脂肪増加か、HDLコレステロール低下、高血糖、高血圧のうち2つ以上が当てはまる場合

  「メタボ」や糖尿病の人がなりやすいのは、インスリン抵抗性が関係していると考えられる
  インスリン抵抗性とは、内臓の周囲に蓄積した脂肪細胞が、いくつかの悪いホルモンを分泌し、
  糖や脂質の代謝をことごとく乱してしまうことを言う

  その結果、食後の中性脂肪の分解も進まなくなる

運動不足
  摂取カロリーの消費量が減り、備蓄エネルギー(中性脂肪)に回される量が増えるだけでなく、
  筋肉が細くなって基礎代謝(運動しなくても消費されるエネルギー)が下がる

  中性脂肪が高い状態とはエネルギーが余っている状態
  運動をすることによって、体内に蓄積されたエネルギーが上手く消費され、中性脂肪が減る

喫煙
  ニコチンには副腎皮質ホルモンの1種であるコルチゾールの分泌を高める作用がある
  コルチゾールは低血糖のときに血糖値を上げる役目があるホルモンだが、
  喫煙によっていつもコルチゾールが高い状態になると血糖値が上がって、
  それが中性脂肪値を高くする原因になる

ストレス
精神的なストレスもニコチンと同じようにコルチゾールの分泌を増やす
コルチゾールは血糖値を上昇させる作用がある

交感神経は仕事や戦いのときに働く自律神経の1つで、脳や筋肉にエネルギーを供給するために
血糖値をあげる作用がある

遺伝的体質
体質的に中性脂肪値が高くなりやすい人はいる

人体の使うエネルギーを最小にし、余ったエネルギーを最大限に蓄える働きを持つ「倹約遺伝子」を
日本人の3人に1人の割合で持っていて、中性脂肪もあがりやすくなっている

合併症
急性膵炎
膵炎は、活性化した膵酵素が自分の膵臓を消化してしまい、膵臓やその周辺の臓器が炎症する病気
急性と慢性に分けられ、急性膵炎はみぞおちから左上腹部に激しい痛みを伴う
急性膵炎は過度の飲酒で発症する場合や、血液中の中性脂肪値が極端に高い(1500mg/dL以上)場合に
起こることがある

脂肪肝
中性脂肪が皮下や内臓にたまると肥満になるが、肝臓にたまると脂肪肝になる

肝臓の脂肪が全体の10%を超えると、肝臓の細胞の中に泡状の脂肪滴が現れるようになる
脂肪滴を伴う肝細胞が全体の約30%を超えると「脂肪肝」と呼ばれる

慢性の脂肪肝は、脂質異常症の中でも高中性脂肪血症で起こりやすい


4.中性脂肪高値に関する考察

1)中性脂肪を中心として、栄養学を勉強したが、中性脂肪の血中濃度が異常に高い状態の危険を示す
  エビデンスはなかった

2)私は若い頃から中性脂肪が高く、表2.にあるように、60歳での中性脂肪(TG)は 876 もあったが、
  健康だった


  表2.60歳以降の私の血液検査データ TG=中性脂肪

3)図2.食事による血中中性脂肪の推移から、血中中性脂肪の検査は朝食抜き程度ではだめで、最後の
  食事から14時間以上間隔を開ける必要があることを知った

4)人体の使うエネルギーを最小にし、余ったエネルギーを最大限に蓄える働きを持つ 倹約遺伝子 を
  日本人は3人に1人の割合で持っていて、中性脂肪が上がりやすいという

  私の中性脂肪値が高いのは、その遺伝的体質も関与しているのではなかろうか?

5)表2.の通り、肝機能の AST は18で正常、食後高中性脂肪血症の合併症「脂肪肝」は否定できる

6)表2.の通り、術前の2018年1月の体重は 61.4kg、手術を受けた2月と3月の体重は 60.5で最低、
  4月、5月は 61.7kgに漸増し、6月で一挙に 62.5kgに増えたのは、脚力回復を目指して、食事量を
  増やした影響であろう

  しかし、7月3日の中性脂肪 885 の検査データから、食事量の制限をしたために、7月の平均体重は
  4月5月のレベルに戻っている

  その体重であるが、60歳で69.2kg、70歳で66.7kg、80歳で63.6kgと加齢とともに、10年毎に約
  3kg体重は減っている。31歳の体重が64kgであった記録がある

  成人の理想体重は、その人の20歳ころの体重という説があるが、私の20歳ころは、少しやせ気味で
  62kgくらいだったのではないかと推定する

  大腸がん手術後の体重が62kg前後に落ち着いているのは、順調な経過と考えたいが、如何だろう?

7)運動については、退院後ウォーキングをしているが、表3.退院後のウォーキング歩数で見るように、
  術後1ヶ月目(3月)の平均歩数が3500歩であったのが、4月が5000、5月6100、6月7300、7月
  7700と歩数が増えている。近年まれにみる猛暑の中で、このような結果を出せたことはありがたい


5.中性脂肪高値への対応

4.中性脂肪高値に関する考察で書いたように、中性脂肪の血中濃度が異常に高い状態の危険を示すエビデンスはないこと、60歳で中性脂肪値が今回とほぼ同じ 876 を経験したが、健康だったこと、遺伝的な体質である可能性が高いことなどを総合して、今回の中性脂肪異常高値の心配はほとんどしていない

今回の検査で、中性脂肪の異常高値が得られた一番大きな原因は、採血時間が最終食事から14時間以上経過していなかったことであろう。採血時間が正しければ、このような異常値は出ないのではないか、それを次回の検査で確かめたく思う

脚力の回復と維持が、手術後一番の願いであるため、運動と栄養補給に努めたが、食べ過ぎだったかもしれないと思い、食事療法について、信頼できそうなものをまとめた

食事療法
 中性脂肪を上げる食品を減らす
  1)動物性脂質の多い食品
  2)脂っこい揚げ物やスナック菓子(糖質)
  3)糖分の多い洋菓子(糖質)
  4)白米など精製品(糖質)
  5)過食を促すアルコール

 中性脂肪を下げる食品を増やす
  1)魚:サバ・イワシ、イカ、タラコ、牡蠣など
  2)大豆製品:豆腐、納豆など
  3)食物繊維:野菜、きのこ、海藻、こんにゃくなど
  4)果物:リンゴ、みかん、キウイ、梨、グレープフルーツなど
  5)乳製品:牛乳、ヨーグルトなど
  6)オイル・調味料:オリーブオイル、お酢、黒酢など
  7)ビタミンB群の多い食品:レバー、豚肉、カツオ、豆類、もやし、キャベツなど
  8)ビタミンEを多く含む食品:納豆、カボチャなど
  9)ビタミンCを多く含む食品:ブロッコリー、キウイ、などの野菜や果物

運動
主な目的は脚力の回復と維持であるが、中性脂肪を下げる効果もあり、退院後ウォーキングを続けている
表3の通り、退院したばかりの3月は平均3500歩だったが、4月以降は、5000、6100、7300、7700と順調に増えている


表3.退院後のウォーキング歩数

禁煙
30歳で禁煙し、以来続けている

禁酒
手術までは、毎晩夕食時にビール3缶を飲み続けてきたが、大腸がん手術から後は止めている。私にとって酒は良い雰囲気をもたらす肴なので、近々解禁しようと思っている

解禁日は検査結果が分かる8月21日を予定している


6.まとめ

1)大腸がん手術後の経過は順調で、大腸がん手術体験記大腸がん手術後をどう生きるかの記事をこの
 サイトに掲載した

2)術前からまとめたいと思ってきた「結婚50周年記念アルバム」の制作にそろそろ取りかかろうとした
 矢先に7月3日の血液検査で中性脂肪値が 876 という異常高値が見つかり、その問題に取り組むこと
 にした

3)息子に医院を引き継ぎ、開業医を辞めて12年となる。この度の検査で中性脂肪の異常な高値が得られ
 たのを機会に、栄養学的知識の整理をしたくなり、Web 検索を中心に、図書も参考にした

4)Web 検索では、広告的記事が大部分で、学術的記事は非常にわずかだったが、それを自分に分かり
 やすいようにまとめた

 リポタンパク質の構造を模型で表現した図5図6図7により、リポタンパク質とリポタンパク質
 コレステロールとの違い(例えば、LDLとLDL-Cの違い)がよく理解できた

5)リタイヤして12年経ったが、栄養学的な新しい進展は少ないように感じた

6)参考図書「データ栄養学のすすめ」の著者佐々木敏氏は、工学部を出た後、医学部に入り直し、
 エビデンスに基づく栄養学の発展に尽力されている方とのことだが、同感するところが多かった

7)8月21日に予定されている血液検査の結果を知るのが楽しみである

8)栄養学的知識の整理ができたことは、予想以上の収穫であった

<2018.8.4.>掲載


8月21日の検査結果は、中性脂肪の値が 885から 436にほぼ半減し、CT検査で肝転移、肺転移は認められなかった

<2018.8.22.>追加

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