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推薦の言葉-竹内敏信
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巻末 推薦の言葉より一部抜粋

草木との対話が語るもの 竹内敏信

take.jpg (14742 バイト)[松浦さんは] 植物のさまざまな様相から判断して、ひたすら彼らの貌を探し、いろいろな表情と対話を続けてきた。眼前の木々の姿、草の様子などをじっくりと見つめてやる。草むらに自らの顔を埋めて、茂みの中で、彼らの固有の姿を探してやる。春の芽吹きに生まれたての貌を見つける。冬枯れの野山に晒したての貌もあるかもしれぬ。彼らと向き合い、語り合うことで、ああ、これが彼らの顔(貌)だったのか・・・・と判断できる時があったのだ。

そしてすかさず、マクロレンズで彼らのポートレートを撮ってやった。この撮影は、細やかで骨の折れる仕事である。かなり集中して見つめないと、なかなかこのような映像は生まれない。好きであるが故に、あるいは興味があるが故に捉えられた植物の貌。

樹の葉や草の葉、花や芽の中から、植物固有の特徴[風貌]を探し出していく。それをレンズによって抽出し、フィルムに定着して、やっと彼らの貌、それも固有の顔を描き出すことに成功したのである。それぞれの貌の中に、明らかに固有の個性が見えている。さらに言えば、個性が貌を生み出し、それが自ずと個々のキャラクターとして存在しているのである。この貴重なる存在とは何か・・・・・・・

地表に植物が誕生して数十億年。当初の姿から、幾度も幾度も変遷してきた。進化、退化、変容が連綿と受け継がれて、今日の姿となった。それぞれの種に、固有の生き方があり、固有の貌が生まれた。それらが入り組んで、今日も、存在を主張し続けているのである。人間それぞれに固有の顔があり、個性があるように、植物にも等価のキャラクターがあるのだと、松浦秋雄さんの作品は、静かに訴えつづけているのである。

落ち着いて、改めて、彼らの貌と対峙してみるのもいい。写真で表現され、紙に定着された姿=貌であるが故に、じっくりと、細やかに、色合いや形を観察できる。見向きもしない顔、気付くことのなかった植物の風貌、そんな不思議な風景がある。いや、現実の植物の貌と正面から落ち着いて対話ができるのである。その妙味、その面白さと楽しさ、有り難さ。

「しばし、日本の植物と対話をしてみては如何・・・・かな」と、松浦さんの写真群は、静かに諭してくれる。

 

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最終更新日: 2006/08/01