|
巻末 推薦の言葉より一部抜粋 草木との対話が語るもの 竹内敏信
そしてすかさず、マクロレンズで彼らのポートレートを撮ってやった。この撮影は、細やかで骨の折れる仕事である。かなり集中して見つめないと、なかなかこのような映像は生まれない。好きであるが故に、あるいは興味があるが故に捉えられた植物の貌。 樹の葉や草の葉、花や芽の中から、植物固有の特徴[風貌]を探し出していく。それをレンズによって抽出し、フィルムに定着して、やっと彼らの貌、それも固有の顔を描き出すことに成功したのである。それぞれの貌の中に、明らかに固有の個性が見えている。さらに言えば、個性が貌を生み出し、それが自ずと個々のキャラクターとして存在しているのである。この貴重なる存在とは何か・・・・・・・ 地表に植物が誕生して数十億年。当初の姿から、幾度も幾度も変遷してきた。進化、退化、変容が連綿と受け継がれて、今日の姿となった。それぞれの種に、固有の生き方があり、固有の貌が生まれた。それらが入り組んで、今日も、存在を主張し続けているのである。人間それぞれに固有の顔があり、個性があるように、植物にも等価のキャラクターがあるのだと、松浦秋雄さんの作品は、静かに訴えつづけているのである。 落ち着いて、改めて、彼らの貌と対峙してみるのもいい。写真で表現され、紙に定着された姿=貌であるが故に、じっくりと、細やかに、色合いや形を観察できる。見向きもしない顔、気付くことのなかった植物の風貌、そんな不思議な風景がある。いや、現実の植物の貌と正面から落ち着いて対話ができるのである。その妙味、その面白さと楽しさ、有り難さ。 「しばし、日本の植物と対話をしてみては如何・・・・かな」と、松浦さんの写真群は、静かに諭してくれる。 |
このWebサイト上の作品の著作権は日本リアリズム写真集団品川支部若しくはそれぞれの作者に帰属します。
|